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第98話

「今日から朝一番で、この飴を舐める様に」


 そう言って先輩の奴隷の人から手渡された飴を、俺は陰鬱な気持ちで眺めていた。


 なぜかって?

 ……だってこれ……どう考えてもドラッグなんだもん。


 

 お風呂場での一件の後、特にクロスに呼び出されることも無く、俺達は無事に部屋で寝る事が出来た。

 思った以上にクロスは体調が悪かった様で、今朝も姿を現す事は無かった(ザマァ!!)。


 本来ならお気に入りの奴隷をはべらせて朝食を取るという、腐ったルーティンを持っているクロスだそうだが、今朝の食事に俺達が呼ばれる事は無かったのだ!!


 良かった!と安心したのも束の間、先輩奴隷が食事と共に運んできたのが……このキャンディなのである。


「本来なら、ご主人様直々に直接食べさせて貰える物なのですが……残念ながらご主人様の体調が優れない為、こうして運んで来ました。……さぁ、遠慮せずキャンディを舐めて下さい?」


 え?普通に嫌だよ?


 が!このままキャンディ舐めないで、キャンディと睨めっこしてると、無理やりにでも食べさせられそうなので、ここは……思い切って口に含むことにした。


 俺が意を決してキャンディを口に含むと、ソフィアもそれを真似てキャンディを口に含む。


「いい子達です。では、食事が終わったら食器を持って厨房に来るように。その後、貴方達の仕事を説明します」


 それを見た先輩奴隷は満足そうに頷くと、その言葉だけ残し部屋から出て行った。


 完全に扉が閉まるのを確認してから……俺は急いで口に含んだキャンディを吐き出す!!うええ、ほんのちょっとだけ舐めっちゃったよ……。


「ソフィ!!ソフィもキャンディ吐き出して!!」

「……?解った。コウがそう言うなら……」


 そして急いでソフィアにもキャンディを吐き出す様に促すのだ!!

 ソフィアは首を傾げながらも、まだあまり舐めていないキャンディを口から吐き出す。


「……?どうしたのコウ?この飴、そんなに美味しくなかった?」

「違うよ、ソフィ!この飴は多分……麻薬なんだよ!!」

「え?そうなの??……なんでコウはそれを知ってるの?」


 そう。なぜ俺がこのキャンディ型ドラッグの事を知っているのか……!


 その理由は簡単。

 前回の街で麻薬中毒になって廃人同然になっていた少女、イリヤを癒した時、このドラッグの事を聞いていたからだ!!


 イリヤは無理やり飴を食べさせられ、気が付けば体がおかしくなっていたと語った。

 

 つまり……どう見てもこの飴です、本当にありがとうございました。……と言う事なのだ!!


 なのでこの飴を舐めるのは絶対にNG!!事実さっきほんのちょっと舐めちゃっただけで、ちょっと体がフワフワしちゃったし!!やばすぎ!!


「前この飴を舐めておかしくなった子がいて、その事を聞いてたから……」

「……そうなんだ。コウがそう言うならそうなんだろうね?……解った。じゃあ私も舐めない様にするね?」

「うん!信じてくれてありがとう……!ソフィ!」


 ソフィアは本当に素直で、物わかりのいい子だ!お陰で面倒な説明とかしなくても、大体の事は理解して納得してくれる!


「じゃあコウ……コウが吐き出した飴……私が持ってようか?下手に捨てるとバレた時が大変だろうし……ね……?」

「え゛!?汚いでしょ!?……大丈夫だよ!バレない様にどっかに……」

「私に任せて!??……ね?……コウ……!」


 なんでそんなにこの飴を捨てる事に情熱を燃やしてるんだ!?ソフィアは!!

 俺は思わずソフィアの圧に負けて、ついつい頷いてしまう……!


「う……うん。解った……じゃあ……えっと紙とかあったかな……」

「要らないよ?それに紙は貴重なものだから、その辺にないよ……。大丈夫!コウの口から出たものだから……全然汚くなんてないよ?」


 いや超汚いよ!!?この子は口にどれだけの雑菌がいるか知らないのかな!!?知らないだろうな!!この世界の人達は!!


 ともかく……またも俺はソフィアの圧に負けて、手に持っている飴をついつい渡してしまう……。


 うえええ。やっぱり俺の口から出た飴を、直接渡すなんて……正直自分でやっててめっちゃドン引きしてしまう……。


 ソフィアはそれを嬉しそうに受け取ると、まるで宝物の様に自分の飴と一緒に、大切に布にくるんで自分の枕の下に隠した。……その布どっから出したの??


 てゆーか……この子俺の話ちゃんと聞いてたのかな???それ……ドラッグだって言ったよね??え??それともドラッグキャンディ実はめっちゃ欲しかったの!!?もうジャンキーになってないよね!!?


「え……と、ソフィ……それ……捨てないと……枕の下じゃ……バレちゃうんじゃ……」

「ふふ。絶対にばれないから大丈夫。……信じて?……ね?……コウ……」


 えええぇぇ……。

 ホントに大丈夫かなぁ……。なんかめっちゃ不安なんだけど……。


 でも本人が絶対に大丈夫だと言った以上、それ以上の追及は出来なかった……。


 うーーん。俺としては手に持ってた飴を、こっそりトイレとかで捨てようと思ってたんだけど……ソフィアは想像の斜め上をいってしまったなぁ……。


「と……ともかく、その飴は危険だから……すぐにどっかに捨ててね??お願いだよ……ソフィ!」

「ふふふ。大丈夫……ちゃぁんと解ってるから……」


 あれぇ?ソフィアってこんな怖い笑みを浮かべる子だったっけ?やっぱりまだ情緒不安定なのかなぁ……。


 俺は疑問に思いながらも、それ以上の追及は出来ず、釈然としないまま朝食を食べるのであった……。



 二人で談笑しながら朝食をすると、さっきの飴の事は俺の乏しいキャパの頭から、すっかり抜け落ちていた。


 そして食事を終え、奴隷先輩の言われた通りに厨房に食器を運ぶ。


 厨房ではシェフの人達が忙しそうに料理の準備をしていた。朝食が終わったばかりなのに、忙しそうなんて、もう昼食の準備してるのかなぁ?……なんて阿保な事を考えつつ、厨房でシェフに指示を出していた奴隷先輩を見つけて彼女に近づく。


「来ましたか……。ではついて来てください。……後の事は任せました!」


 俺達についてくる様に促し、厨房の事は他の奴隷の人に任せて奴隷先輩は歩き出す。


 ……ふと思ったけど、この屋敷って使用人の男性はいるけど、メイドの人とかいないな……。

 

 ……!!!

 まさか、俺達と同じ趣味の悪いメイド服着てたから、この人も奴隷だと勝手に思ってたけど、この人普通にこの屋敷の使用人なんじゃ……。つまりこのメイド服着てる人が全員奴隷って訳じゃないんじゃ……!


 俺の迷推理により、まさかの真実にたどり着きそうになった時、奴隷先輩もといメイドさんは足を止め、俺達に振り返った。


「………貴女達……本当にちゃんと飴は舐めましたか……??」


 あ!!やばい!!!

 あんまりにも俺達が普通だから、メイドさんめっちゃ怪しんでる!!!


 想定外のメイドさんからの問いかけに、俺は対処できず固まってしまうのであった……!!

 ……どうしよう!!

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