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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
2/33

剣士、始まりの疾走

遅くなりました。話の内容が繋がってないと思われますが、今のところ問題はありません。


あと6/14付けで修正しました。宜しければまた見て下さい!




 異世界から勇者が現れ、魔王との戦いから約1000年がたった。人々の記憶からかつての世界大戦の記憶が消え去り、古き歴史の一つに成り果て、1000年たった現在にいたっては、子供に読ませるおとぎ話になった。この世界の誰もが知っている有名なおとぎ話に…


 現在、世界は平和であった。小さな争いはあるが、それでもこの世界の均衡は保たれている。それはかつての戦いから勝利した者達が造り上げた5つの大国が大きな争いが起きないよう交易を行っているからである。


 しかし、大陸の南東にある人間が多く住んでいる国「エメライト王国」。その国で世界を驚愕させる出来事が起こった。



 ◇ ◇ ◇ 




 出来事が起こる三日前  



 キューラルク山  山中


 

 険しい事で有名なキューラルク山の山中を茶髪の少年は走っていた。


 山を滑り落ちながらも体勢を崩さずに走り回り、汗を流しながら、息を切らしながら、枝や草木に身体に擦り傷を作りながらも自身の手に持つショートソードの剣を離さず、周りの気配を探りながら山の中を走っていた。


 「ハァ…ハァ……ゼェ…ハァ……」


 石の下や木の上など何かを探している様子だった。しらみ潰しに探していたが見付からなかった。少年は必死になって“探し物”を探して山の中を探索していた。


 「くそぉ、何処に置いたんだよ!!。全然見つからないじゃないか。このままじゃ……」


 その時少年は喋ることを辞め、上から迫り来る剣の刃を自分の剣で防いだ。


 キィィィィィィィィーーン


 激しい金属音が耳に響く。完全に少年の死角から突いた攻撃だったが、少年は後ろから感じる威圧と殺気に気付き何とか防御することに成功した。しかし防御に成功からといって事態が好転した訳ではなかった。

 襲撃者は剣に力を入れ、少年を上から力任せに押しきる。


 少年はなんとか相手の剣を弾き、距離を取ろうとする。しかし相手はそれを許さずに追撃をかけた。相手から放たれる剣は異常なまでの剣速であり、瞬きをした瞬間に全てが終わる程に相手の剣速は早かった。

 少年はそれを何とか回避するが、泥に足が滑り地面に倒れてしまった。


 「しまった、やば……い!?」


 少年は戦闘中でありながら、別のことに意識を向けてしまった。普通に考えれば戦闘中に余所見をするバカはいない。

 しかし、少年は見てしまった。気付いてしまった。三十メートル離れた場所の大きな石の上に探していた“箱”があったからだ。


 (あった。ありやがった。何故に気付かないんだよ俺は!)


 今すぐに取りに行きたいが…相手は待ってくれない。相手は剣を構え、斬りかかって来る。少年も剣を構え相手に挑む。

 相手の剣も速いが少年の剣の速度も負けてはいなかった。剣で打ち合い続け、打ち合った回数が軽く二桁を越え三桁に入るまで三十秒もかからない速度だった。普通の人なら数秒でミンチになる剣の舞を少年は攻撃し、回避し、防御した。

 だが時間が立つに徐々に少年は押され始めた。相手は更に剣速を上げ、少年を追い詰めていく。


 そして、最後には少年の剣が宙を舞った。それを見て相手は自分の勝利を確信した……はずだった…。


 しかし、少年の顔は笑っていた。これを狙っていたと思わんばかりの笑みを浮かべる。少年は右足に力を入れ、地面を蹴り上げた。正確には地面に落ちていた落ち葉を蹴り上げた。


 あまり右足の速度に落ち葉が大量に舞い、襲撃者は視界が隠され一瞬だけ少年の姿を見失った。だが“一瞬”あればこと足りた。少年は最後の力を入れ、脚力を強化し一瞬で三十メートル先にある石の上にあった“箱”を掴み取った。


 「はあっ、はあっ、よっしゃーやったぜ!!」

 

少年は掴み取った“箱”を持って武器を持った相手に近づきこう言った。


 「どうだ、これで旅に出ても文句はないな“師匠”」


 少年はそう言うと“彼女”は剣を鞘に納め、呆れた様子でこう言った。


 「あれで勝ったと言わせるのはかなり無理があるが、約束だから仕方ないな」


 


――――――――――――――――――――――



 

 彼らは見晴らしの良い場所まで移動し、しばらく休憩をした。


 「全くあれが本当の実戦だったら、お前は確実に魔物に殺されていたぞ。確かに今回の勝利条件が“私に一撃を入れる”か“私に倒されるまでにその箱を探し出し手に入れる”かだが、もうちょっと私に立ち向かって欲しかったと本音を洩らしたい!」


 師匠と呼ばれる女性は愚痴を漏らしながら愛刀の手入れする。


 「いや、師匠と対峙して生き残れる訳がないじゃないか。飛竜相手に無傷で勝ってしまう人に一撃入れるってまず無理があるだろう!」


 少年は水を飲みながら、走り回った足に薬草を塗り身体を休ませた。


 「だから後者を選ぶしかないんだよ。この広い山の中でこの小さい箱を見つけるなんて大変だけど、前者よりも勝てる可能性が高いんだよ」


 勝てないと分かっていても真っ向から勝負したい……気持ちだってないわけじゃない。でも、この勝負は少年の将来が掛かっている大切な戦いのため、どうしても負けられなかった。


 (そりゃ、インチキしたり卑怯なやり方で勝てても嬉しくないけどさ、他にやりようがないじゃないか)


 少年にもプライドがあり、剣士としての誇りがある。このような作戦はあまり好きではなかった。

 師匠はそんな少年の気持ちを知ってか、今回の作戦を良く評価した。


 「まあ、確かに今回の作戦はお前のやり方が正しい。勝てない相手に挑んで負けては守りたいものは守れないからな」


 「そうだよな。やっぱ師匠みたいな“化け物”相手に正々堂々とか無理だよな!!」


 「……次は容赦しないから、注意しないさい。さもないと…」


 愛刀の剣を“軽く”右に抜き放つ。それだけで百メートル以上距離のある大木の木が次々に横に倒れた。


 「たかだが“あの程度の距離”を稼いでも、私にとっては充分間合いなのよ。覚えておきなさい」


 「……イエッサー…」


 「それはそうと、私に勝ったことでやっとお前は一人で旅をする権利を得たんだ。良かったじゃないか」


 「そうそう、忘れてた。本当にいいのか?俺、旅に出ても!?」


 「『私に勝てたら一人で旅をする権利を与えてやる』と言ってしまったからな。まあ、剣の腕はともかくとして気配の探索・隠蔽、冷静な状況判断、そして周りの環境を上手く使うことに関しては言うことがない」


 「剣の腕はともかくって、何気に傷付くのだが…。俺って剣士な訳だし」


 「まあ、これだけ出来ていれば大抵の輩には勝てるだろう。…負けることは許さんし」


 弟子を見る師匠の目に殺意からこもる。その目は何人も人を殺ったことの殺戮に満ちた狂気と言っても過言ではない目だった。

 彼が戦いで敗北したと聞けばすぐに勝った方の相手と負けた方の相手(つまり弟子)を殺しに来る。

 気を付けよう……少年は心の中で本気でそう思った。


 「さて、それではお前にはまず王都に行ってもらう」


 「え? 自分で好き勝手に旅をしてはいけないのか?」


 一々師匠に行き先を決められるのは一人旅と言えるのか。少年は文句を言ようとしたが、すぐに問題は解決された。


 「別にお前の旅にあれこれ言うつもりはない。しかし、旅をするなら何処かのギルド加入した方がいいと思ってな」


 師匠は面倒な顔しながら話した。ギルドに加入すればギルドカードが貰え、それが身分証の役割をし何処の国に入る時も手続きが早く済むということだった。色々な国を見て回るならギルドに加入した方がいいという。

 更に仕事をするならギルドで剣士系向けのクエストを行えば、資金を稼ぐだけでなく、実戦経験を積むことが出来るのだ。


 「まあ、本当ならギルドは自分で決めた方がいいが、中には新米冒険者を奴隷として売る悪徳ギルドも有るから私の知る良いギルドを紹介しておこう思ったからだ。かなりでかいギルドで、後輩の面倒見も良いと評判のギルドだ。入って損はない」


 「分かった。じゃあそのギルドは王都にあるのか?」

 

 「基本的に大きな街には支部があるがここからだと王都の方のが近いし、一回お前は王都がどんなところか見てこい。きっと驚くぞ。…色々意味でな」


 師匠の最後の言葉は聞き取れなかったが、多分大丈夫だろうと少年は自己判断した。




 「師匠」


 「ん、どうした?」


 少年はで頭を下げた。


 「今まで俺を鍛えてくれてありがとうございます。これからも鍛練は怠らなず、剣の腕を磨きます。師匠から教わったこの剣術で自分の剣の道を貫いて行きます!」


 そして少年は頭を上げる。その目は真剣なまなざしで師匠を見ていた。


 「そして、次にあった時にはまた俺と勝負して下さい。正々堂々と。本気で…」



 師匠は少年の話を黙って聞いていた。弟子の思いを最後まで聞いていた。聞き終えると笑みを浮かべる。


 「ああ、受けて立とう」


 弟子と師匠は互いに拳をぶつけ約束した。剣士の誇りをかけて。




――――――――――――――――――――――




 日がだいぶ傾き出した。今日は身体を休ませ、明日から旅を始めようと少年は決めた。


 「さてと、じゃあ旅をするじゅ「準備ならもう終わっているぞ」」


 ドスン、と重たい荷物を少年の両手に渡された。形はリュックのようで、中身は旅に必要な最低限の荷物が詰め込まれていた。


 「え…? 何…これ……、師匠…?」


 「何って旅に必要な荷物に決まっているだろう。大抵の物は入れたから、お金も入れてあるから無駄遣いするなよ。どうした? さっさと旅に出ろ」


 「えぇーー!! 今からーーーーーー!!!!」


 「当たり前だ。もうお前は一人で旅する権利を手に入れたんだ。だからさっさと出ろ」


 何を言っているんだこの弟子は、と言わんばかりの目で少年に言う。少年は今日の試験のせいで身体中が悲鳴を上げる程体力を削られている。そんな身体で王都までの道のりを行くのは、かなりの体力の消耗になる。


「あとこれはさっきの勝負の評価だがギリ“可”だな。敵前逃亡によりペナルティとして今から王都まで三日で行け」


 「はあっーーーー??? ここから王都まで一週間掛かるって聞いたぞ!! 絶対に無理だろ!!」


 「私は己の足だけで一日で着いたぞ。頑張ればいける」


 やっぱり、勝てるのだろうか、と少年は自分の師の化け物染みた体力と筋力に唖然とする。


 「ええぃーい、つべこべ言わずに早く行きなさい。……もし三日過ぎても着かなければ………分かっているね!」


 未だに旅に出かけない弟子に苛立ったのか、師匠は追い打ちをかけてくる。すぐさま少年は荷物を肩にかけ、旅に出かける。


 「分かりましたよ!! 行けば良いんでしょ、行けば!!」


 荷物を持ち、山から降りようとする。すると師匠は何か思いだしたようにこう言った。


 「おい“ジーク・ミラニスタ”」


 「何ですか。日が出ている間に距離を稼ぎたいのですが…」


 いきなり呼ばれ、振り向くとさっき試験の小さい箱がジークに投げられた。


 「餞別だ。受けとれ」


 「何ですこれは?」


 箱を開けると中には指輪入っていた。黄色に輝く宝石がついた指輪が一つ入っていた。


 「これは? 男がつけるのは似合わないだろうこんな宝石」


 「良いんだ、これはお守りだ。出来れば着けて貰いたいがしたくないなら持っているだけで良い。持っているだけで効果あるだろう…」


 「なんか思い出のある品なのか、これ。そんな大切な物を俺に渡していいのか?」


 「もう私には必要のない物だ。だが…もし次にあった時に捨てたとか無くしたと言った場合は……本気でお仕置きするからな!」


 しっかりと持っていることにしておこう、と心に決めたジークだった。


 「じゃあ行ってきます。師匠」


 「頑張れよ、ジーク。我が弟子よ」



 そして、ジークはエメライト王都まで長い道のりを懸命走っていく。


 彼女は去っていく弟子の後ろ姿を見ていた。その口元は微かに笑っているように見えた…。



 

初めてキャラを出しました。これからどんどん増えていきます。

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