最終話:最強の新妻誕生
ついに最終話です。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。 最強の新妻と、愛され夫の門出。 最後はハッピーエンド全開でお届けします!
その日、都内の一流ホテルは、異様なほどの熱気と祝福に包まれていた。
天井にはシャンデリアが輝き、壁際には政財界の大物たちが贈ったスタンド花が森のように並んでいる。
西園寺家と長谷川家の結婚披露宴。 ……とは言っても、実質的には「西園寺家による、西園寺家のための、西園寺玲香の結婚式」である。
控え室の鏡の前で、私は自身の姿を映し出した。
フランスの有名デザイナーに特注した、純白のウエディングドレス。 総レースの優美なラインは、私の身体に完璧にフィットし、頭上のティアラには数億円のダイヤモンドが埋め込まれている。
まさに、戦場に赴く女将軍の鎧にふさわしい。
「……完璧ね」
私は口紅をひき直し、鏡の中の自分に微笑みかける。
三十三歳になったが、美貌に衰えはない。 むしろ、経験と自信がオーラとなって、今の私は最高に輝いているはずだ。
「れ、玲香さぁぁぁん……!」
背後から、情けない泣き声が聞こえた。
振り返ると、純白のタキシードに身を包んだ湊が、すでに顔をグシャグシャにして泣いていた。
「なによ、もう泣いてるの? まだ入場もしてないのよ」
「だってぇ……今日の玲香さん、綺麗すぎて……神々しくて……僕、こんな幸せでいいのかなって……うぅッ」
まったく、世話の焼ける「婿」だこと。
「いいに決まっているでしょう。私が選んだ男なんだから、世界一幸せになりなさい。これは命令よ」
「は、はいっ! 一生従いますぅ!」
◇
披露宴会場の扉が開く。 万雷の拍手と、無数のカメラのフラッシュが私たちを出迎えた。
私は湊の腕を取り、堂々と歩を進める。 湊は緊張でガチガチになっているが、私がリードしてやれば問題ない。
会場を見渡すと、知った顔がいくつか見えた。 末席のテーブルには、小さくなっている義両親の姿。 私と目が合うと、ビクッと震えて愛想笑いを浮かべ、深々と頭を下げた。
……よろしい。 二度と変な野心を持つことはあるまい。
全ての障害は排除され、祝福だけがここにある。 まさに、私の完全勝利だ。
◇
披露宴も終盤。 新郎新婦の挨拶の時間となった。
湊はマイクを握りしめ、嗚咽を漏らしながらも、懸命に言葉を紡いだ。
「ぼ、僕は……頼りないし、未熟だし、玲香さんに迷惑ばかりかけています。……でも! 玲香さんを愛する気持ちだけは、誰にも負けません! 一生、彼女の支えになれるように、死ぬ気で頑張ります!」
会場から温かい笑いと拍手が起こる。 続いて、私の番だ。
私はマイクを受け取ると、静かに会場を見渡した。 水を打ったように静まり返る。
「本日は、私たちの門出をお祝いいただき、ありがとうございます」
よく通る声で、私は語り始めた。
「彼と付き合い始めた頃、多くの人が言いました。『釣り合わない』と。『もっと相応しい相手がいる』と。確かに、年齢も、立場も、育った環境も違います」
私は隣で鼻をすすっている湊を見つめた。
「ですが、私はビジネスでも人生でも、欲しいものは自らの手で掴み取ってきました。妥協して選んだ『相応しい相手』など、私には必要ありません」
「私が心から安らげる場所、私が守りたいと思える笑顔……それを持っているのは、世界でただ一人、長谷川湊だけです」
湊が驚いたように私を見る。 私は彼に向かって、悪戯っぽく微笑んで見せた。
「湊。あなたは今のままでいいわ。足りない部分は、全て私が補います。お金も、地位も、強さも、私が持っていればそれでいい。あなたはただ、私の隣で笑っていてくれれば、それが私の最大の幸福なのですから」
一瞬の沈黙の後、会場が揺れるような拍手に包まれた。 湊はもう声にならず、子供のように私に抱きついてきた。
◇
宴が終わり、私たちはハネムーンへと向かうリムジンの中にいた。
「……玲香さん、ありがとう。僕、本当に幸せだよ」
「知ってるわ。顔を見ればわかるもの」
湊は私の肩に頭を乗せ、安心しきった寝息を立て始めた。 私は左手の薬指に光る指輪を撫でる。
これから先、彼が「格差婚」だなんだと世間から言われることもあるだろう。 理不尽な常識も、格の違いも、全てねじ伏せて、私たちは幸せになってやるのだ。
だって私は、西園寺玲香。 最強のキャリアウーマンにして、世界一夫を愛する「最強の新妻」なのだから。
私は眠る夫の髪を優しく撫で、夜の闇に向かって不敵に微笑んだ。
「さあ、これからの人生も忙しくなりそうね」
(完)
最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございました! 玲香さんと湊くんの物語、いかがでしたでしょうか。
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