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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
22/33

煩悩と優しさと眠れなさと…

見たらお気に入りが三人いなくなった…



ヤベェ…早く投稿せねば…



 日が完全に沈み、辺りが漆黒の闇に包まれたエメライト…ではなかった。王都全体には篝火や魔法石の光で街中はある程度の光が差し込まれていた。

 その中でも王都の有名な時計台…グロープ時計台の時計は文字盤が光輝き、街のどこからでも時間を確認する事ができた。


 そしてその歴史的価値が高い建造物を宿屋の窓から朔夜は見ていた。


 「改めて見ると凄いよな、あの時計台…」


 「そうですね。エメライト王国だけでなく、五大王国の中でも最大の時計台ですから、見応えはあると思います」


 「そうなんだ。あの時計台は何時から出来たんだ?」


 「えーと、今から約五百年前に建造された建物ですね」


 「五百年!? かなり年期が入っているんだな!」


 「詳細を言うと“時計台自体”が出来たのは建国時の時の千年前からですね。建国時はあのような時計台ではなく、小さな時計台だったらしいです。それを五百年前の当時の王様が自分の生涯をかけて作ったとされるのが、あの時計台だと私は教わりました」


 「建国時…千年前……スケールが半端ないな」


 今ある世界の千年前。そんな昔の事を今を生きている人には考えもつけない。


 魔王が世界を破滅させようとしていた時代。


 命を削るような戦い、大戦が行われた時代。



 そして…異世界から勇者が召喚された時代。


 (そんな時代から脈々と受け継がれてきたんだな…あの時計台は)


 時計台は、形が変わっても“今”という時間を刻み込んでいる。そんな歴史的ロマンに心を奪われ感激している朔夜……


 という風に考えふけっていようとするが、朔夜の頭の中には違う事だった。


 「……なあ、イリス。もういいか?」


 「へっ!? まだですよ、まだ!! 今振り向いたら駄目ですよ!!」


 「ああ、わかった…」


 朔夜は窓から顔出して視線を遠くに向けている。そう向けていなければならない現状が起きているからだ。

 

 (平常心…平常心…平常心だ、俺!!!!)


 必死に自分を落ち着かせようと内心奮闘している朔夜だが



 シュル ドサッ パラパラ



 後ろから布が擦れる音と何かが床に落ちる音が聞こえるた瞬間、朔夜の心臓が鼓動が高くなり、顔が赤くなった。


 (いや、無理だーーー!!! 平常心なんて無理があるだろう!! だって、今俺の後ろでは美少女が生着替えているだよ!!!!)


 そう朔夜が背を向けている先には、イリスが寝間着に着替えている。


 (てか、なんで俺ここにいるんだっけ!?)


 何故こうなったのかと言うと朔夜とイリスか自分達の部屋で、今日買った紅茶を楽しんでいた。そしてイリスがテーブルに置いていたお茶菓子に手を伸ばした際、自分のカップをこぼしイリスの服に熱いお茶がかかってしまった。

 イリスは急いで服を脱ごうとすると、視線が朔夜と合ってしまい途端に彼女の顔は赤くなった。それを朔夜は察し、急いで彼女から視線をずらし「あ、じゃあ俺外向いているね!!」と窓の外に視線を向けた。

 朔夜が視線を窓に向けている中、イリスは朔夜の行動に驚き、顔が更に赤くなる。恥ずかしそうに顔して、背を向けている朔夜を何度も見るあと、意をけしてイリスは自分の服を脱いでいく。


 それが今の現状である。

 

 (馬鹿か、俺は!!!! あそこは部屋から出るのが紳士的なやり方だろうが!!!! 何自分の退路を断っているんだよ!!!!)


 今さら自分自身の行動が馬鹿らしく見えてきた朔夜だった。そんな事を考えている間も朔夜の後ろから服が擦れるような音が聞こえてくる。


 (…………どうする? 展開的にはどうすればいい)


 朔夜の頭の中から今朔夜に出来る選択肢を浮かび上がる。


 ①イリスが着替え終わるのを待つ

 ②イリスの着替えを覗く

 ③謝罪を込めて窓から飛び降りる


 (……いや、③はないだろ、③は!! 間違いなく死んでしまうわ!!!!)


 部屋の高さ二階くらいの高さだが、打ち所が悪ければ命を落としかねない。


 (となると…①だよな。でも男として②もいくべきかな。いや、ここはゲームみたいに笑ってごまかせないし…)


 普通に考えれば、覗きは犯罪だと理解できている朔夜だが、あまりにも今の状況に焦っているのか、若干パニックを起こしていた。そしてそんな朔夜が出した結論は…


 「……少しだけなら良いかな」


 「何が良いんですか、サクヤ様?」


 「うぉ!!!! イリス!!!!」


 朔夜はイリスの方に振り向くと、イリスは着替えを終えて朔夜のすぐ後ろに待っていた。


 「どうか、なさいましたか?」


 「いやいやいやいや!! 何もなかったよ!!!! 可愛いね、その寝間着!!!!」


 イリスは先程着ていた制服ではなく、寝間着用の可愛らしいフリルとリボンがついたピンク色のパジャマだった。野宿の時はすぐに動けるように寝間着などは着ないため、朔夜は初めてイリスの寝間着姿を見た。


 「可愛いですか…」


 「あ、うん凄く可愛いと思うよ」


 「ありがとうございます…(正直に言われると照れますね)」


 少し顔を赤くしたイリスは、朔夜から顔を見えないように背ける。


 「どうかしたか?」


 「いえ、なんでもありませんよ」


 こうして夜が更にふけて行った。



 ◇  ◇  ◇



 「明日も早いですし、今日はもう休みましょうか、サクヤ様」


 「ああ、そうだな。で、寝る場所だけど…」


 さっきのカウンターの女性が言っていた通り、ベットは一つしかない。しかし、大きさはクイーンサイズくらいの大きさのベットのため、二人で眠るには問題はなかった。


 「そうですね。私はここで大丈夫ですけど…サクヤ様は?」


 「ああ、俺も大丈夫。イリスは別に気を使わなくていいよ」

 

 「別に私は…」


 「じゃあ、寝ようか♪」


 イリスはベットに入り込む。朔夜は部屋に取り付けてある灯りを消す。すると部屋は、窓から入る月の光しかなかった。


 「じゃあ、イリスおやすみ」


 「はい、おやすみなさい。サクヤ様」


 灯りを消した朔夜は、イリスの寝るベットに……




 は行かずに、ベットから離れた“ソファー”に横になる。幸いなことにこの部屋にはベットの他にテーブルと椅子、そして“ソファー”があった。


 「いいんですか、サクヤ様。本当に私がベットを使ってしまって?」


 「俺はソファーで充分だよ。野宿を繰り返した俺にはソファーでも、立派なベットに見えてるよ」


 「なら、いいのですが…」


 ベットから起き上がり、イリスはソファーで横になる朔夜をじーっと、優しい表情で見る。


 「どうした?」


 「いえ、やっぱり私の願っていた通りの勇者様だな、と思いまして」


 「勇者? 俺がか?」


 「はい。まだ五日くらいしか旅をしていませんが、サクヤ様は勇者様みたいに優しいな~と思いました」


 そう言ってイリスは布団の中に戻る。そして朔夜と旅をした五日間の事を思い出していた。

 朔夜は街道を歩いている時は、イリスに危険がないように周囲の警戒を怠らなかったり(本来なら全く必要はない)料理をする時の薪集めや水汲みを率先して行ったり(鞄の中にストックがあるにも関わらず)就寝する時寝ずの晩をするといい、朝まで寝らずに頑張っていた(何かあれば精霊が対処するとは知らず)


 (何をするにも一生懸命で、真面目で明るくて素直で、そして…)


 イリスは目を閉じる。すると街道を歩いている時老人の重たい荷物を運ぶのを手伝っている朔夜の光景が浮かぶ。


 (誰より優しい勇者様ですよね、サクヤ様は…)


 まあ、その時の老人はスリ師でしたけどね、とイリスは思いながら意識が段々と薄れていく。



 ◇  ◇  ◇



 あれから数時間が経った。夜がふけていく。イリスは寝息を立てながら、気持ちよく寝ていた。


 が、ソファーに横になっていた朔夜は…


 「…………眠れない」

 

 すでに時間は午前二時を回り、日付が変わってしまった。

 

 「油断していた。野宿している時はあまり気にならなかったけど、部屋が一緒ってだけでこんなに緊張するもんなんだ…」


 綺麗な美少女と同じ部屋にいる。それだけで、朔夜の心臓の鼓動は早くなる。

 すると朔夜はソファーから起き上がり、イリスを起こさないように部屋から出る。


 「何か飲んでくるかな。食堂に誰いるかな?」


 部屋から出て、一階に通じる階段まで行こうとするといくつかある他の部屋から色々話声が聞こえる。


 『なんでうまくいかないかな? 天才のあたしならこれくらい簡単なはずなのに…。ここのパーツのフレームが歪んでいるかな?』


 女性の声と何かを作るような音が聞こえたり…


 『レイナ…いい加減寝なさい!!』


 『ええーまだ寝たくない』


 父親?らしき人が、娘?を寝かすような声だったり…


 『エミー…愛しているよ…』


 『私もよ、カイル…』


 恋人達の愛の営みが聞こえたりなど


 「……聞こえなかった事にしよう…」


 階段を下りると、カウンターのところにいた女性は居なかった。代わりに紙が置いてあり、こう書かれていた。


 ☆夜が遅いと肌荒れを起こすため、休ませて頂きます☆

 ※もし起こすようなマネをすれば命はないと思ってください


 「脅迫以外の何でもないな、これ」


 一応朔夜は食堂に行くが、誰もいなかった。時間を考えれば当然といえば、当然である。


 「少し散歩して行くか…」



あれ、また誰かいたような?

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