彼女の嘘
世界はいつだって残酷なほどに鮮やかだ。とめどなく蠢いている。けれど、僕の瞳には何もかもつまらなく写る。 この物語は、そんな灰色の世界に閉じこもっていた僕と、嘘という魔法で僕を連れ出した彼女の、あまりに短く、あまりに眩しい時間の記録。
もしも、あなたの隣に「宇宙人と話せる」なんて笑う女の子がいたら。 どうかその嘘を、バカにしないであげて欲しい。
俺は生きててつまらない。窓の外、散り急ぐ桜が校庭を白く染めていたがそれすら灰色に見える。 高校三年生。最後の一年が始まる高揚感と、どこか取り残されたような焦燥感。そんな空気が入り混じる教室で行われた席替えで、僕は一生分の運命を使い果たした。
隣の席に座ったのは、学年一の美人として誰もがその名を知る、美月だった。
地味で目立たない、いわゆる「陰キャ」な僕にとって、彼女は銀河の彼方に光る一等星のような存在だ。話しかける勇気なんて、一欠片も持っていなかった。 けれど、そんな僕の緊張をあざ笑うかのように、彼女は突拍子もない言葉を投げかけてくる。
「ねえ、驚かないで聞いて。私、昨日の夜は宇宙人と交信してたんだ」
斜め後ろから差し込む春の陽光を浴びて、彼女はいたずらっぽく笑う。 「実は私、少しだけ未来が見えるんだよ」
彼女がつく嘘は、いつもデタラメで、幼稚で、それでいてどこか星屑のように綺麗だった。 振り回されているのは僕の方なのに、その予測不能な言葉たちに、僕の灰色だった日常は少しずつ色づいていく。
——それが、彼女が必死に隠し続けていた「最後の嘘」への序曲だとも知らずに。 僕はただ、隣から聞こえる弾んだ声に、静かに恋をしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
彼女がつき続けたデタラメな嘘。それは、僕の日常を彩るためだけのものだったのか、それとも、自分自身が消えてしまう恐怖を紛らわすための盾だったのか。
※人気が出れば引き続き更新します。




