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第3話:勘違い女と格の違い

お読みいただきありがとうございます! 今回は、女の戦い(一方的な蹂躙)回です。 「若さこそ正義」と信じて疑わないマウント女子を、玲香さんが社会的に、そして圧倒的な美貌で教育します


 その日、私はとあるパーティー会場に向かっていた。


 場所は都内の高級ホテル。  私の勤める会社が親会社となり、グループ企業数社の合同内定者懇親会が開かれているのだ。


 当然、湊もその中にいる。


 私は親会社の取締役として、そして何より『彼氏の監視役』として、この会場に乗り込む手はずになっていた。


「本日の西園寺部長……いえ、常務の装いは完璧でございます」


 秘書が私のドレス姿を見て、うっとりと溜息をつく。


 今日の私は、背中が大きく開いたミッドナイトブルーのイブニングドレス。  首元には、家一軒が買えるほどのダイヤモンドネックレスが輝いている。


 三十路の年増? 言わせておけばいい。  本物の大人の女がどういうものか、若さにかまけた小娘たちに教えてあげるわ。


 私は不敵な笑みを浮かべ、会場の扉を開けさせた。


     ◇


 会場内は、社会の厳しさを知らない若者たちの熱気で溢れていた。  私はシャンパングラスを片手に、遠巻きに湊を探す。


 あ、いた。


 会場の中央付近。案の定、女子社員たちに囲まれている。  だが――。


「え~っ、長谷川くんの彼女、十歳も上なのぉ? ウソでしょ~?」


 一際高い、猫なで声が耳に届いた。  湊の腕に密着し、上目遣いで媚びている小柄な女。  ゆるふわの巻き髪に、パステルカラーのワンピース。いかにもな量産型女子だ。


「本当だよ。すごく綺麗な人なんだ」


「尊敬とか重いって~! もっと気楽に付き合える子の方がいいよぉ。たとえば私とかさ。同期だしぃ、趣味も合うと思うな~」


 女はそう言いながら、豊満な胸を湊の二の腕に押し付けている。


 ……ほう?  私のものに手を出そうとは、随分といい度胸をしているじゃない。


 どうやら、少しばかり「教育」が必要なようだ。


     ◇


 私はハイヒールの音を高く響かせ、人混みを割って歩き出した。  モーゼの海割りのごとく、私の進む道が自然と開いていく。


「――楽しそうね、湊」


 私は湊の背後から、氷のように冷たい声をかけた。


「れ、玲香さん!?」


 その名を聞いた瞬間、周囲の空気が凍りついた。  だが、その女――名札に『小野田』とある小娘だけは、状況が読めていないようだった。


「あ、もしかしてこの人が噂の『オバサン彼女』ですかぁ? うわ、すっごい気合い入った格好。ここ、内定者のパーティーなんですけどぉ? 保護者同伴とかナシですよね~」


 周囲の同期たちが顔面蒼白で止めようとしているが、小野田は止まらない。


「あのねお姉さん、長谷川くんは困ってるんですよぉ。これからは私が支えてあげるんで、引退してもらえます?」


 ……ぷっ。  私は思わず吹き出しそうになった。


「あら、ごめんなさいね。あまりにも滑稽なことを言うものだから」


「はぁ!?」


「あなた、名前は?」


「小野田リオですけどっ!」


 私は優雅に扇子を取り出し、口元を隠して微笑んだ。


「そう、小野田さん。あなた、自分の会社の『親会社』がどこか知っているかしら?」


「は? いきなり何? ××ホールディングスですけど……それが?」


「そう。じゃあ、その親会社の筆頭株主であり、創業家が『西園寺家』だということも、当然ご存知よね?」


 小野田の顔から、少しずつ余裕が消えていく。  そこへ、湊の内定先企業の社長が顔色を変えて走ってきた。


「さ、さささ、西園寺常務!! こ、これはいかなることでしょう!?」


 社長は私の前まで来ると、直角に腰を折り曲げた。  その光景に、会場中が静まり返る。


「おやおや、社長。御社の社員教育はどうなっているのかしら? 私の可愛い婚約者に、安っぽい色仕掛けをするような品位のない方がいらっしゃるようだけれど」


「ひぃっ! 申し訳ございません! 直ちに教育し直します……いや、配属を見直します!!」


 私は呆然と立ち尽くす小野田に、ゆっくりと顔を近づけた。


「おわかりいただけたかしら? あなたが『オバサン』と見下した相手は、あなたの会社の生殺与奪の権を握る人間だということを」


「そ、そんな……嘘……」


「それと、もう一つ訂正してあげる」


 私は湊の腕をぐいと引き寄せ、その唇に情熱的なキスをした。  会場から悲鳴と歓声が上がる。


「彼が無理をしている? いいえ、違うわ。私が彼を『飼って』いるの。彼が私の人生に必要な癒やしだから、全力で囲い込んでいるのよ。……ね? 湊」


「は、はいっ! 僕は玲香さんの犬です! ワン!!」


 湊、そこまでは言わなくていい。


「というわけよ、小野田さん。若さしか誇れるものがないようだけれど、その若さも教養と品位がなければ、ただの『未熟』よ。出直してらっしゃい」


 小野田はその場にへたり込み、涙目で震えるしかなかった。


 私は社長に「後は任せるわ」と一言残し、湊の手を引いて会場を後にした。


 背後から聞こえる社長の怒鳴り声は、心地よいBGMだ。


「……玲香さん、またカッコよすぎた」


「ふふ、私の男に手を出すには、百年早いのよ」

「若さはただの未熟」……玲香さんの名言が飛び出した回でした。 悪い虫を排除して一安心、と思いきや。 第4話では、あの義両親が「欲」にまみれて再登場します。 今度は湊くんが……!?

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