2人の逃亡者
初投稿です。少しドロドロしているかもしれませんが楽しんで頂けると幸いです。
目の前には死体がある。それを口に運ぶ勇気はない。その死体が人である確証もない。
そんなくそったれた世の中だ。
世の中はファンタジーとの境界線が崩れ始めてから狂い始めた。最初は些細な事だった。隣人が爪と歯が異様に発達した犬を飼い始めるぐらいの日常に毛が生えた程度の異変だった。今となっては世紀末だ。ゾンビは勢力を拡大し人を襲う。スケルトンは何かの骨で宴を行う。ドラゴンは都市を滅ぼし、悪魔は人に悪夢を見せて堕とす。それに関してはあんま人と変わら無いかもしれない。悪いことだけではない。エルフはエロい。サキュバスは安楽死の手段としては最善だ。数も少なきゃ、そんな幸運な死に方なんて殆ど出来ないが。嗚呼、夢から覚める。億劫な現実を見ることになる。
朝、少しグロくなった太陽の光で目を覚ます。
「おい!朝だぞ?寝坊か?僕様の方が早く起きたから僕様の勝ちな!はっはー!」
朝から男にしては甲高い声が耳に入る。同居しているペーパーの声だ。ペーパーはスケルトンながら人に興味を持ち価値を見出している珍しいスケルトンだ。僕はこいつのお陰で生きながらえている。スケルトンのコネクションのもと、食糧などの生活に必要なものをコイツのお陰で調達出来ている。あと純粋に強い。この人の肉も食べなきゃいけないような世界の唯一の親友だ。
「おはよう、お前何時に起きたんだよ、まだ6時だぞ?まあいいや。朝ごはんは何?」
「今日は5時に起きたな!朝日が出てくるところを見て太陽の存在を研究するためにだ!僕様は天才だがアレは中々曲者だぞ!まあ時間の問題だがな!」
ペーパーは馬鹿で傲慢だ。それが良い。
料理はペーパーがやってくれる。ペーパーが人に興味を持ってる理由が料理という存在だからだ。それ以外の家事は僕がやる。
「今日の朝ごはんは目玉焼きとベーコンだ!素晴らしい伝統的な朝だろ!」
「何の卵か分からないけど、そりゃ美味しそうだ」
僕は目をショボショボさせながらリビングに向かう。テレビは大切だ。何故か生きている情報網であり生命線だ。
「先月の埼玉のシェルターに続けて千葉のシェルターが2週間前、原因不明の襲撃により壊滅しました。現在、非人間対策本部機動部隊オプティマスによって調査が続いています。」
朝から嫌なニュースを聞いた。政府が安全と謳っているシェルターが壊滅するニュース、これは人の科学力の限界を表していて心が苦しくなる。僕はシェルターよりもペーパーといる方が楽だしたのしいからシェルターには行かないが、それは正解なのかもしれない。科学は非科学に勝てない。科学は限界があるからだ。ぼくはテレビを消し、食べることに集中した。
「なかなか美味しいな!料理は上手いよな」
「料理は?料理もだろ?僕様は優秀なんだぞ!はっはー!」
その後はいつもの一日を過ごす。顔をあらい歯を磨く。その後扉の手入れをする。扉が脆かったら命はない。次に1週間に1回する洗濯だ。毒じゃない液体は希少だから、そこは我慢だ。汚いけど。昼食も我慢をする。スケルトンのコネクションはあれど食糧は少ない。限界は常に見えている。午後は銃の手入れをする。人の数少ない対抗手段だ。
「毎回思うが、なぜ僕様がいるのに銃を持つんだ?僕様はあのドラゴンに傷をつけれるほど強いんだぞ!」
「悪魔には弱いんだろ?」
「それは種族的な相性であって、僕様なら勝てるぞ!」
「それはそれは」
手入れが終わったらボードゲームをする。今日は将棋だ。ペーパーはクソ弱い。
「ぬーもう一度だ!僕様が負けるなどありえない!くそ!」
「はは!囲いも知らないやつにまけるかよ!」
本当は麻雀をやりたいが人が足りない。その後は夜ご飯を食べて寝る。銃を抱き枕代わりにして寝る。抱き心地は悪いが、もう銃がないと寝れない。
その夜は夢を見た。せっかく見るなら良い夢が良かった。僕が高校生の頃、まだ銃を持てば人も夜を歩けた頃、家族がまだ生きてた頃だ。
僕たちはシェルターに向かっていた。車で行けるとこまで行き、山道は歩く。
「お兄ちゃんー疲れたーおんぶしてー」
妹は自分勝手に僕にお願いする。
「俺だって疲れてんだよ、しっかりあるけ、お前も高校生だろ?」
「そーだけどお兄ちゃん剣道部じゃん。体力あるでしょ?私美術部なんだけど?」
「関係ないよ。歩け」
「お父さんがおんぶしてやろう!」
「ほんと!」
父親が妹を甘やかす。末っ子が羨ましい。しかし父親はマッチョだ。ある意味良いのかもしれない。筋トレ的に。
「泉、ちゃんと体力つけないとダメよ!」
母親は妹を叱る。父親が甘やかし母が叱る。ここまでがテンプレートだった。妹は気だるそうに返事だけした。
シェルターに着いた。シェルターは何故か開いており、中に入ると人が皆しんでいた。足の青い人だけ立っていて、それは悪魔の眷属だと後にペーパーに教わった。僕たちは息を殺し気づかれる前に逃げ出した。なんとかなった。とても幸運だった。急いで車へ逃げ込み、遠くに行った。できるだけ遠くに。他のシェルターまではガソリンが持たない。しかし時間稼ぎにもなるため車を違うシェルターに走らせた。しかしガソリンが切れるのも時間の問題だった。すぐにガソリンは切れ、歩きで移動することになった。宿は廃墟か寝ないかの二択であり、地獄のような日々だった。ある日美しい女性とあった。とても華奢だが肌を隠している。
「大丈夫ですか?」
妖艶な声で僕たちに話しかけた。
「お困りでしたら、近くに私の家があります。少し自然に囲まれてるため、まだ化け物たちには見つかっておらず、安全です。」
僕たちは限界だったため、なんの疑いもなく二つ返事でついて行った。
「本当にありがとうございます。あなたは命の恩人です。」
父親と母親は常にペコペコして、妹も珍しくちゃんとしていた。
「なぜ助けてくれたんですか?食糧も少ない世の中、助けるのはデメリットの方が大きいのでは?」
僕は少し怖かったため、投げかけた疑問だ。
「そんな世の中だからこそ、人間と人間とが助け合い、助け合う必要があるんですよ。」
まさに聖人のそれだった。陳腐な回答だが僕も限界だったからか、すぐにその女性を信じ込んだ。
「さて、もう夜も遅いです。適当に腹に何か入れて寝ましょう!」
女性は明るく提案し、肉を出してくれた。味は思い出したくない。思い出すと吐き気が止まらないからだ。
翌朝、僕は金切り声で目が覚めた。母親のものだ。
「なんで、なんで、何してるんですか!!」
そこには右足を食べられた妹と足を貪る女性の姿があった。肌はツギハギで見るからにゾンビであった。
「なにって、食事ですよ?食糧調達です。言ったでしょう?協力だって。こうやって昨日の夜ご飯も出来たんですよ?」
異様に発達した歯でニヤリと笑った。ゾンビの特徴らしい。これもペーパーから聞いた。
父親も駆けつけすぐさま銃口を向けた。しかしゾンビにリボルバー程度じゃなんの意味もなかった。少し狼狽えるが時間稼ぎにしかならない。妹は既に無くなっていた。出血多量によるものだろう。母親は泣き叫び父親は黙り込んで睨んでいた。その時、父親は銃を打ちながらタックルをし、女性を押さえつけ、
「逃げろ!」
そう叫んだ。僕は泣く母親の手を引き逃げた。全力で。
僕たちは途方にくれた。武器もなければ食糧もない。死ぬのにそう時間はかからない。棒切れで対抗仕様にも無理がある。
その夜運が悪くスケルトンの群れに遭遇した。僕たちは逃げ惑うが、スケルトンが衰弱した人を逃すわけもなく、すぐに捕まった。母親は右腕を失い死んだ。僕も脇腹を抉られ気絶した。スケルトン達は僕たちは死んだと思い、母親の死体を持っていった。
目が覚めた時には何も無かった。何も。
「おお!目が覚めたか人間!」
そこにはスケルトンがいた。僕は驚きと恐怖で固まった。
「安心しろ!僕様はお前を襲わない。アイツらとは違い理性のあるスケルトン様だ!はっはー」
「どう信じろと?」
僕は怒りに震えながら言った。
「確かに信じられないかもしれないな!しかし僕様は人間に興味がある!信じなくてもいいが料理を教えてくれ!」
そいつは自分勝手に物事を進めた。バカで傲慢だ。
「腹は減ってないか?人間!」
「いや、」
僕は減ってはいたが喉は通らない。ここ数日で嫌な肉片を見すぎた。
「そうか!しかし僕様が最高のものを食べさせてやろう!別腹というやつだ!」
そう言ってペーパーは母親の右手を取り出した。
目が覚めた。冷や汗が大量に出ており、酷いもんだった。嫌な夢だった。全てが妙なリアリティを持ち不気味な夢だった。朝4時であり、流石にペーパーはねていた。僕は日頃の恨みを込めて無理やり起こした。
「おいペーパー!今回は僕の勝ちだぜ?」
ペーパーは寝坊したかのように焦って起き出した。
「いや、起きてはいたが考えことをしていたまでだ!」
明らかに寝ぼけた声で言う。僕は笑いながら二度寝を促した。
この日はいつもより特殊だった。来訪者がいた。2人の少女。1人は17歳ほどで、下半身が包帯でグルグル巻にされていた。もう1人は9歳ほどで頭を包帯でまき、右目が隠れていた。ドアを叩き、
「すみません!助けてください!もう死にそうで!なんでもします!」
僕は銃を片手にドア越しで会話を試みようとした。しかし、意外にもペーパーが口を開いた。
「人間である証明をしろ!口を開き歯を見せろ!」
僕への配慮なのか分からないが妙に真剣だった。やはり目の前に何か来ると怖いものなのか。
「分かりました。」
二人は口を大きく開いて見せた。
「私達は人ですよ!」
大きい方の少女は主張した。確かにそうっぽい。
ペーパーも納得して中にいれようとしたところで大きい方の少女が力尽きた。気絶した。僕はスコープ越しに慌てて、すぐさま扉を開き、ベッドへ寝かせた。
小さい方の少女はまだ少しだけ余力があり、食べ物を食べた。
「ありがとうございます。この前までいた熱海のシェルターが崩壊して逃げてきたんです。」
「熱海から島田まで、まあまあ大変でしたね。もう一人とはどのような関係なのですか?」
「姉妹です。」
「出身は熱海なのですか?」
「いえ、川口です。ですが色々あり、今ここにいます。」
「それは大変でしたね」
その後たわいのない会話をして、眠りについた。姉妹が来た以外は普段の生活だった。念の為姉の方にはペーパーを見守りにつかせた。妹は僕が見た。しかし朝、金切り声で目を覚ました。妹の方の声だ。急いで銃を持ち向かうと、姉がペーパーをバラバラにしていた。目は血走り息もあらかった。
「おねえちゃん!何してるの!」
姉は息を切らしながら発狂している。僕はすかさず銃を構えた。
「待ってください!何かの間違いです!なんで!」
妹は姉を庇った。
その瞬間姉は妹に飛びつこうとしたため、僕は腹を打った。たまたま傷をえぐったらしく悶絶していた。
「間違いって、僕の親友をバラバラにしたんですよ!腐っても命の恩人です。正気とは思えない。きっと悪魔の眷属になったんです!」
「でも!でも!違うんです!」
妹は認めながらも否定した。
「認めたくないのも分かります!でも、あなたの姉はもう人じゃない!」
「そんなはずない!ねぇおねえちゃん!」
姉はうめき声しかあげなかった。
「撃ちますよ!これ以上被害を出さないために!」
僕はトラウマから焦りながら銃口を頭に向けた。
「なんで!どうして!」
妹は泣きながら姉から少し身を引いた。僕は手が少しぶれて心臓を撃ち抜いた。結果オーライではある。
姉は死に際のため洗脳が解けたのか分からないが目が少し普通になった。そして
「ごめんね、ごめんね、紡」
そう言い残し死んだ。
「ごめんね。でもこうするしかなかった。」
「わかってます、でも、、」
少しの間沈黙が流れた。紡さんは泣き終わり、
「ペーパーさん、申し訳ありませんでした。」
「事故です。しょうがないです」
僕はカッコつけた。ワナワナと震えながら見え見えの嘘をついた。その後お互い沈黙しながら何もせず時間が過ぎた。
僕は眠れなかった。眠れないため考え事をしてしまった。なぜ気づかなかったのか、と。ペーパーがキャラでもないのに訝しんでた理由、悪夢を見た理由、川口から島田までの経路にあるシェルターが次々に崩壊している理由。よく考えたらリスクしか無かったではないか。しかし、姉の方はペーパーがスケルトンであると認識してない。起きてすぐスケルトンが横にいたら半狂乱になり殺そうとするのも当然。古傷を銃でえぐられたら、暫くは喋れず悶絶するのも当然。僕は分からない。あの時、姉はなんて言ったか覚えていない。分からない。何事も。嗚呼食べ物どうしよう。やはりもう人肉を食すしかないのか、何かわからない肉を食べるしかないのか。
目の前には死体がある。それを口に運ぶ勇気はない。その死体が人である確証もない。
人は信じるべきじゃないのか、人だからこそ信じ合うべきなのか
文はとても拙いですが楽しんで頂けたなら幸いです。




