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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
33/33

戦略





 エメライト王は信じていた。自分の国のために戦ってくれる者達がけして負ける筈はないと。



 このエメライト王国における兵士、騎士団のレベルは他国に比べてもけして高くはない。

 

 単純な戦闘能力だけで言うなら竜人の国ドラトーパンの竜騎士が一番強いと言われ、スピードだけなら獣人の国サイフィスの疾風隊が速いと断言し、魔法戦闘なら妖精の国アマリアが優秀であり、空中戦なら翼人の国ユーピアンスの天空騎士が無敵と言われている。。


 そして、人間の国エメライト王国が優れているものは“剣術”である。


 勿論、剣術の担い手にもよるが古き書物に『エメライト流王国剣術を極めたものは大陸の覇者とも成れる』と逸話を残すほどエメライトの剣術は優れていた。二百年前から行われている三ヵ国の武術大会では、いかに他国の実力者であろうと“剣術”での“一対一”では公式上負けることはなく、今現在でも無敗を誇っている。



 また兵士、騎士達ではないが冒険者達も優れた者がいる。

 メンバーが全てAランクの冒険者であり、エメライト一の凄腕冒険者パーティとされる『朱嚇の翼』


 聖職の最高位とされる賢聖にまで登り詰めたリーダー・フロンを主体にしている『穢れなき柱』


 二人で挑めば達成出来ない依頼は無いとされる『レオ&フーリコンビ』


 の有名なパーティがこの王国に集められている。これだけの冒険者が揃えば国の一師団としての戦力が備わっていると言って過言でない。一師団は、ランクAの飛竜相手でも楽に勝てると言われている。


 騎士団と冒険者。この二つの勢力がこの広場に揃っている。


 負ける筈はない。国民が、商人が、貴族が、国王自らもそう思っている。



 「だとしたら哀れ過ぎて泣けてくるぞ、人間ども」


 筈だった。


 広場には地面に倒れる多数の兵士、騎士、冒険者達で広がっていた。

 それでいて、魔物達はほぼ無傷で武器を携えている。いや、中には怪我をした者もいるが、回復職の呪術士が傷を癒している。


 「ど…ういうこ…とだ…。何故、数にも…質にも我…らが…勝ると…いうのに…いったい何…故…?」


 腹部を切られ、うつ伏せに倒れている騎士の言葉に、近くにいた魔物達が笑う。


 「フフフ…“数”にも“質”にもねぇ~。まあ、質はともかく数だけなら私達よりもいたわよね~。でも、それが一番の間違いなのよ~」


 「……なん…だと!」


 「考えてもみやがれ。あれだけの数の人間を、一体“誰が”指揮して命令を飛ばせるんだ?」


 兵士と騎士達には組織だった集団戦闘は行えるように日夜訓練をされている。一番上には総指揮官から格隊長に回され、集団での大きな混戦などは起こらない。


 だが、冒険者にはそれがない。


 冒険者は基本パーティ編成は四名。多くても八名程の小数でしか組まない者が多い。あまりパーティが多くなると報酬の分け前が減るため、中には一人ソロで依頼をこなす者も少なくない。そのため、冒険者達には集団戦法といった戦い方のいろはすら知らない。


 「確かに二つの勢力を合わせればそれなりの戦力にはなるかもしれん。だが、今回は事前準備もなく冒険者との協力体制を考えずに戦闘を行ったのが敗因の一つだ」


 結果からみれば冒険者は考えもなしに目の前の魔物目掛けて突進し、魔物達はそれ包囲網を掻い潜り戦況を混乱させていた。兵士や騎士団もなんとか戦闘を行おうとするが、冒険者達に邪魔をされ攻撃できずにいた。あげくの果てには冒険者の三割が混乱魔術にかかり、同士討ちさえ始めてしまい、誰が敵で誰が味方かもわからない最悪な状態に陥ってしまう。


 「そして強そうな敵、隙だらけの敵を各個撃破。それを繰り返して今の現状であります、はい」


 魔物達にイラ立ちを隠せない騎士。だが、その矛先は役に立たない冒険者に向けられる。

 

 「くぅ…冒険者が…。邪魔を…しよっ…て」


 「ははは、人間同士で責任の押し付けあいとか笑える。でも、見たところ君たち(兵士)だって同じようなもんだったよ」


 「なっ…!?」


 全く心当たりがないのか、何を言われているかわからないでいる。その無知を哀れむかのように魔物はゆっくりと説明する。


 「じゃあ、聞くけど。ここにいる兵士達って全員いつもの班分けの仲間ではないよね。それどころかその班の隊長さんもバラバラだろ?」


 「「「「「……………」」」」」


 事実だった。今日のこの場にいる兵士達の班はバラバラだった。今日の朝にいきなり「人手が足らない」からと広場の警備任務に集められ、異動になった者がほぼ全てである。


 「……戦い……一瞬の…判断力……必要。…互いの……役割…知らないと………命取り」


 「つまり急ごしらえで作られた班では、どうしても隙が生まれてしまうのさ。それじゃあ、エメライト王国ご自慢の集団戦闘は無理だよ」


 魔物達が言っていることは正しい。急な編成での戦闘は無理が生じてしまう。命がけの戦いに背を預けれるにはそれ相応の相手の信頼度が必要にもなっくる。

 だが、ここである疑問にぶつかる。


 「だが、何故お…前達がそれ……を知っている。それは…今朝方、出回ったば…かりの命令だぞ…。それなのに……まさか!」


 騎士は驚愕の表情を見せ、改めて魔物達を見る。魔物達は醜悪な笑みを浮かべる。


 「あの…命令は、お前達が…操作して…」


 「さて、どうだろうかね。ただ俺達はこの作戦のために三週間以上も前から動いていた。だが、はっきりいって、ここでのこの戦闘は想定以上に拍子抜けだったよ」


 彼ら魔物達にとってはもっと苦戦するはずだったが、ここにいる騎士や冒険者があまりにも弱く歯応えがあまりにもなかった。


 「やっぱ冒険者の強さにバラつきが激しかったな。多分、大半がEランクの新人冒険者だ。大方、早く名をあげたいと思って無謀な挑戦をしたんだろ」


 その新人冒険者が多かったせいか、魔物が思った以上に敵の隊列が崩れたのも人間側の敗因の一つである。

 そして、今現在この王都にいる実力のある冒険者は二つのグループ。先程言った『穢れなき柱』と『レオ&フーリコンビ』である。『朱嚇の翼』は王国の千年祭に参加する予定だったが、迷いの森を最後に行方が分からなくなっていた。噂では森の主に喰われた、と言われているが定かではない。


 「騎士団の力も、どんなものかと警戒していたが、たいした力ではなく良かった。所詮、人間ではこれが限界か…」


 「くっ…一対一なら…負けはない…のに」


 「…」


 倒れている騎士の言葉に、副隊長のザクブが騎士に近寄り、小声で語る。


 「“聖刀”の力は、自分の力ではないぞ人間」


 「なっ!…」


 「知らないとでも思ったか。お前らエメライト王国が隠している力……“聖刀”の力を」


 聖刀とはエメライト王国に伝わる宝刀であり、エメライト王国の切り札とされいる代物である。見るものを魅了する純白の刀身とされ、歴史武具としても価値を秘めている。

 魔物の言葉に、騎士は汗だくになり、心臓の鼓動が激しくなる。


 「今日のような時に使えない力になんの意味がある。それに聖刀があったとしても、我らが“隊長”に勝てない」


 サクブは騎士に興味を無くし、すぐに自分の任務である目標の“ある者”を捕縛するため、エメライト王の近付く。

 エメライト王には近衛騎士が張り付いているが、実力としてはそこまで高くない。むしろ、王の近衛騎士がこの程度の実力で大丈夫か気になるほどだ。


 魔物の狙いが自分だとわかると国王は慌てずに自分の娘を狼の石像まで下がらせ、騎士達に指示を送る。流石は一国の王である。風格や器が違う。


 「外にいる兵士達の援軍はどうなっている。いくらなんでもこの騒ぎに気付かぬはずはないと思うが…」


 「実は…広場の回りには結界が張られており、外に出ることも、中に入ることも出来ない状態にあります」


 「…ここまで先を見越していたのか。知恵が働き過ぎるな、魔物ども…」


 広場には強固な結界が張られており、結界を壊すには神話魔術クラスの魔術でなければ破壊は不可能とされるほどだった。

 エメライト王の言葉に、丁寧な物言いでザクブは返す。


 「そう教え込まれましたから、エメライト王。さて、エメライト王には我らが王の言葉を届けなければならないのですが、円滑に話を進めるために」


 視線の先をエメライト王から“別の”人間に移す。



 「『エメライトの宝石』とされる“姫の身柄”を預からせて貰います」



 「なんだと!」


 魔物の意外な言葉にエメライト王も驚きを隠せない。彼らの狙いは現在エメライト王国の実権を握っている自分にあると思っていたからだ。確かに自分の娘には王位継承権を持っているが、今姫にはなんの権限もないに等しい。だが


 「お前達は…まさか! フローラ、そこから離れなさい!」


 フローラと呼ばれる緑色の長い髪の翡翠色の瞳の少女は狼の像の前にいた。彼女の周りには魔物の姿はないようで一見安全に見える。だが、このパレードで広場に何をするかを、王自ら行っていたので覚えていた。


 この広場には狼の石像は、“無かった”と



 「えっ…」とフローラが考える暇もなく、狼の石像は一気に動き出した。




次はいつかわかりませんが、早めに書き上げます。

それまで待っていてね。

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