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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
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それぞれの夜 前編




 馬小屋から脱出した朔夜は、周囲を警戒しながら、宿屋に戻った。宿屋に入ると安堵したのか、扉のところで座り込みそうになるが、なんとか階段を上がり、自分の部屋に帰っていく。


 「はあ~疲れた…、本気で疲れた」


 イリスを起こさないように注意しながら、ゆっくりとドアを開ける。中を見ると、幸いイリスは寝息を立て眠っている姿が見えた。そして忍び足で、朔夜はソファーに横になる。


 「あぁ、今日は色々あり過ぎてワケわかんなくなった…」


 王都の事


 千年前の事


 異世界の事


 赤マントの事


 そして、指輪の事


 朔夜は自分の左手に持っている紅い宝石の付いた指輪を見る。まるで燃えているように真っ赤な色の宝石がまるで、反射して映る朔夜を燃やすような錯覚さえ感じてしまうほどだった。


 「なんなんだろう…な…勇者…って…あ、」


 無意識に意識が遠退いていくのが朔夜自身にも分かる。今日の運動に加え、精神的疲労があまりにも蓄積され、ソファーの寝心地の良さにより、睡魔がいきなり襲ってきた。


 「…また、明日考えるか…。明日七時にはイリスと食事の約束…をしていた…」


 言い終わる前に、朔夜の意識は微睡みの中に消えていった。



――――――――――――――――――――――



 同時刻



 朔夜達が泊まっている隣の部屋では、小さな明かりがついていた。明かりの下には丸テーブルがあり、その上にはいくつも工具が置かれ何かのパーツが散らばっていた。


 「……………」


 そして部屋にいる少女はテーブルに置かれているパーツを組み合わせていき、最後には“黒い物体”が出来上がった。それを色々な角度で見ながら少女は細部を調整していく。


 「まあ、こんなものかしら? あまり弄くると逆に壊れやすくなるし」


 少女は手と背を伸ばす。ふと時計を見ると、日付が変わっているのが分かった。


 「もうそんな時間なのね。作業していると時間の間隔がわからなくなるが嫌ね」


 テーブルの上を軽く片付け、使わない工具は小さなポケットに入れる。


 「さて、この作業を終えたら寝ましょうかしら。明日は7時に朝食を取ったら、また商業ギルドに交渉してみましょう」


 そういいながら、少女…マキナは下に置いていた違うパーツを取りだし、パーツを組み合わせていく。

 化学者は睡魔なんかには負けない。それは異世界であっても変わらない。

 


――――――――――――――――――――――



 同時刻



 そんなマキナの隣の部屋では、ベットで金髪の少女が静かに寝息を経て眠っていた。その表情は実に楽しそうな夢を見ているだろう。

 そんな少女の寝顔を離れた場所に座っている金髪の男が見ていた。その顔はかなり疲れているようにも見えた。


 「はあ~、やっと寝てくれたよ…」


 ベットで寝ている少女が眠ったのは、つい先程だった。それまで少女は本を読んだり、お菓子を食べたりと全く寝る様子がなかった。


 「疲れて眠ったか。いや、疲れなら俺の方がピークを越えているか…」


 昨日から少女と共に(強引に連れられ)王都中の露店を食べ歩き、遊び歩いたお陰で少年の体力ゲージは底を尽きかけていた。


 「はあ~、とりあえずエメライトに来たけど、特に目的もないしな…。明日のお祭りが終わったらどうするかな」


 その時、ベットで寝ている少女がふとんをはねのける。少年は溜め息をつきながら、少女にふとんを被せる。


 「…もう、食べれないよ…」


 「はいはい。夢の中でもお前の食欲は衰える事はないな」


 少年は部屋に付いている魔法石の明かりを消す。部屋には星の光と街中の照明の光が窓から入る


 「さて、明日は7時に起きて朝ごはん食べてから、その辺を観光しようかな」


 明日の計画を簡単に考えながら、ベットで寝ている“自分の顔に似ている双子”の顔を見る。


 「おやすみ、レイナ」


 「……おやすみなさい……レン…」


 「!!」


 いきなりの返しに驚くレンだが、レイナはすやすやと寝息をするのを見て寝言だとわかった。


 レンはベットの横に置いているソファーに寝転び、疲れきった体を休ませる。



――――――――――――――――――――――


 同時刻



 エメライト王都 西門



 篝火がパチッと爆ぜる音が聞こえる中、西門を守る兵士達は、夜通し異常事態に備えて待機している。

 そこへ一際、立派な騎士甲冑を纏っている者が門に近付いて来る。

 彼はエメライト王国騎士団第三部隊を任されている部隊長だった。


 「どうだ、何か異常はあったか?」


 隊長がそう言うと門を警備していた兵士が敬礼をして、隊長に報告する。


 「はっ、異常ありません!」


 「右に同じく異常ありません!」


 「宜しい。だが、そんなに気合を入れなくていい。今の時期に城攻めをして来るバチ当たりな事をする奴はいないだろう、ハハハ…」


 男は笑いながら言う。その言葉に二人の兵士は苦笑いしながら受け答える。


 「よし、景気付けに一杯やるか!!」


 「「えっ!!」」


 そう言うと何処から取り出したのか、分からないが、左手に酒樽を持っている。反対の手にはグラスが用意してある。


 「よし、今日は特別に名酒の一つをだな…」


 「隊長! 今勤務中ですよ!!」


 「かてーこと言うなよ。どうせ誰も来ないって♪」


 「何で、隊の見本にならないといけない隊長が率先して和を乱しているのですか!! 自重して下さい!!」


 「たくっ、ウチの部下は何かとうるせい…ん?」


 隊長は門の前に立つ。そして門から正面の方の暗闇を見る。その隊長の様子に兵士は困惑する。


 「どうしたのですか、隊長?」


 「……んや、魔物かなと思ったが違ったわ」


 「?」


 隊長何を言っているのか兵士には分からなかったが、その後に隊長の見ていた方角から小さな足音が聞こえる。


 「ん?」


 「なんだ?」


 小さな足音は徐々に近付いて来る。そして足音が聞こえる方向から、一人の少年が走り込んでくる。

 少年の体はふらつき、かなり疲労しているように見え、息が上がっていた。更に服はところどころ破れ、破れて露出した肌は怪我をしているのか血が滲んでいた。


 「なんだ、どうした!?」


 「大丈夫か、君!?」


 少年の様子を見た兵士は慌て、少年に駆け寄る。兵士が慌てるのも無理はなかった。このエメライト王都の近くでは盗賊も魔物も殆どいない。

 そんな王都に傷だらけの少年が走ってくるのだ。何か重大な事件に巻き込まれたのだと兵士は思った。


 「大丈夫かい、君? 何があったんだ!」


 兵士の一人がそう聞くと、少年は走るのを止める。

 すると少年は兵士に向かって答える。


 「…ん、何がって、何かありました?」


 その言葉に兵士達は一瞬言葉を失う。


 「いや君、何か重大な事があって王都まで走って来たんだろう?」


 「重大な事? いや、まあ、重大といえば重大ですが…別に兵士さん達が気にする内容じゃ無いですよ」


 「そうなのかい…?」


 少年はそれ以上語る事はない様子で、門にいる兵士に近付く。


 「すいません。真夜中ですけど、ここ通れます?」


 「いや、夜には入れない決まりだ。残念だが、夜が明けるまで待ったなくては…」


 「いいぞ、ほれ、これが許可証だ。なくすなよ♪」


 兵士が説明している中、隊長は許可証を渡して少年を門に連れていく。


 「って隊長!! だから規則を…」


 「いいじゃねえか、別に。ガキ一人入れた所で問題なんて起きねぇよ。そんなんだから、お前の頭はハゲってんだよ」


 「ハゲってねえよ!! ハゲて!!」


 兵士はまだ何か言っているが、隊長は気にせずに少年を王都に連れていく。


 「いいんすか?」


 「別に気にする事はねぇよ。それより、お前も王都に観光に来た…って顔をしてねぇな。何しに来たんだ?」


 「俺はギルドに入りに王都に来たんだ。おっさん、このギルドの名前知っているか?」


 初めてあった人におっさん発言をする少年。しかし隊長はそんな発言を笑顔で返す。


 「いいな、お前♪ 若さが溢れて、自分なら何でも出来ると夢を見ているな。しかもそれだけの“力”をその若さで持っているとは大した奴だ!」


 隊長は少年の技量を見抜いていた。自分から真正面から挑めば“負ける”と分かる程、少年の強さは計りしれなかった。


 「…俺なんかまだまだですよ。まだ全然勝ちたい奴に勝てないですから」


 「勝ちたい奴? 君ほどの腕を持ちながら勝てない奴がいるのか?」


 「ええ…まだ“戦った事はない”ですがね」


 剣を教えてくれた師匠も勝ちたい相手だと思っている。たが、その師匠よりも戦ってみたく、勝ちたい相手は他にいた。

 出会った事もなく、これから出会う事もない相手。かつて世界を救ったとされ、最強といわれた魔王にも臆することなく戦ったとされる者。



 千年前の英雄、異世界の勇者…



 それが少年が戦い、勝ちたいと思う存在だった。

 そんな少年の考えなど知るよしもない隊長は、少年の話に興味を無くしたのか、深くは聞かなかった。


 「まあいい。それより少年。今日の宿屋は決まっているのか?」


 「いや、ないだよな~これが。ないならどっか野宿にするよ」


 「俺が言うのもなんだが、無計画過ぎないか…」


 仕方ない、と言って隊長は何か地図を取り出し、何かを記入していく。そして書き終えた紙を少年に渡す。


 「ほら、ここにいけ。ここならほぼ年中空いているだろう。空いて無くても俺の名前を言えば屋根裏で止まらせてくれる」


 「いいのか! ありがとうな、おっ…いや、立派な騎士団の隊長さん♪」


 「いきなり呼び名を変えるなよ、現金な奴め。宿屋はグロックっだ。見た目は最悪だが、内装と値段は割とリーズナブルだ」


 「ああ、ありがとうな!!」


 すると少年は走って宿屋まで向かおうとする。その前に隊長は少年に


 「おい、少年。お前の名前はなんだ?」


 そう言うと少年は一度だけ振り返り、にこやか顔をして自分の名前を言う。


 「俺はジーク・ミラニスタ! いつか勇者を越える最強の剣士になる男だ!」


 そうジークは言うと前を向いて、目指すべき宿屋を目指す。




二つに分けました。後半も出来しだいすぐに出します

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