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前の王妃の子だからと平民の極悪夫婦に預けられた王女が何やかんやで王位継承権を取り戻す話

作者: 山田 勝

「シャルロット、貴方は贅沢三昧で暮らしていたのよ。罰として平民から学びなさい」


「・・はい、お義母様」


 やったわ。王太后がやっと病に伏せった。王宮の権力を掌握したわ。

 前の王妃の娘、シャルロットを王宮から追い出す事に成功した。

 これで私の子供達を王族に出来るわ。


 シャルロットの行き先は・・・


「イワン、ターニャ、シャルロットの教育係を頼むわよ。厳しく躾けるのよ!」


「グヘへへへへ、王妃様、分かりやした。厳しく教育してやります」

「ヒヒヒヒヒ、このターニャにお任せ下さいな」


 2人は夫婦、イワンは最下層の市場役人だわ。私が踊り子時代に市場で見つけた最も意地悪そうな夫婦だわ。

 シャルロットの心をズタズタにしてやるわ。


 イワンはいかにも痩せて目の下に隈ができている。陰険そうな小役人の風貌だわ。

 ターニャは意地悪そうに目がつり上がっている。


「さあ、シャルロット、今日からワシらの家で生活するのだ」

「お手伝いをするのよ!」


「は、はい」



 私はシャルロット、新しいお義母様と義姉兄たちが来てからお父様は私に関心をしめさなくなった。

 お祖母様が病気なのに王宮を追放された。心配だわ。理由は分からない。平民として暮らせと言われたわ。


 市場の隅っこの・・・倉庫?みすぼらしい家に連れて来られたわ。


「さあ、シャルロット、修行よ。まずは・・・」


「ヒィ、ターニャ様、私は何をすれば良いのですか?」


「ヒヒヒヒヒ、まずは、この子を温めてあげなさい」

「ワン!」

「ワンちゃん?」


「そうよ。この子は母親を亡くして寂しがっているのよ。貴方がお母様の真似事でもするんだね」


「はい・・・あの、お名前は?」

「あんたがつけなさい」

「はい」


 子犬と一緒に寝た・・・真っ白でフワフワな子。

 名前はテオ君にした。


 次の日から・・・どんなことをやらされるのだろうかと思ったが・・・・


「テオを抱っこして市場を一周してきなさい!さぼるんじゃないよ」

「はい、ターニャ様」


 ワンちゃんを抱っこして市場を回った。


「テオと遊んでやりな。テオが満足するまでだよ!夜に遠吠えさせたら承知

 しないよ」

「はい」


 何でも昼間寝ているワンちゃん夜は元気で遠吠えするそうだわ。

 子犬のうちに夜はグッスリ寝る習慣をつけるそうだわ。


「ワン!ワン!」

「キャア!テオ、くすぐったいわ」



 これは虐待としてイワンは報告した。



 ☆王宮


「グヒヒヒヒ、シャルロットは犬に吠えられてキャーキャー悲鳴をあげています」

「そう、怯えさせたのね。イワン、その調子よ。また、報告に来なさい。これは褒美よ」

「ヒヒヒヒ、有難うございます」



 ・・・・・・・・・


 また、こんなこともあった。



「やあ、シャルロットちゃん。お使いかい?偉いね。ご褒美にお芋を煮たものをあげよう」

「おじ様、ありがとうございます」

「ワン!」

「テオ、半分こしようね」


 これも虐待として報告された。



 ☆王宮


「グヒヒヒヒ、シャルロットは街の者から施しを受けています」

「まあ、惨めね。王族の威厳が台無しね。次はシャルロットを乱暴に育てなさい」

「グヘグヘ、喜んで」





 ・・・・・・・・・・



「ヤーイ!ヤーイ!シャルロットのおすまし顔!」

「グスン、トム様、何故、私を罵倒するのですか?」

「ワン!ワン!ワン!」

「な、何だよ。泣くことないじゃないかよー」




「まあ、何ですって?トムにいじめられた?『お前の母ちゃんカリフラワー』って言ってやりな」

「グスン、・・・はい」



 ☆次の日


「トム様のお母様はカリフラワーですわ!」

「ワン!ワン!」


「ヒィ、な、何だと!グスン、ヒドイ!」




 ☆☆☆王宮


「グヘグヘ、シャルロットは喧嘩で男の子を泣かしました」

「そう、良い具合に仕上げってるわね」


 フフフフ、シャルロットを馬鹿に育てるわ。

 私の子は最高の家庭教師をつけて勉学とマナーを学ばさせているわ。

 ヨセフとの不倫の子だけども・・・・王位につけてみせるわ。


 それだけじゃない。


 長男のビリーには賢者の会議に出席させて共同で論文を書かせている。本を出版して権威をつけるわ。


「ビリー様、居眠りはお止め下さい」

「フアー」

「眠いのならご退席をお願いします」

「そうする」


「・・・賢者様、やはり踊り子の息子はダメですね」

「これ、ワシは馬屋番の息子出身じゃ。生まれだけで人の性質は決まらないがあの女狐が悪いのだろう」


 長女のミシガンには、コールマン公爵令嬢イザベラの派閥に接近させているわ。


「イザベラ様、この宝石は大金貨百枚で買いましてよ」

「あら、大きいわね。王家の宝石ではないのね」

「イザベラ様、王太后が亡くなったら私が受け継ぎますわ」

「不謹慎ですわ」

「まあ、そうですの。でしたら生きているうちに頂かなければ」


(はあ、シャルロット様、どこにいるのかしら・・・)と公爵令嬢は心の中でため息をついた。




 その頃のシャルロットは、ターニャに叱られていた。


「なんだい!人参残して、今日の晩飯はヌキだよ」

「グスン、どうしても食べられません」

「全く・・・」


 しかし、晩飯は、


「イワン様、・・・・ターニャ様は食事を取られないのですか?」

「フン!罰は連帯責任さ!そんなことも分からないのかい?」

「ターニャ、晩酌は晩飯に含まれないのじゃないか?」

「水でも飲んでおきな!」


「クゥ~ン」

「テオ君まで、ごはんに口をつけませんわ。私、とんでもない事をしましたわ。申訳ございません。お人参も食べますわ!」

「フン!分かったらいいのさ!」


 これもイワンによって、『グヘグヘ!シャルロットの晩飯を抜いてやりました』と報告された。


 そして、1年が過ぎ。シャルロットが10歳になる日に王家から使いがきた。

 王族のお披露目式に参加しろとのことだ。

 この日は、ビリーの本の出版式、ミシガンがホストをするお茶会も含まれていた。



「シャルロットちゃん。ドレス出来たよ」

「・・・おば様、有難う。カリフラワーと言ってごめんなさい」


「いいのさ、馬鹿息子トムが先に言ったことさ。ターニャとは幼なじみさね。この髪型で目立ちゃ。客が一目で覚えてくれるのさ。ほらトム、何か言いな」


「・・・似合う」

「ありがとう。トム様」


 儀式のためにトム様のお母様がお針子仲間を集めて一生懸命にドレスを作ってくれたわ。


「皆様、今まで有難うございました」


 私は深々と頭を下げた。


 王宮の馬車が来たわ。

 今の私は白のドレスに宝石はないけど、これで充分だわ。


「シャルロット様、お乗り下さい・・・」


 城から迎えが来たわ。侍従の顔に戸惑いの様子が見える。

 しかし、私は誇りを持っている。


「ワン!ワン!」

「シャルロット、テオも乗せてやりなさい」

「グヒヒヒヒ、テオはすっかりナイト気取りだな」


「お義父様、お義母様、今まで有難うございました」


 はっ、思わずお義父様、お義母様呼ばわりをしたわ。


「おお、うん。行ってこい。我が義娘よ」

「ヒヒヒヒ、この義母ははの罵倒術忘れるのではないよ。四の辻の口げんか王ターニャの義娘だよ。誇りを持ちなさい」


「はい!」


 受け入れてくれてうれしいわ。


 王宮に着くと、皆は驚愕の表情を浮かべる。


 お義母様に会うが、最初は嘲りの顔だったが、驚きの顔に変貌したわ。


「まあ、宝石ないのね。シャルロットは私のメイド役よ」

「はい、ミシガンお義姉様」


 お茶会につくと、イザベラ様がいた。私の五つ上だわ。


「まあ、シャルロット様、王宮からいなくなって心配していたのよ。なんて、美少女ぷりかしら。さあ、私の隣の席にお座り下さい」


「え、美少女ですか?」


「ええ、使用人達は驚いていますわ。立派に成長されましたわ」


「イザベラ様、その席は私ですわ。シャルロットは私のメイドですわ!立っていなさい」


「黙りなさい。席は地位と気品が決めるもの。貴方は王族ですらないのよ」


 イザベラお姉様の一喝でミシガン様が黙ったわ。


 市場のお話を楽しく話していたら、お父様とお義母様とビリー様が賢者や貴族をつれてやってきたわ。


 ビリー様は私をジロジロ見る。


「これ、ビリー!」

「はい、母上」


「シャルロット、お前が市場で遊んでいる時に僕は本を出版したのだ」


 遊んでいた。お手伝いもしていたけど、遊ぶ時間が多かったわ。

「そうですわ。遊んでいましたわ」


「みろ!シャルロットが遊んでいる間に僕は賢者並みになったのさ」


「まあ、素晴らしいですわ。どのような内容ですの?」


「まだ、読んでいないから分からないや」


 ドッと笑い声が起きた。


「いや、一端受け入れてから落とす」

「シャルロット様最高だ」



 父とお義母様は苦虫を噛んだような顔になったわ。


「シャルロット様、その切り返し最高ですわ」

「イザベラ様・・・私、何かはしたないことをしましたか?」

「いいえ。もお、お姉様と呼びなさい」


 私の肩をポンポン叩いて扇で口元を隠さずに笑ったわ。

 すると、ビリー様は顔を真っ赤にして怒ったわ。


「な、何だよ。お前の母上は貴族主義に染まったつまらない女だってお父様が言っていたぞ!」


 まあ、お父様とお母様が不仲だったと聞いたけども、「貴族が貴族主義に染まって悪いのかしら?」


 と口に出たわ。


 更に、


「貴方様のお母様は、昔は売れっ子の踊り子ですわ」


 と言って差し上げたら、ビリー様がつかみかかってきたわ。


「何だと!昔はって馬鹿にしているのか?」


 危ないと思ったら、王宮に預けているはずのテオ君が現れた。


「ワン!ワン!」


 え、空からだわ。テオ君がお空を飛んでいる。

 青い光に包まれている。

 もしかして、聖獣?


「ワン!ワン!」


 上からビリー様を押さえつけて、まるでボス犬が悪さをした子分を躾けるように押さえつけて牙を見せたわ。


「ガルルルル~」

「ウワ~ン!」


「吉祥だ・・・」

「王家の血筋に懐く聖獣ではないか?」

「そりゃ、もともと、ビリー様とミシガン様は連れ子だ。いや、陛下の落胤という噂もあるがこれはダメだ。シャルロット様よりも年上なのに」


 ビリー様は失禁したわ。


【そこまでじゃ!】


 その時、懐かしいお祖母様の声が聞こえたわ。


 女官に肩を支えられてお祖母様が登場したわ。


「ゴホ、ゴホ、ゴホ、シャルロットの事をヨセフに聞いたら遊びに夢中で見舞いに来ないと聞いたぞ!」


「母上・・・」

「お義母様、病気は・・・」


「お前にお義母様と呼ばれる筋合いはないのじゃ!」


「お祖母様、お久しぶりですわ。グスン、グスン」

「おお、シャルロットよ。市井に出されたと聞いたが・・」

「ええ、とても良くして頂きましたわ」


 その時、ミシガン様が口を挟みましたわ。

 私、このときだけは腹が立ちましたわ。


「お婆さま、宝石を下さい。王家の女主人に受け継がれる宝石がまだ手元にございませんわ」

「だまらないかい!」

「ヒィ」


「ヨセフの後妻と連れ子に口を挟むつもりはなかったがのう。これほどの事をしでかして!」


 その後、お父様は王位を剥奪されたわ。名目は病気療養だわ。後妻と連れ子ともども離宮に追いやられたわ。

 お祖母様が王位についたわ。


「妾はシャルロットが成人するまでは死なないのじゃ!コールマン公爵よ。シャルロットの後見を頼むぞ」


「はい、女王陛下」


 イザベラ様のお父様が私の後見人についたわ。


 賢者様に勉学を見て頂いたら驚かれたわ。


「シャルロット様、同年代の貴族令嬢と遜色ありません。いえ、上です」

「はい、勉強は市場のお義父様とお義母様に見て頂きましたわ」

「名は・・・」


「イワン様とターニャ様ですわ」

「それ、ワシの弟子じゃ!」


 何でも優秀ではあったが、人相が悪くて仕官が叶わなかった。


 イワン様とターニャ様は今でも市場にいる。


 時々、賢者様とテオ君を連れて会いに行くわ。


「お義父様、お義母様、お久しぶりですわ」


「グヘグヘグヘ、シャルロット、先生、ようこそ」

「ヒヒヒヒヒ、テオも立派な聖獣になって」

「ワン!」


 今でも2人はあの女に逆らって私を我が子のように育てくれたのか分からない。

 しかし、人を外見だけで判断するのはやめようと思うわ。




最後までお読み頂き有難うございました。

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