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怪力魔法ウォーリア系転生TSアラサー不老幼女新米侍女  作者: Leni
第七章 首席侍女

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104.試合

 王都にて、御前試合が開かれる。

 御前試合とは、王や領主の前で行なわれる武術の試合のことだ。今回は国王主催の御前試合で、出場するのは各騎士団の騎士達だ。

 青の騎士団、緑の騎士団、近衛騎士団からそれぞれ代表を数名選別し、国へ帰還したばかりの秘密騎士団の面々と戦うのだ。


 国王を前にした試合とあり、国王と一緒にパレスナ王妃も人前に顔を見せる。

 首席侍女代行として、私も仕事に駆り出されることになるだろう……と思っていたのだが、御前試合の日はこの国における週に一度の休日で、私も侍女の仕事が休みとなる日であった。

 誰かと休みの日を交換するなりして休日出動になるとばかり思っていたのだが、フランカさんがそのまま休みを取って良いと言いだした。

 産休前の最後の仕事として、一人でパレスナ王妃のお供を務めたいということだった。


 なるほど、それなら私も前日までの準備は手伝いつつ、当日は自由に過ごさせてもらおう。

 そう思い、連日懸命に働き、とうとうやってきた休日。私は、同じく休みであるカヤ嬢とククルを誘い、御前試合を観戦しに会場へ訪れていた。


「盛況ですね」


 ククルが、観客席の最前列に陣取りながら言う。

 ここは、王城の外にある練兵場。御前試合には一般市民の観戦も認められており、仮設の観客席が練兵場に用意されていた。

 本来ならばこういう催し物は王都郊外にある競技場で行なわれるのだが、競技場は現在改装中。広い練兵場の大半が観客席に作り替えられていた。


 その盛況ぶりを見て、私も言う。


「満員御礼だな」


「キリンさんが席取りをしてくださらなければ、最後尾で見る羽目になったかもしれませんわね」


 外行き用の動きやすいドレスに身を包んだカヤ嬢が周りを見回しながら言った。さらに、ククルが簡素な木の座席を手で触りながら言う。


「ゴーレムを使って席取りなんて、キリンお姉様でなければ無理ですね」


 そう、御前試合がチケット販売なしの無料で一般公開されると知った私は、急造のゴーレムを作り、昨日の朝から席取りに向かわせていたのだ。私の得意魔法は妖精魔法だが、ゴーレム作りも詠唱を必要としないので、割と得意分野である。

 逆に、呪文の詠唱をすると威力が上がる類の、戦闘用の攻撃魔法などは苦手だ。私の喉には人間の声帯がついていないからな。


 さて、最前列に陣取ったわけだが、すでに騎士達が練兵場に入場している様子がここから見える。

 私は視力がいいので遠くに居る騎士の姿もくっきりと見えるのだが、その中に見覚えのある顔が何人も見てとれた。青の騎士団長のセーリンなどもいるが、もし出場者なら婚約者のカヤ嬢は大盛り上がりだろうな。


 私は、セーリンの姿が見えたことをカヤ嬢に報告し、それを受けたカヤ嬢が興奮して、彼が出場者であることを説明し始めた。

 ククルも仕事を担当している近衛宿舎の騎士が二名出場すると言い、私達はどんな試合内容になるか言葉を交わし合い、退屈な待ち時間を消化していった。


 やがて時間は過ぎ、膝の上に軽食を広げて小腹を満たしていた時のこと。太鼓の音が鳴り、場内に声が響きわたった。


「国王陛下の入場である!」


 練兵場に、メッポー(馬のような生物)に騎乗した騎士達が入場する。その後ろに、メッポーに引かれていない車、国王専用の自動車が続いている。

 騎士の列と国王専用車は練兵場の中程まで進み、そして止まる。

 国王専用車の扉が開き、中からきらびやかな服を身にまとった国王とパレスナ王妃が出てくる。そして、用意されていた国王の席に二人は移動した。お、フランカさんがパレスナ王妃の後ろについたな。あちらは全て任せても問題なさそうだ。


「国王陛下からお言葉をいただきます」


 そうアナウンスがされ、観客席が静まりかえる。

 そして、国王は立ったまま周囲を見渡し、拡声の魔法がかかった魔法道具を手にしながら口を開いた。


「先日、長らく任務を任せていた騎士達が、世界樹の『最前線』から帰還した。彼らはその力をもって活躍し、この国に世界樹の恩恵を持ち帰った。彼らは勇敢な戦士である。その戦士一同に、今日はご足労いただいた」


 おっと、待つのに飽きてきたのか、膝の上にいるキリンゼラーの使い魔が、もぞもぞし始めたな。あとちょっとだ、お菓子を食べて我慢していてくれ。


「だが、『最前線』は遠く、彼らがその実力をこの国の者達に披露する機会はなかった。よって、ここに御前試合を開き、英雄である彼らの強さを披露してもらおうではないか。相対するのは、いずれもこの国を守り続けていた歴戦の猛者達である。互いに、その鍛え上げた武をこの王の前に見せてほしい」


 今日の国王は真面目さんだなー。まあ、国民を前にしているのでこんなものか。


「ふー。ま、そういうわけで、今年のアルイブキラ御前試合、始まるぞー!」


 あ、いつもの国王だった。国王が手を大きく振り上げると、わっと観客席が沸いた。

 国王が着席し、観客達は私語をもらし始める。そして、観客席を縫うように軽食を売る売り子が行き交う。


 そんな中、太鼓の音が響き、第一試合の準備が始まる。

 戦う騎士の名が読み上げられ、鎧に身を包んだ二人の騎士が進み出てくる。ええと、いきなり青の騎士団の騎士団長セーリンの出番か。


「きゃー! セーリン様ー!」


 カヤ嬢のテンションがいきなり最大値を突破する。

 私とククルはカヤ嬢をなだめながら、二人で言葉を交わす。


「で、じっさいどうなのですか、お姉様。カヤの婚約者の実力は」


「あいつは魔眼を持つ魔人で、青の騎士団では一番の実力者だぞ。しかもまだ若いから、肉体的には全盛期だ」


「それは期待が持てますね」


 一人盛り上がるカヤ嬢をなんとか抑えつけながら、試合開始を待つ。

 練兵場の真ん中に作られた試合用の舞台の上では、木剣を持った二人の騎士が視線鋭く向かい合っている。

 観客席の観客達も、固唾を飲んで見守る。

 そして、太鼓の音と共に、御前試合第一試合が開始された。


 それと同時、セーリンの対戦相手からものすごい闘気が発せられた。うーむ、これが飛竜を一人で退治した騎士レイ、その弟子の実力か。侮りがたいな。

 対するセーリンは待ちの姿勢なのか、木剣を構えたまま動きを見せることはない。


 相手騎士は、闘気をたぎらせたままセーリンに突撃。セーリンはその一撃を難なく回避した。

 そして、相手騎士の連続攻撃がセーリンを続けざまに襲う。

 それを全て魔眼の力で避けてみせるセーリン。さらに、セーリンはカウンターの一撃を相手に見舞う。

 相手騎士はその一撃を木剣で打ち払い、距離を取る。


「はぁー……」


 一連の攻防を見守っていたカヤ嬢から、溜息が漏れる。まさしく手に汗握る一幕であった。


「すごいね、カヤの婚約者」


 ククルがカヤ嬢にそう言うと、カヤ嬢は満面の笑みを浮かべて「そうでしょう」と胸を張った。


「おっと、二人とも、次来るぞ」


 私はそう注意を促すと同時、今度はセーリンが攻勢に出た。

 セーリンの一撃を防ごうとする相手騎士だが、それはフェイント。セーリンの木剣は相手の防御をすり抜け、強烈な突きが相手の胸元に命中した。


「そこまで! 勝負あり!」


 太鼓の音が響き、セーリンの勝利で決着がついた。観客席からは歓声が響き、カヤ嬢は両手を上げて喜んだ。

 キリンゼラーの使い魔も人間同士の戦いが面白かったのか、私の膝の上でぴょんぴょんと飛び跳ねている。


「勝ちましたわ!」


 カヤ嬢がそう私の手を握りながら言った。私も、カヤ嬢に対して言う。


「気功術の力量では負けていたが、剣の力量では大きく勝っていたのが勝因かな」


「荒事には詳しくないのですが、セーリン様の剣術は誇るべき領域にあるのですね!」


「そうだな」


 そうしているうちに、次の試合の準備が終わったようだ。


「緑の騎士団歩兵剣総長!」


 そんな出場騎士の肩書きが聞こえた。


「あれって、以前キリンお姉様に懸想していたという、緑の騎士様ではないですか?」


 ククルの言葉に、はっとする。次の出場者は、緑の騎士ヴォヴォか!

 以前、私はあいつに気功術の手ほどきをしたことがある。その当時の彼はしょぼい闘気しか使えなかったのだが、あれから半年以上経つ。緑の騎士団から代表に選ばれるほどだが、どれほど力をあげたのだろうか……。


 試合開始の太鼓が響き、向かい合う二人の騎士は闘気を高めた。

 その闘気の力量は……両者互角!


「すごいな、ヴォヴォの奴。私が気功術を教えてから一年も経っていないのに、騎士レイの弟子に匹敵するほどの闘気があるぞ」


 そして、繰り広げられた試合は……剣の力量差でヴォヴォの負けであった。


「先ほどはセーリン様がなんとか勝利しましたが、やはり秘密騎士団の方々は、お強いのですね」


 そんなカヤ嬢の言葉に、私はとりあえず頷いておく。他の面々の強さがまだ不明なので、秘密騎士団が強いとは断言しないでおく。

 その後、何試合か戦いが続き、とある対戦に観客達の注目が集まった。女性騎士同士の戦いだ。

 片方は、近衛騎士団第三隊。つまり、女性騎士の集団からの選出だ。


「ん? あれ? 近衛騎士側、見覚えのある顔のような……」


 と、私は近衛騎士の顔を見てそんな言葉をぽつりと漏らした。

 そこで騎士の名前がアナウンスされる。

 騎士の名前は、フヤ。


「あっ、後宮でパレスナ様の護衛だった人! そうか、代表に選ばれるほど強かったのか」


「お知り合いですか、お姉様」


「ああ、前に仕事場が一緒だった。無口な人だったから、あまり交流はできていないのだが……」


 そして始まった試合は、フヤの負けだった。

 ミステリアスで今まで底を見せてこなかった人物だが、騎士レイの弟子である秘密騎士団に勝てるほどの力量は持っていなかったようだ。


 その後も戦いは続き、また私の知り合いの顔が見えた。


「あっ、ハネスさんです! キリンお姉様、ハネスさんですよ!」


「そうだな。確かにハネスなら、近衛騎士団を代表して出てきてもおかしくない強さだ」


 舞台の上にいるのは、木製の斧を持った大男。近衛騎士のハネスだった。

 その姿を見て、ククルが心配そうに言う。


「ハネスさん勝てますかね……?」


「どうだろうか。どうせなら勝ってほしいが」


 そして試合が開始される。

 気功術の力量は互角。後は互いの武の競い合いだが……ハネスは押されていた。

 有効打は貰っていないが、相手騎士の巧みな剣さばきに、少しずつ舞台の端まで追い詰められていく。

 一歩、二歩と交代していき、やがて舞台の端から落ちそうになり……。


「ハネスさん! 負けるなー!」


 ククルがそう叫ぶと、ハネスは相手の剣を弾き、闘気をたぎらせ斧を上段から相手の肩に向けて勢いよく叩きつけた。

 相手騎士は闘気をまとった木剣でそれを防ごうとするが、木剣は折れ、斧が肩当てに命中する。


「おっしゃあああッ!」


 逆転の勝利をつかんだハネスが大声で喜びを表わした。

 そして、何やらこちらの方を向き、木斧を持った手を空にかかげてみせた。


「ククルの声援がハネスに届いて、逆転の力につながったのではないか?」


 そう私がからかうように言うと、ククルはきょとんとした顔で答える。


「え、当然ですよ。私の言うことは、ハネスさんいつも聞いてくれますから」


 あ、そう……。そうかぁ。

 私はなぜか寂しい気持ちになりながら、キリンゼラーの使い魔の毛を触って心を落ちつかせる。


 その後も試合は順調に消化されていく。ほとんどが秘密騎士団側の勝利で終わり、やがて最終試合となる。


 秘密騎士団の代表をしていた男が、木製のハルバードを持って舞台に登る。

 対するのは、近衛騎士団第一隊副隊長である、オルトだ。

 妥当な組み合わせだな。何故なら、オルトの奴は――


「聞くところによると、貴君が今の王国最強と言われているとか」


 秘密騎士団の代表がそうオルトに言う。そう、オルトは王国最強の騎士なのだ。

 対するオルトは、木製の長槍を手に握りながら、鎧の兜越しに答える。


「いくつかの御前試合で勝利を重ねた結果、王国最強の騎士と称されるようになりました」


「なるほど、相手にとって不足なしだ」


 そう言って、代表は構えを取り、試合の開始を待つ。

 が、彼の口はまだ閉じていなかった。


「ところで貴君。姫様に請われて後宮入りすると聞いたが?」


「ええ、この御前試合が終わり次第、後宮入りする予定です」


「そうか……」


 姫様とは、国王の妹ナシーのことであろう。

 代表の男は、つよくハルバードを握りながら言葉を続ける。


「我らが『最前線』におもむく前、当時の姫様はまだ幼く皆で成長を見守っていた。そして、帰還してそのお姿を拝見した時、正しく成長されていた姿に涙が出そうになった」


「…………」


「姫様は皆の姫様なのだ……添い遂げるつもりがあるなら、姫様を守り切れるだけの力、ここで見せてもらおうか!」


 あ、あの代表、シスターコンプレックスならぬプリンセスコンプレックスか何かか?

 ナシーの婚約者候補として後宮入りするオルトに、並々ならぬ感情を向けていやがる。


 一方、対するオルトは無言で槍を構えた。


「ふっ、言葉は不要か。ならば、後は力を示すのみ!」


 代表の宣言が終わると、タイミングよく試合開始の太鼓が響いた。

 その二人のやりとりに、観客席はもう大盛り上がりである。


 そして二人の戦いは始まり、ハルバードと槍が打ち合わされる。

 攻防は激しく、そして数十合と続き、互いに大きな力の差がないのが見てとれた。


 まさしく、今日一番の名試合。歓声は止まることなく、二人の攻防も止まることはない。

 やがて――


「……獲った!」


「くっ……貴君の勝ちだ!」


 オルトの突きが、代表の左胸を捉えていた。


 試合終了を告げる太鼓が響き、大歓声が練兵場を埋め尽くす。

 そして、そんな中でも私の耳には、試合を終えたばかりの二人の会話が聞こえてきた。


「これで、間違いなく王国最強の座は貴君の物だ」


「いえ……それは違いますよ」


「なに?」


「この国には、私でも敵わないお方がいらっしゃいます。一人は、国王陛下」


「ほう。相当な剣の腕を持っていらっしゃるとは聞いていたが、貴君を超えるほどであるか」


「ええ。まだ敵いません。そしてもう一人」


「他にもいるのであるか」


「貴方もご存じの方です。元庭師のキリン殿です」


「ほう、彼女か! 確かに、彼女ならば貴君を上回っていてもおかしくはない。彼女は世界の英雄だ」


 そんなやりとりが間近で観戦していた国王の耳にも届いたのか、国王は座りながらすごく面白そうな顔をして笑った。

 そして、隣にいるパレスナ王妃に話しかけ、さらになにやらフランカさんが国王に近づいていった。


 う、もしやこれは、私をオルトと戦わせようとしているのではあるまいな!?

 いかんぞ、それは。今日の私は、完全にククルとカヤ嬢の二人と遊ぶモードなのだ。この御前試合の後も、二人を伴って城下町に遊びに繰り出そうと予定している。


 私は、どうか国王に見つかりませんように、と祈りながら顔を隠した。


「? キリンお姉様、どうかなさいましたか?」


「いや、なんでもない……」


 やがて、国王は私が休みを取っているのを知ったのか、残念な顔をして黙った。

 ふー、セーフ。


 こうして御前試合の全勝負は終わり、最後に国王からお言葉をいただくことになった。


 堅苦しい国王の言葉が長々と続く。そして、最後にまた国王は言葉を崩してこんなことを言いだした。


「来年の御前試合は、是非ともみんなの英雄キリンにも出場してもらって、真の王国最強を決めたいね。みんな楽しみにしていてね!」


 ……そうきたかー。


「お姉様、お呼びがかかりましたね!」


「これは是非、来年も最前列で見ませんと!」


「あー、はいはい。そうだね。機会があったら出てみるよ」


 まあ、事前に話が通されているなら、御前試合に出てみるのも悪くないかもしれないな。

 でも、真の王国最強とか言いだしたら、宮廷魔法師団の人達が黙っていないのではないだろうか。特に師匠とかが試合に出るとか言いだしたら、私ではどうしようもないかもしれないぞ。


 そんな未来の光景が頭をよぎったのだが、来年のことは来年考えれば良いかと、私はとりあえずこの後の予定についてククルとカヤ嬢に確認を取るのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] てっきりいつものキリンさんが戦うパターンかと思った
[一言] セリノチッタは調整体に転生してたって事は超能力も手に入れてパワーアップしているのでは・・・・・・? しかしキリンも師匠の没後庭師として経験を重ねさらに最近はドラゴンパワーを意識して使用してパ…
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