騎士と冒険者
大変遅くなりました。申し訳ありません。
ただひたすら土下座m(__)m
黒々しい闇の煙がイプオルガンから溢れ、天上えと駆け抜ける。すぐに闇の煙は雲のように広がり王都を包み込む。その光景はまるで世界が滅亡を告げる始まりにも見えた。
「なんだこれは!?」
「空が黒く…」
「おい、見ろ! 魔物だ!」
観衆の人々が叫びながら逃げ惑う。その怯え恐怖する目の向こうには、王都では見ることはない異形の生物…魔物がいる。
魔物は約三十人弱。コロボット、ヒューマンスライム、サイクロップス、ハーピィ等その全てが種族がバラバラであり、統一性は皆無。
そして最初に現れたリザードマンが持っている剣を掲げ、高笑いをした。
「はっははははは、時は来た! 我々魔族が闇に潜む時代は終わりを告げた! 人間、獣人、竜人、妖精、翼人を滅ぼし、我ら魔族の世界を手にするのだ!!」
「「「「「―っ!?」」」」」
リザードマンの言葉に国民は驚愕の顔を見せる。国民の大半は裕福な家庭を持ち、王都から出た者も少なくない。その人達はいきなり現れた魔物の群れに恐れ叫びをあげる。
だが、魔物を見たことのある人達から見ても、人の街中…ましてや王都のど真ん中に現れるとは異常であり、魔物の畏怖に逃げ帰る国民はパニックを起こす。
その阿鼻叫喚の光景を見て、楽しくて仕方ないのかリザードマンの頬は緩む。
「ははははは、叫べ! 嘆け! 恐れろ、人間ども! お前達の時代は、ここで終わりを告げる。せいぜいその命が消えるその一瞬まで俺達魔王軍を楽しませろ!」
その言葉に更に国民達から叫び声がこだまするように溢れかえる。
「ははははは、いいぞ、人間ども! さて、手始めにお前達、人間という弱く浅はかな種族を血祭りに上げてくれる! そうすれば五大王国のパワーバランスが崩れ、一気我ら魔王軍が…」
その瞬間、後ろにいた魔族の一人がリザードマンをおもいっきり殴り飛ばす。
「ぐふぉ!」
いきなり後頭部を殴られたリザードマンは頭を抱えてうずくまり倒れてしまった。頭部からの不意打ちを受けたダメージが大きいためか起き上がれない。
「てめぇ…ザクブ! 何しやがる!」
「いや、お前がリーダーぽく振る舞っているのが許せなくてな」
殴ったのは角の生えた魔人であり、この隊の副隊長であるザクブと呼ばれる男。そのザクブとは別に周りからも小さな声で囁く。
「そうだな。レーギは別に隊長でも副隊長でもないからな」
「レギレギは音楽隊の役で、ただ奏者としてのセンスが高かっただけの一兵隊さんだもんね」
「しかも奏者として何回もミスが結構していたわ。よくあれで範囲結界魔法が発生したもんだ」
「……私、……発動するかどうか……不安だった」
「お前ら…」
ガヤガヤと他の魔族達も話し始める。あまりに仲間達が惨めに言うせいかリザードマン…レーギは落ち込み始めた。
「なんだよ! 俺だって…俺だって頑張ったんだぞ! しくしく…」
「わあ…、レギレギが泣いた」
「ああなると長いんだよな~あいつ」
「………ほっとく?」
「そうだな。そうするか」
「誰か慰めろよ! まさか、俺ってそんなに皆から嫌われる!?」
レーギの言葉に皆顔を見合わせる。その皆の表情は「えっ知らなかったの?」と顔に書いているように分かりやすかった。その皆の表情を見て、またもや悲しい気持ちになるレーギである。
「…まさか、新人歓迎パーティで、誰一人も呼んでくれなかったは…」
「いや“誰一人も”ってとこで気付こうよ、そこは」
「馬鹿! いくらなんでも直球過ぎる。もっとオブラートに「あ、レーギを呼ぶの忘れた」くらいにしておけ!」
「……それも……酷いと…思う」
「俺って…何?」と力なく座り込み、灰のようになったレーギ。さっきまでハキハキと人間達を怖がらせていた大トカゲの魔物は現在ここにはいない。また怖がらせていた人間達から「なんか、かわいそう…」「魔物にも社交の場があるんだな」と哀れみを向けられ更に涙の量が増えたという。
そんな風に魔物達があーだ、こーだ話していると大きな地響きと共に金属の擦れる音が聞こえる。
「魔物共! 誰の許しを得て我らが祖国の足を踏み入れている!」
「我らの王の祭典を汚すとはなんという大罪!」
「騎士の誇りにかけて、必ずや民と王を守ってみせる!」
魔物達が話している隙に周りには国民を安全を守るために配備されていた百を超える兵士に、その兵士から選び抜かれた王族の剣にして盾の騎士達…数十名が取り囲んでいる。
そして周りにいるのは彼らだけではない。
「倒した魔物は特別報酬としてくれんだろうな!」
「魔物の数はあまりいねぇが、素材として使う分では上等なのがいるじゃねぇか!」
「よっしゃ! 荒稼ぎするぜ!」
別の方からは腕利きの冒険者が騒ぎを聞きつけ魔物の討伐に名乗りを上げる。冒険者達には兵士や騎士とは違い剣術を身に付けず、我流の戦いをするのが多い。だが訓練で身に付いた騎士団(彼ら)とは違い、常日頃から魔物と戦っている冒険者の戦闘経験では明らかに騎士団を上をいく。の数は約50人。
方や、多数戦鋭の兵士と騎士団。
方や、戦闘経験豊富の冒険者達。
それに比べ、魔物達の数は30名。数だけでも人間側の圧勝で終わる戦い。しかも騎士団と冒険者の戦闘能力の高い者は多い。この戦い、人間側の敗北はゼロに近いと思うだろう。
だが、魔物達は
「ねぇ、人間達やる気だよ」
「ははは、ほんとだ~。馬鹿だね~、“今の”ボク達に勝てると思ってるのかな~」
「ドウ、しようとカッテ。ワレらはケチらすのみ」
「その通りですね、はい」
彼ら…魔物達は余裕を持って彼らを見ている。魔物達が思い思い述べることは違うが、全員の目は怯えは無し、負けないと信じている。
「あまり侮るなよ。中には俺らと同等以上の強さを持つ者がいる。気を抜くと……殺られるぞ」
「「「「「了解です、副隊長!」」」」」
副隊長ザクブが激を飛ばし、魔物達の気持ちを引き締める。その様子を見ていたレーギも激を飛ばす。
「よし、お前ら行くぞ! 俺達種族が最強であることを証明してやるぞ!!」
「「「「「……………」」」」」
「なんか言ってくれよ! 頼むから、仲間外れだけは止めて!」
「いや、だってね…」と仲間から悲痛な心情を察知したのか、レーギはまたしても力を崩す。
戦い前にここまで目の前で緊張感がない魔物達に対して憤怒を覚える騎士団。
「我らの前でふざけるなど戦いを馬鹿にしているのか! もう許さん。我が王に勝利を誓った剣で魔物を倒し、我が国の力を見せてやれ! 剣兵隊突撃!」
騎士の指示により剣兵士が剣を持ち、一列に駆け出してくる。
「兵士や騎士団に獲物を取られてたまるか! 俺達も行くぞ!」
兵士達と一緒に冒険者達も我先にと魔物達に向かってくる。
その光景を見て、副隊長であるザクブは一瞬だけ口元が歪む。
「作戦の第二段階に以降する。全員……“対象”を捕縛せよ」
明日も投稿予定ですので、是非見て下さい。




