ここは何処?
色々あって遅くなりました。
(特に主人公の名前を思案してました)
記念すべき十話目です。
(⌒∇⌒)ノ"
◇ ◇ ◇
キャラベット街道近くの森
「すいません。少し気が動転してしまって…」
「いや、こちらこそすいませんでした」
草木が広がる森の中で、唯一拓けた木の下で二人は向かい合って座り謝っていた。
彼は女性のある部分に触ったことについて。
イリスは起きたばかりの人に全力の平手打ちを叩き込んだこと。
二人は出会ったばかりなのに顔を合わせられないくらいに気まずく、視界に入れないほど仕方がなかった。
「「……………………………」」
二人の間に沈黙続く…時間はそんなに経っていないが彼らにとってはまるで数時間くらい経っている気がした。
(どうしよう…さっき思わず叩いちゃった。ゆっくり聞けばいいとか思っていたけど、そんな雰囲気ではなくなっちゃったし…何をどうしたらいいんだろう…)
(見ず知らずの女性の胸を触ってしまった…完璧に訴えられる。…もう警察沙汰だ。死んでないことは嬉しかったけど、今度は社会的に死亡確定
だ…。どうしよう…)
「「………………………」」
二人の空気は更に重くなる。精霊達も彼らの回りを漂っている空気のためか、彼らに集まってこない。
すると、この状況に耐えかねてイリスは口を開いた。
「あの……」
「なっ何で…しょうか?」
「…ええ~と、まずは、お名前を…聞いてもいいですか?」
「名前?…ああ、そういうことですか(名前聞かないと警察とかの書類書けないからな)」
ただ名前を聞きたかっただけのイリスに、少年は酷く曲解した考えを起こしている。それほど、少年はマイナス思考が強かった。
「俺の名前は十六夜 朔夜です」
十六夜 朔夜…。それがこの彼の名前である。
「イザヨイ…さま? それがお名前で、名字がサクヤで間違いないですか?」
「? いや、十六夜が名字で、朔夜が名前ですけど」
名前と名字を間違うなんて、どうすれば間違うのだろう、といいたげな朔夜だった。だが顔立ちが外国ぽいので、間違うのも仕方ないのかもしれない。
「それではサクヤ・イザヨイさまですね。私はイリス・バーニタニアと言います。出来れば…イリス、とお呼び下さい」
「…イリス・バーニタニア? 失礼ですが、何処かの外国の方?」
「外国…ですか? 私はエメライト王国出身ですよ。まあ、エメライト王国と言っても、王都から離れた田舎町出身ですけど」
「エメライト……? 聞いたことない国ですけど何処かヨーロッパの方にある国何ですか?」
朔夜は重苦しいかった空気を何とかしようと知らない異国の話題に変えていく。だが、朔夜が思っているのとは全く違った内容が飛び込んできくる。
「ヨーロッパって何処ですか? そもそも、ここはもうエメライト王国領土ですよ。しかも、王都からかなり近くの街道の森の中なんですけど……」
「へぇーそうなんですか。此処がもうエメライト王国って所なんですね。知りませんでしたよ、ははは……………………………はい?」
朔夜は目の前のいる女の子…イリスの言った内容に驚愕した。一瞬、イリスの冗談だと思ったが彼女の表情や瞳がそれを否定させた。そして、朔夜の顔がどんどんと蒼白になり、冷や汗が止まらなかった。
「エメライト? 王都? えっ何それ!? ここは日本じゃないの! 俺………もしかして何処かの国に拉致られたっ!!!」
彼…朔夜は今置かれている状況が分からなくなった。多分、事故に巻き込まれた衝撃で体がぶっ飛び、ぶっ飛んだ先にいた女性の胸を触ってしまったのだと思っていた。しかし、事態はもっと深刻な状況になっている。
朔夜はオドオドと落ち着かない様子で周囲の状況を見ながら叫んだ。
「エメライト王国!? マジで、何処だよ、それ!? 全く聞いたことない国なんだけど…。ヤバい、俺英語とか話せないし、お金も余りない! いや、それよりパスポートとか無いから、身分を証明するのもない…ていうか俺、密入国してる~~~! どうしよう、どうしよう……。女性の胸を触ったとかどうでも良くなるくらいヤバーーい!!!!」
「あの落ち着いて下さい! 何を言っているか分からない部分がありますし、色々と勘違いしているので落ち着いて下さい。………あと胸の件をどうでもいいとは言わないで欲しいです……ぐすっ…」
「あっ…すいませんでした…。何か色々と混乱しているので……」
朔夜はイリスの言葉を聞き、冷静になり自分が置かれている状況を考えてみた。
(でも、本当にここ何処だ? 事故があったのは○○町の小さな交差点だったよな? 周りは森みたいだけど、近くに森とか無かったと思うけど…)
朔夜は色々と分からなく頭が痛くなった。すると、目の前のイリスと言う女性が朔夜の顔を…正確には朔夜の瞳をじっ~と見ている。イリスの金色の瞳が朔夜の瞳に映る程近かった。
「あの…どうかしました?」
「…黒い瞳………やっぱり、そうなんですね!」
イリスの瞳がキラキラと輝きを出し、更に朔夜に近付いてくる。朔夜とイリスの距離がかなり近くになったことに朔夜は顔が少し赤くなるが、イリスは気にしていない。
「やっぱり…あなたは異世界者…いえ、勇者様なんですね! 伝説の通りです! 感激しました、伝説のあの勇者様に会えるなんて今でも、信じられません! お会いしたかったです、勇者様!!」
イリスは感激のあまり、朔夜に抱きついた。朔夜はいきなりイリスに抱きつかれて困惑している。そして、イリスが抱きつくことによって、イリスの胸が朔夜に当たり、赤かった朔夜の顔が更に赤くなっていく。朔夜は当たっているモノの感触に戸惑いながら、抱きしめているイリスに質問する……若干叫びながら。
「あの…イリスさん! さっきからイマイチ状況が分からないのだけど…良ければ色々と今の状況を教えてくれるかなー!」
「あ、すいません。嬉しさのあまり、きちんと説明していませんでしたね」
そういうとイリスは朔夜から離れて朔夜に向かい合いながら座る。イリスは「おほん」っと咳をして朔夜に話す。
「えーと、まず勇者様はこことは違う世界から来たと思うのですが、それは分かりますか?」
「えっ…違う世界ってことは、ここって異世界!? 地球じゃないの!」
イリスの発言に朔夜は驚きながら聞き直す。
「はい、私達の世界はその『チキュウ』とは違います。私達の世界はステンシアって言います」
イリスは淡々と朔夜に説明していく。
「勇者様は、今は塞がっていますが空に出来た空間から落ちて来たのは分かりますか?」
イリスは頭上の空を指差しながら言う。割れていた空間はもう閉じている。何もない空を見ながら朔夜は記憶の隅にあるものを思い出そうとする。
「…そう言えば、気絶している時に体がフワッて浮いているような感覚って、あれ落ちていたんだ……」
「はい、そして勇者様はですね…空間から落ちて……その…地面に激突しました…」
「……ああ、あの時の衝撃と痛みって地面に叩き付けられた感覚なんだ……」
イリスは申し訳ないように話し、朔夜はさっきの出来事と痛みを思い出そうとしたが、今は関係ないので後にした。
「で…何で俺が勇者なんだ? 異世界から来た人って皆勇者なのか?」
「それは……何から話していいのか分かりにくいですね」
イリスは少し考えるとあることを思い出して鞄からある本を取り出した。それは、子供が見そうな絵本に見える。
「そうです、これがあったのを思い出しました。勇者様、これをお読み下さい」
朔夜はイリスから本を受け取り、恐る恐るページを開いていく。そして全てのページを見終わった朔夜はイリスに言う。
「なあ…イリスさん」
「何でしょう? 後、私のことはイリスでいいですよ」
イリスは笑顔で言う。その笑顔はあまりにも可愛く素敵な表情をしていた。朔夜もその笑顔に一瞬言葉を失うが、すぐに本を見た感想を述べた。
「じゃあ、イリス」
「はい、何でしょうか?」
イリスのまっすぐな瞳を見ながら、朔夜は語る。
「…………………字が読めない」
「…………………はい?」
その後、イリスに本を読んで貰った。内容が完全に童話のため聞いていると小さい子どもに読み聞かせられている気分になり、朔夜は少し悲しかったという。
次は三日後くらいにだします。




