永遠途上
退廃と静寂の美しさに憧れていた思春期、
ずっと、永遠の意味を探していた。
春の訪れを感じさせる陽射しと、宙に浮くような暖かな風が、
僕の心を感傷的にさせる。
昔から退廃的な物が好きではあったが、
恋人同士が心中する事で、永遠の愛を手に入れる、というよくあるパターンは、
僕は端から信じていなかったし、魅力を感じなかった。
諸行無常という言葉があるように、全ての物は絶えず移り変わる。
永遠なんてないと、ずっと思っていた。
しかし、今は当時とは違っているものが1つだけあった。
大切な恋人がいる事。
愛する人と自分の愛を、ずっと絶やしたくなかった。
愛しくて、愛しくて、たまらなかった。
『永遠』が欲しかった。
窓から見える青空に片手をかざす。
「永遠って何なのかな…」
空に浮かぶ雲は何処までも遠い。
「何してんの?」
いつの間にか、彼女が傍に来て、不思議そうに僕を覗く。
「ひなたぼっこ」
「あんまり気持ち良さそうには見えないけど」
きっと誰もがそう言うだろう。
僕はクッションも絨毯も敷いていないフローリングに寝そべり、
気難しい顔をしながら、片手をかざしていたのだから。
彼女は僕にソファーのクッションを渡すと、傍にぺたん、と座った。
「ねぇ、永遠ってあるのかな?」
僕は早速質問する。
自分の中だけでなく、恋人がどう思っているかも知りたかった。
彼女は、また難しい事考えてんなぁ、という顔をしながら言う。
「私は…永遠なんて信じない」
「うん」
「だけどさ、『永遠』ていう言葉があるんなら、ないこともない気がしない?」
「…なんで?」
初めて僕が彼女に顔を向ける。
「世の中には、何もかも変わらない物なんてないと思ってる。
でも私の中で、あんたとの永遠を手に入れたい気持ちもあるんだ」
彼女は未だ空中にかざされている僕の手を握り、続けた。
「だから、私の一生が、私の永遠って考えてる。
私が生きてる間は、あんたとは永遠だよ」
そう言い終えると、彼女はいつもの笑顔を見せる。
僕も自然と笑顔になった。
「僕達は、まだ永遠の途中なんだね」
「そ。満足?」
「うん」
僕が身体を起こすと、握られた手を引かれて、自然と抱きしめられた。
長い間の探し物、今、手に入れた。
end.