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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
31/33

開戦






 「国王陛下のお~な~り~!」


 大臣の一人が拡声魔具を使い、広場中に響き渡る。

 すると広場の奥にあるステージから煌めびやかな王族服を纏う年更けた男が現れる。


 彼こそがこのエメライト王国、現国王アレフト・エメライトである。

 彼は壇上に立ち、雄弁に挨拶した。


 『我がエメライト王国の国民達。今日という一緒に祝い、千年前に世界を救ってくれた勇者達に感謝の意を唱えよう』


 王様の言葉に周りの国民達が一斉に歓喜の声を上げる。

 エメライト王は賢君とも言われ、国民からも他国の重役からも信頼されている王様と言われている。


 「また、我が国に訪れてくれている多くの商人、旅人、冒険者達よ。今日、君達が我が愛する国に来てくれてありがとう。そなたたちも千年祭を一緒に盛り上げていこうではないか!』


 更に周りから、熱い声が響く。エメライト王もそれに応え、笑顔で手を振る。


 『さて、年老いたジジイの話を長くしてもつまらんだろうから、次は私の娘…次世代エメライト王国女王から…』



 ブォオオーーーーーーーン!!!



 突然、音楽隊のパイプオルガンが鳴り響く。


 突然の事に王様、大臣、パレードの参加者、観客の国民達は固まった。

 エメライト王が挨拶をしている途中にミスをしたのだ。良くて不敬罪、悪ければ極刑すらもありえる。

 騎士達が動こうとするとエメライト王はそれを止めさせる。


 『今日は祭だ。そんな日に人を罰してはいかんよ』


 それを聞き騎士達は元の配置に戻る。だれもが心の広い王様だと思った瞬間であった。


 「寛大な処置をありがとうございます」


 『音楽隊よ。今の失敗を恐れずにまた後で音楽を奏でてほしい。頼むぞ』


 それを聞いた音楽隊の指揮者は前に出る。


 「国王陛下、ありがとうございます。是非とも我々の音楽を聞いて下さい」


 指揮者は平に頭を下げ、満面の笑みを浮かべる。



 「なんせ、このエメライト王国に捧げる鎮魂歌なんですから♪」



 『はっ?』

 

 その指揮者の言葉にエメライト王だけでなく、周りの人達も呆然としてしまった。


 それが、まず間違いだった。


 音楽隊はその隙に演奏を奏でる。だが、それはさっきまでの心踊る演奏ではなく、まるで指揮者がさっき言ったような誰かを弔うような悲しい音楽だった。




――――――――――――――――――――――



 それを会場の近くで見ていた朔夜とイリスは…


 「なあ、あれもパレードのイベントの一つなのか?」


 「ええ…違うと思います…くっ…」


 さっきまで元気だったイリスは急に耳元を塞ぎ、弱々しく答える。それに加えて顔色も悪くなっているようにも見えた。


 「大丈夫か、エリス!? 気分が悪いのか?」


 「私は大丈夫…です。けど、精霊…達が…」


 「精霊がどうしたんだ?」


 「……苦しんで、悲鳴を上げています。私はその精霊の苦しみが聞こえるので、ちょっとだけ気分が悪いです」


 朔夜には聞こえていないが、イリスには公園にいる精霊…だけでなく、このエメライト王都にいる全精霊からも同様に悲鳴が聞こえていた。


 「なんで、精霊が…」


 「たぶん…いえ、絶対にあの音楽隊が演奏している音楽が原因です…」


 「あの音楽隊のか? でも、さっきまで演奏していたのに、急にどうして?」


 音楽隊はパレードが始まる前から何曲も音楽を引いていた。だが、イリスは耳を塞ぎながら、朔夜に語る


 「ええ、さっきまでは…。でも、今彼らが引いている音楽は、私から言わせればこれは音楽ではありせん。こんなの…酷い」


 歌をこよなく愛するイリスにとっては音楽に対する冒涜でしかない。だからこそ、イリスは演奏者に強い怒りを感じている。


 「でも、どうしてこんな事をしているんだ?」


 「分かりません。けれど…」


 顔色が悪いイリスは語る。



 「……とてもつもなく悪い予感がします」




――――――――――――――――――――――



 音楽隊は様々な楽器で音を奏でる。


 バイオリン、チェロ、フルート、シンバル、ティンパニー、ハーモニカ、デューバ…等、数多く楽器を演奏者達は引く。


 それを止めさせようと、騎士や兵士達が積めって来る。


 「おい、お前ら何をしている!」


 「いくら無礼講でも、やって良い事と悪い事があるだろう!」


 「今すぐ演奏を止めなさい!」


 その言葉が通じず、演奏は止まらない処か激しさを増して行く。

 演奏の激しさが増すにつれ、周りの騎士や兵士達に異変が起こる。


 「な、なんだ! …頭が…痛い!」


 「そ…れに、ひどく気分が…悪い!」


 「頭に…音が…」


 「いやはや、素晴らしい演奏ですね♪」


 その光景を見て指揮者は変わらぬ笑みを浮かべる。いや…


 「しかし“人間”達にとっては少々刺激がぁ強かぁったもぉしれまぁせんねぇ~」


 指揮者の顔がめくれる。いや、破いたが正しいのかもしれない。その人間らしい顔が破けると、肌の色、肉体、骨格も音を立てて変形する。

 するとそこには…


 「お前は…リザードマン!?」


 緑色の鱗を持ったトカゲ人間と言われる魔物…リザードマンがいた。


 「魔物が…何故街に、いや何故今日に!?」


 「まあ、待てよ。“もうすぐ”だ」


 リザードマンがそう言った通り、演奏はクライマックスに向けての演奏が始まった。その演奏の中心にいる人々程、激しい嫌悪感や嘔吐にみまわれる。


 「「「「「わああああああはああ!!?」」」」」


 「さあ、諸君。演奏はもう終わるから安心しな…てっ聞こえてないか」


 演奏を聞き、遠くにいた国民にも歓喜が悲鳴に変わる。

 それを聞き、リザードマンは更に笑みを浮かべる。


 「これだけの負の感情があれば、充分だ。ふふ、さて…いよいよだ!」


 最後にパイプオルガンの音が鳴り響く



 その瞬間…パイプオルガンから、怪しい魔力が吹き出り、エメライト王都中に撒き散らす。



 「なんだ、あれは!?」


 エメライト王は鳴り響く音が止み、空を見上げて問いかける。

 それを答えたのはあのリザードマンだった。


 「あれですか? あれは狼煙ですよ」


 「なんじゃと? 狼煙? いったいなんの!?」


 「決まっているでしょう」


 さっきまで演奏をしていた人達は楽器を置き、人の姿を解く。すると様々な魔物達がその本性をあらわにする。


 「“開戦”の狼煙ですよ。これから起こる戦いは千年前…いや、千年前以上の戦いの合図です」




――――――――――――――――――――――




 ―千年祭―



 それはこの世界から勇者が呼ばれ、魔王が倒された日から千年経ち、それを記念して開かれる救世祭。


 誰の中にも勇者と魔王の激戦の記憶に存在しない。そうした伝説は人々は酒のつまみとして語れるだけで、真剣に祭りを祝おうとする者はまずいない。

 全てがおとぎ話の一つとしてしか信じていない人達は知ってしまう。



 千年前の、あの恐怖を…



 数々の人達の思惑が交錯し、物語は複数の糸かわ束ねるように収束する。


 様々な人物が動き出し、今日が記念すべき伝説の幕開けになるのだろう。



 千年祭のとなる今日の午後十二時をもって…



 世界が動き出す…。





やっと、始まる(^_^;)

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