第4話:強欲な義両親の末路
いよいよ物語も佳境です。 自分の息子を「金づる」としか思わなくなった強欲な義両親。 そんな彼らに、今まで玲香さんの後ろに隠れていた湊くんがついに牙を剥きます。 湊くんの成長と覚悟を見届けてください。
あざといマウント女子社員を撃退してから数週間。 私の生活は平穏そのものだった。
湊は新入社員研修に励み、私は結婚式の準備と仕事に追われる日々。 結婚式は、西園寺家のメンツにかけて最高級のものを用意している。
そんなある日、私のスマホが鳴った。 画面に表示された名前は『長谷川家(義父)』。
……嫌な予感しかしない。
あの挨拶の日、私の家の「格」を知って震え上がっていたはずだが、喉元過ぎれば熱さを忘れるのが愚者の常だ。
私はため息をつきつつ、通話ボタンを押した。
「……はい、西園寺です」
『あー、玲香さんかな? お義父さんだよ。いやあ、結婚式の準備で忙しいところ悪いねえ』
電話越しの声は、前回とは打って変わって、粘りつくような猫なで声だった。
『実はね、結婚式のことで「両家の話し合い」がしたいんだよ。今週末、そちらへ伺ってもいいかな?』
◇
週末。 私が手配したホテルの個室ラウンジに、四人が顔を揃えた。
湊は不安そうに私の顔色をうかがっている。
「それで、お話とは何でしょうか?」
私が単刀直入に切り出すと、義父は揉み手をしながら口を開いた。
「いやあ、玲香さんのご実家が西園寺家だと聞いて、私たちも鼻が高いよ。親戚中にも自慢して回ってねえ」
「それはどうも」
「それでだ。長谷川家の顔を立てるためにも、引き出物やお車代は『最高級』のものを用意してほしいんだよ」
……は?
結婚式の費用は、ほぼ全て西園寺家持ちだ。 彼らは一銭も出さないのに、口だけは出すというのか。
「それにね、玲香さん」
今度は義母が身を乗り出してきた。
「湊は婿に出すわけでしょう? 私たちとしては、大事な跡取り息子を奪われるようなものなのよ。それ相応の『誠意』を見せていただかないと」
「誠意、とは?」
「ほら、私たちももう還暦近いし、今の家は古くて住みにくいのよ。その……都内のマンションの一つくらい、プレゼントしてくれても……バチは当たらないんじゃないかしら?」
その言葉に、私は呆れ果てて言葉を失った。
結納金代わりの新居の要求。 それも「プレゼントしろ」だと?
図々しいにも程がある。 私が冷たい笑みを浮かべ、彼らを地獄に叩き落とす言葉を選ぼうとした――その時。
「あのさ、いい加減にしてくれない?」
凛とした声が、ラウンジに響いた。
私ではない。 隣に座っていた、湊だ。
「湊? 何を言って……」
「父さんも母さんも、恥ずかしくないの? 玲香さんは僕の好きな人だ。僕がお金持ちの家に行くからって、玲香さんを利用して、たかろうとするなんて……最低だよ」
「なっ! 誰が大学まで出してやったと思っているんだ!」
「そうよ! 西園寺家なんて大金持ち、少しむしり取ったって痛くも痒くもないでしょう!」
義母の開き直った言葉。 それを、湊の叫びが切り裂いた。
「ふざけるなッ!!」
バン! とテーブルを叩いて立ち上がる。 あの温厚で、いつもニコニコしている湊が、鬼のような形相をしていた。
「玲香さんのお金は、玲香さんが努力して稼いだものだ! 西園寺家の資産だって、代々の当主が守ってきたものだ! それを、なんの苦労もしてない父さんたちが『よこせ』なんて言う権利、あるわけないだろ!」
「み、湊……」
「僕が婿に行くのは、資産が目当てじゃない。玲香さんが好きだからだ! 彼女の隣に立つのにふさわしい男になりたいからだ!」
湊の目から、ポロポロと涙が溢れ出した。
「これ以上、玲香さんに失礼なことを言うなら……僕は親子の縁を切る。二度と顔も見せない。本気だからな」
静まり返る個室。
義父は唇を震わせ、力なく項垂れた。
「……わ、わかった。言い過ぎた……。すまなかった……」
二人は逃げるように席を立ち、ラウンジを出て行った。
◇
再び二人きりになった個室。 湊は私と目が合うと、途端にいつもの顔に戻って泣き出した。
「うぅ……ごめん、玲香さん……。僕の親が、あんな……本当にごめん……」
「謝る必要なんてないわ」
私は立ち上がり、泣きじゃくる湊を優しく抱きしめた。
「カッコよかったわよ、湊。私を守ってくれたのね」
「だって……玲香さんは僕の大切な人だから……グスッ」
ああ、愛おしい。 やっぱり私は、この男を手放せない。
「よく頑張ったわね。ご褒美に、今日は何でも好きなものをご馳走してあげる」
「本当? じゃあ……ハンバーグ食べたい」
「ふふ、安上がりな男ね」
外敵は全て排除した。 あとは、最高の結婚式を迎えるだけだ。
湊くん、よく言った!と作者も書きながら熱くなりました。 お金や家柄よりも大切なものを選んだ二人。 次はいよいよ最終回。世界一豪華で、幸せな結婚式の幕開けです!




