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第1話:32歳の私が22歳の彼氏の実家に挨拶に行ったら「年増の片親育ち」と蔑まれた

はじめまして。本作を目に留めていただきありがとうございます!


「32歳、年上の彼女。実は……?」 そんな彼女が、自分を見下してきた相手を圧倒的な「格」でねじ伏せるお話です。


本日、【完結まで全5話を一挙公開】いたしました! 最後まで一気読みできますので、スカッとしたい方はぜひ最後までお付き合いください。 どうぞよろしくお願いいたします。


 私の名前は西園寺玲香さいおんじ れいか。  三十二歳、独身。


 まあ、それもあと半年で終わりを告げる。


 そう、半年後には私は結婚し、晴れて『新妻』となるのだ。


 年齢的な焦りがなかったと言えば嘘になる。  正直、結婚が決まってホッとしている自分がいる。


 旦那になる長谷川湊はせがわ みなとは、今年大学を卒業する二十二歳。  一回りも年下の彼とは、とある合コンで知り合った。


 若くて極上のイケメン。  私の好みにドンピシャだったため、年甲斐もなく猛アタックを仕掛けたのだ。


 彼はあっさりと落ち、順調に交際を進め、プロポーズされた。  ……いや、「させた」と言うべきか。


 私の実家への紹介も済ませ、湊の就職も決まった。  そして今日、いよいよ湊のご両親へ挨拶に行くことになったのだが――。


(あーあ、たぶん何か言われるんだろうな……)


 助手席で呑気な顔をしている湊を横目に、私は心中で溜息をつく。


 湊は「上手く話しておく」と言っていたが、なにせ私は彼より十歳も年上だ。  反対までいかずとも、小言の一つや二つは覚悟しなければならない。


 もっとも、自己評価で言わせてもらえば、私は稼ぎもいいし、見た目にも気を使っている。全体的に見れば「優良物件」のはずだ。


 この時の私は、緊張こそすれど、どこか楽天的に考えていた。  それが甘い考えだったと、すぐに後悔することになるなんて思いもせずに。


「玲香さん、緊張してる? 大丈夫だよ。父さんも母さんも、ちょっと口うるさいかもしれないけど、根は優しいから」


 湊が気遣わしげに声をかけてくる。  慰めてくれているつもりなのだろうが、正直なところ、私は彼を頼りにしていない。


 やっぱり十歳も年下だし、何よりまだ学生。  今まで実家暮らししかしたことがない温室育ちだ。


 それでも、心のどこかで期待してしまう自分もいる。  もしかしたら、私を守って戦ってくれるかも?


 もしそうなれば嬉しい誤算なんだけど……まあ、ないわよね。  仮に義実家が私に不満をぶつけてくるなら、私が戦うしかない。


 腹を括ろう。


     ◇


「初めまして、お義父様、お義母様。湊さんとお付き合いさせていただいております、西園寺玲香と申します。ふつつか者ですが、末永いお付き合いをよろしくお願いいたします」


 通されたリビングで、私は深々と頭を下げた。


 私のやや緊張気味の挨拶に対し、長谷川家のご両親も強張った顔で返礼する。  ……いや、強張っているというより、これは明らかに歓迎していない顔だ。


 表面上だけのにこやかな笑みを張り付けたお義母さんが、値踏みするような視線で矢継ぎ早に質問を投げてきた。


「ねえ、玲香さんはどちらの大学を卒業しましたの?」


「はい、〇〇大学の商学部を卒業しました」


「まあ、そうなの。一応、一流大学を出てらっしゃるのね」


「恐縮です」


「それで、今はどちらにお勤めなの?」


「はい、××物産で企画部の部長をしております」


「まあ……お若いのに、たいしたものですのね」


 お義母さんの口調には、賞賛よりも皮肉の色が濃い。  私は愛想笑いを浮かべてかわす。


「いえ、中小企業ですし、それにまだまだ勉強中の身です」


「そうなのね……。確か湊の内定をもらった会社は、△△商事よね?」


 突然話を振られ、湊が曖昧に頷く。


「たしか、上場しているような一流の会社なのよね?」


「うん、そうだよ。まあ運が良かったというか、縁があってね」


「縁? まあ確かにそうね」


 私が口を挟むと、お義母さんは鼻で笑うように私を見た。


「ええ、そうですね。私の会社は△△商事の下請けですしね、縁がありますね」


 湊の母は、若く輝かしい未来がある(と思い込んでいる)息子と、三十路の私を見比べる。  そして、勝ち誇ったように言った。


「じゃあ、いずれは湊の方が収入も高くなるでしょうし、玲香さんは家庭に入るのかしら?」


「いいえ、私は家庭に入る気はありません。ずっと働くつもりですよ」


「あら……。でも失礼を承知で言いますけど、これから子供を作るにしても、産休・育休で仕事に戻れる時には、もう『結構なお歳』でしょう? それなら、家庭に入った方が楽なんじゃないかと思うんだけど?」


 結構なお歳。


 笑顔で放たれたその言葉に、私のこめかみがピクリと跳ねる。  まったく、大きなお世話だ。


「子供については湊ともこれから話し合おうと思っていますし、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ」


 やんわりと「口出し無用」の空気を出す。  しかし、今度は黙っていた湊の父が口を開いた。


「失礼だが玲香さんのご家庭は、母親だけと聞いているんだが、間違いないのかね?」


 え? 確かにそうだけど……まさか片親だということが気になるのか?


「ええ、私には母親しかおりませんが……それが何か?」


「いや、まあ今時のご時世だし、細かい事は目をつぶりたいんだけどね」


 湊の父は苦笑いしながら、まるで私に慈悲を与えてやるかのような口調で続けた。


「うちはそこそこの家柄でね、うるさい親戚も結構いてね。湊より十歳も年上で、片親……。これで母さんや私の言う事を聞いてくれて、この家のしきたりを守ってくれると言うなら、まだ賛成しやすいんだけどね」


 畳み掛けるような物言いに勢いづいたのか、お義母さんも身を乗り出す。


「そうですよ。あなた、ご自分の立場をわかっていただかないと。湊はまだ若いんですし、一流企業にも内定が決まって、人生もこれから。慌てて嫁を選ぶ必要なんてないと思うのよね。だいたいあなた、三十二にもなって大学生に手を出すなんて……やっぱり片親ではロクな躾もされてないんでしょうね。この長谷川家にふさわしい相手とは思えませんね」


 ああ、言ったわね。


 私は隣の湊を確認する。  彼は困ったような顔をして、オロオロと私と両親を交互に見ているだけだ。


 予想通りとはいえ、全く頼りにならない。  それになんて説明しているのよ、こいつは。


 まだ言い足りないのか、二人は盛んに私の年齢や家柄がどうのと言ってくる。  片親だ? 家柄だ? ふさわしくない?


 ……そうね。そろそろ『格の違い』ってやつを、教えて差し上げましょうか。


「――バァァァンッ!!」


 私は思い切り手のひらで机を叩いた。  乾いた破裂音がリビングに響き渡り、誰もが黙り込む。


 ……いや、ちょっと強く叩きすぎた。手がすごく痛い。  でもカッコ悪いから表情には出さない。ここは我慢だ。


「……ウホン。確かに、家柄に差がありそうですね」


 私は静まり返った空気の中、冷やかに告げた。


「なにせうちは戦国時代から続く名家。明治には伯爵の称号をいただいたこともある家柄ですからね」


 私の突然の告白に、二人はぽかんと口を開けて固まった。  二人が縋るように湊の方を見ると、湊はコクコクと頷く。


「うん、玲香さんの家は凄いんだ……。この前玲香さんの実家に挨拶で岡山まで行ったんだけど、すごい豪邸で……。おまけに飾ってる掛け軸とか、『内閣総理大臣』の書だったり、一族の集合写真に現職の大臣とか一緒に写ってて、すごいビックリしたよ」


「まあ、大した事ありませんよ。地元選出の先生ですから応援させていただいているんですけど、義理堅い方で。祖父や母の誕生日には必ずお祝いに駆けつけてくださるんですよ」


「さ、西園寺……まさか、あの西園寺家か……?」


 湊の父が震える声で呟く。  さっきまで私を見下していた二人の顔色が、みるみる青ざめていく。


 格の違いはもう理解できただろう。  あとは、あの誤解も解いておかないとね。


「確かに、大学生の湊に手を出したのは……ちょっと問題があるかもしれませんが。私と湊の出会いでもある合コンは、私が頼んでセッティングしてもらったものですしね。いや、合コンって言えるのかな? 女は私一人で、あとは『逆玉』狙いの男が何人かいて、その中に湊もいたんですから、文句を言わないで欲しいんですけど」


「そ、そうなの……湊?」


 お義母さんの震える声に、湊は無邪気に頷く。  それ以前に、湊、あんた何にも説明してなかったのね。


 頼りないのは可愛げがあるけど、これは後でお仕置きが必要だわ。


「湊……あなた、なんで何も説明してないのよ。さっきの話だと、私がこの家に嫁に入るみたいなこと言われてたけど……あなたが私の家の『婿』になるんですからね? ちゃんとわかっているんでしょうね?」


「「婿に!?」」


 ご両親の声が重なった。  湊の父が慌てふためく。


「ちょっと待ってくれ。いきなりそう言われても……」


「婿に来ないならこの結婚話は無しです。そうなると湊、あなたの内定も取り消しよ?」


「えっ!? ぼ、僕は婿に行くから! もう決めてるし!」


 私の冷たい通告に、湊が必死に叫んだ。


「父さん、母さん。僕はこの家を出て西園寺家の婿になります。いままでお世話になりました!」


「み、湊ーッ!?」


 よし、それでいい。  私は呆然自失としている二人に、極上の営業スマイルを向けた。


「先ほど、家庭に入れとか家事のことをおっしゃっていましたけど……私は今のポストであと二、三年経験を積んだら、△△商事の役員になり、いずれは親会社の社長になる事が決まっています。なので、湊が私の報酬を上回ることは天地がひっくり返ってもありませんし、家事は家政婦を雇いますのでご心配なく」


 もはや言葉もなく、パクパクと口を開閉させるだけのご両親。  私はダメ押しとばかりに確認する。


「そういうことで、よろしいですよね?」


 二人は顔を見合わせると、ガックリと項垂れ、深い溜息をついた。


「……はい。どうか湊の事、よろしくお願いします……」


 その声は、蚊の鳴くように小さかった。

第1話をお読みいただきありがとうございました!


玲香さん、思わず机を叩きすぎて手が痛くなってしまいました(笑)。 名家の令嬢でありながら、バリバリのキャリアウーマン。そんな彼女に甘える年下彼氏・湊との関係性も、これからどんどん深まっていきます。


「格の違い」を見せつけるのは、まだ序の口です。


第2話では、家に帰った二人の「甘いお仕置きタイム(?)」と、さらなるスカッと展開が待ち受けています。 続きはすぐ下に公開されていますので、ぜひご覧ください!

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