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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
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服屋巡り

 朔夜達はエメライト王都の大きな門をくぐるとそこには中世のヨーロッパのような格式ある建造物が建てられていた。


 「うわ~これは凄いな!」


 「本当ですね、サクヤ様。私も初めて見ましたよ!」


 周りには沢山の屋台と人が溢れている。屋台からは食欲をそそるような匂いが漂い、その匂いにつられ人が集まり、そこで酒盛りを行う。そんな幸せに満ちた光景が広がっていた。


 「本当にお祭りをしているんだな」


 「そうですよ。このお祭りは『救世祭』と言って、前の勇者様が魔王を倒して世界が救われた事を祝って行わるお祭りなんです」


 街中を歩きながら、イリスの話を聞いていた。


 「一年に一回、全ての五大国では必ず祭りが行われるんです。そして今年はかつての大戦が終わった日の千年前だと言われています」


 「千年前…じゃあ、明日が勇者が世界を救った日なのか?」


 「そうなりますね。祭りは三日間行われて、明日の最終日には盛大な催しがあると聞いています」


 明日は千年前の異世界者が世界を救った日…。それを聞いて朔夜は疑問に思った。

 かつての勇者が世界を救った千年という区切り日に、新たな異世界者である朔夜がこの場所にいる事が…。


 (これは偶然なのか…、それとも“何か”意味があるのか…)


 まだ情報が少ない朔夜には結論は出せない。この先…一体何があるのだろうか。まるで先の見えない暗闇の中を駆け回っているような感覚だった。そんな不安と恐怖が朔夜の心をジワジワと蝕んでいく。

 朔夜の心境を知らず、隣にいるイリスは田舎者丸出しのように目をキラキラさせて王都の街見ている。


 「サクヤ様、見てください! あれが王都にある有名なグロープ時計台ですよ! 大きいですね!!」


 イリスが指を差す。そこにはイギリスにある有名な時計台と同じ程大きな時計台があった。かなり年期が入っているのか、アンティーク風にしているのかは分からないが、見る人全てに記憶が残る程の偉大な建造物に見えた。


 「時計台…あれがか!!? かなり大きいな」


 「この国のシンボルの一つとされていますから…ああ! こっちに服屋さんがあります、サクヤ様!! ちょっと見てきます!!」


 そう言ってイリスは見つけた服屋に全速力で入る。その姿を見ていると、朔夜は不思議と落ち着いてきた。


 「…考えても仕方ないよな。なんとかなるだろう…


 とりあえず、今いる現状を楽しもうとする。朔夜はイリスの入った服屋に入る。



 ◇  ◇  ◇



 それから数時間後(夕暮れ時)




 「はあ~疲れた…」


 朔夜は近くにあったベンチに座る。あれから数時間。イリスは街中にある服屋を探して、服を見て、触って、生地を確かめてと手当たり次第に服の勉強をしていた。

 朔夜もイリスに連れられ服屋巡りをしていたが、数時間も歩かされると疲労が貯まってきた。


 「イリスは服屋の店主と話しているし、少し休ませて貰おう…」


 とうの本人はさっきの服屋の店主と服についての熱く語り合っている。その熱は更に高まる続けている。まだ時間がかかるだろう。

 ふと、街中をに建っている大時計を見ると、五時を回っていた。


 「さて、まだイリスは帰って来ないしどうするか。…そうだ! こんなときのゲームの基本は街中の人に話しかけて情報を集めよう!!」


 またしてもゲーム脳感覚で自分の行き先を決めた朔夜だが…


 「すいませ~ん、あのですね…」


 「済まんが兄ちゃん後にしてくれ! 今忙しいんだよ!!」


 「あのですね…」


 「買う気がないなら、商売の邪魔だ!! 帰れ!!」


 「あの…」


 「お母さん~! へんな兄ちゃんが…」


 「駄目でしょう、知らない人に付いていっちゃ!」


 「………」


 

 三十分もすると、朔夜はさっきのベンチに戻り、溜め息をつく。


 「……よくよく考えてみたら、普通に話して情報貰えるとか、無理じゃないか。でも初対面の人だからといって、みんな冷た過ぎないか…。特に商売人の人はただ声をかけただけなのに…」


 ベンチに座り直して、自分の浅い考えを深く後悔していた。


 「なら目を閉じ、耳を澄ませてみよう。周りの人達の話を聞いて情報を集めれば、大丈夫だろう…」


 何が大丈夫なのか分からないが、とりあえず朔夜は耳を澄ませて、周りの話を聞いてみた。


 (集中……集中………)


 すると周りから色々な話声が聞こえてきた。


 「知ってます、奥さん♪ 実は魚屋さんの奥さんがですね実家戻ったらしいですよ…」


 「あそこのパスタ…美味しいらしいけど、材料に危険な調味料を使っているらしいぜ…」


 「わはははは、我こそは金魚すくいの名手!! キャプテンゴールドフィッシュである。皆の者、頭が高ーい!」


 「やっぱり、酒は上手いな♪ よし今日は無礼講だ!! みんな好きなだけ飲みやがれ!!」


 「わーーーい! やっぱり王都には食べ物やお菓子がいっぱいあるよ、レン!! 次は何を食べようかな!」


 「ちょっとレイナ!! まだ食べるのか!? 昨日から食べ過ぎだろう!! って待てコラ!」


 「クソ! 周りはカップルだらけ……幸せな奴は全員滅べばいいーー!!」


 朔夜は目を開けて軽く深呼吸する。


 「…………ロクな情報がない」


 普通に当たり前のことだが、朔夜は項垂れて肩を落とす。


 「魚の奥さんとかご機嫌な酒飲みとかどうでいい…。パスタとキャプテンゴールドフィッシュは少し気になるけど多分役にたたねぇ…。最後の独り身は同情する…」


 まだ誰かいた気がするが、朔夜は特に気にしていなかった。すると服屋の店主と話していたイリスがお店から出てきた。


 「サクヤ様、お待たせしました!! …なにやらお疲れのようですが、大丈夫ですか?」


 「いや…大丈夫だ。問題ない」


 とてもそうには見えなかったが、イリスは気にせずに買った服を鞄に入れ込み、朔夜に近寄る。


 「そうですか…。では、サクヤ様。今日はもう王城に行くには遅いので、今日は近くの宿屋に止まって明日王族の方に謁見を頼みましょう」


 「それはいいけど、大丈夫なのか? 俺、本当に勇者か分からないのに、王族の人に会って…」


 「それは私からでは何とも言えませんが、多分大丈夫だと思いますよ。サクヤ様の容姿は完全に異世界者の特長に当てはまり、服装も前の勇者が着ていた服に似ています。それなら門前払いされる心配はないと思いますけど…」


 イこの世界には黒髪黒目を持つ人はいない。それを持つ朔夜は誰がどうみても異世界者だと信じてしまう。だからこそ、朔夜の髪と目が周りの人に見えないように帽子を被り、服も見えないように上からマントを羽織っている。


 「まあ、確かに道行く人の髪とか目の色を見ていたけど、黒目どころか黒髪すらいなかったな」


 「はい! だから大丈夫です。きっとお城にいる王族の方は信じてくれますよ!!」


 イリスは屈託のない笑みを浮かべる。その顔を見ていると何故か安心させられる。


 「わかった。どうせ行く所はないんだし、明日お城に行ってみるよ」


 「はい、サクヤ様。私も付き添いますし、サクヤ様が空間から出てきた事も見ていますから、必ず異世界から来た事を証明します!!」


 「ありがとう、イリス。そういえば、今日の泊まる宿屋はあるのか?」


 これだけの規模のお祭りなら、当然何処の宿屋も満杯のハズ。無いなら何処かに野宿するしかないと思っていた朔夜だが、イリスは誇らしげに


 「大丈夫です。さっきの服屋の人に穴場の宿屋の場所を教えて貰いました。お値段もお手軽で、部屋もまだ空いていると言っていました♪」


 「そうなのか。じゃあ、そこに行こうかイリス」


 「はい、サクヤ様♪」


 そして二人は暗くなる夕暮れ時の道を歩いていく。



あれ?


何かいたような……気のせいか♪

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