第96話
今俺は猛烈に反省していた。
それは自分の事ばかりで、ソフィアの気持ちを何も考えてあげれて無かった事だ。
ミリヤが生きていたことは、俺にとってめっちゃ嬉しい事だが……ソフィアだって、スラムで仲良くしていたダン君が無事かどうか解っていないのだ。
ソフィアの話では何とか無事だろうという話だが……実際は心配に違いない!!
そんな不安な気持ちであろうソフィアを差し置いて、自分だけ喜んでるなんて……俺はなんて嫌な奴なんだろうか!!
クロスの事を言えないぐらいのクソ野郎なのではないだろうか!!?
そのせいでさっきソフィアが少し情緒不安定になったに違いない!!なので……俺は今、猛反してます……。
「コウ?……どうしたの……?」
「ソフィ……ううん。何でもないよ?」
でも多分ここでソフィアに謝っても、只の自己満足に過ぎないだろうし、ソフィアだって謝られても困るだろう。
今俺に出来ることは……不安であろうソフィアに寄り添って、そして一緒にここから脱出する事だ!!
二人で力を合わせれば、もしかしたらここを脱出出来るかもしれない!!
「……ソフィ。……頑張ろうね!!」
「???……ふふ。よく解らないけど……うん。頑張ろうね?コウ」
俺のいきなりの言葉に、ニコリと笑ってソフィが答えてくれる。
よかった……どうやら、機嫌は治してくれたみたいだな(多分)!!
さて……気を取り直して、どうやってこの屋敷から二人で脱出するか……そこが今一番の問題だな……!
この屋敷に俺達の仲間は、今お互いを除いていない。
でも俺達は今、首輪のせいで力を発揮出来ないでいる……。まぁ首輪無くても俺は大して役に立たないけどな!!
……それは置いといて、首輪のせいで力を発揮できない俺……そこに残るのは……元々クソザコナメクジだった体力が更にすり減っていて、利き腕すら上手く使えないゴミが残るのである。……詰んだ……!
いやまだだ!!
もしかしたらソフィアなら……ソフィアならまだ何とかなるかもしれない(他力本願)!!
「ソフィ……今私達、力を封じられてるけど……そんな私達でも、ここから脱出できる方法……あるかな!!」
「無理じゃないかな?多分今の私達じゃ、あの勇者……所か、この屋敷の使用人にすら敵わないと思うよ?今の所、大人しく彼らに従うのが賢明だと思う」
……現実って無情だね。悲しいね……。
くそーーー!!せめて黒騎士に変身出来ればなー!!まぁ変身出来てたのなら、そもそも捕まって無いだろうから、無い物ねだりなんだけど……!!
結局いい案なんて直ぐに思い浮かば無いので、うだうだと考えていると、部屋の扉がノックされる。
返事をして、扉を開けようとベッドから身を起こそうとすると、扉が開かれた。
入って来たのは、先程俺達を案内してくれていた奴隷の先輩とはまた違う、なんていうんだろ……ベテラン?な感じがひしひしと出ている女性だった。……でも俺達と同じ格好なので、この人も奴隷なのかなぁ?
「……お風呂の時間です。お二人とも私について来て下さい」
先輩?はそれだけ言うと、俺達を待たずにさっさと出て行ってしまった。
俺とソフィアは慌てて先輩の後を追う。
しばらく無言で先輩について行くと、更衣室?に案内された。
「お二人とも何もしなくていいですよ。お二人は最上級奴隷ですので、全てこちらで致します」
その言葉通り、俺達は服を脱ぐのも自分達では無く周りの奴隷?の人達がやってくれた。そして素っ裸にされてそのまま大浴場へと連れて行かれる。……せめてタオルで隠させて!!流石にハズイです!!
そして……当然体を洗うのも、周りの人達だった。……何この羞恥プレイ?既に調教とやらは始まってるって事なんだろうか??
俺とソフィア以外の奴隷の人達は、今普通にお風呂用?の服を着ているので、絶賛俺達二人だけが素っ裸なのである。勘弁して!!……あと素っ裸でも首輪はつけたままである。防水なのかな??
「あ……あの……体ぐらい…じぶ「いえ。貴女に拒否権はありませんよ?そもそも……この体はもうご主人様の所有物です。故に貴女であっても勝手は許しません」……えええええ」
俺の体は俺のだ!!……なーんて文句すら言わせねぇって凄みで言われて、俺は縮こまるしかなかった……。おのれクロスめぇ……!!
俺がクロスへの恨み辛みを更に募らせ、絶対にこの屋敷から脱出してやるって心の中で意気込んでると、ようやく体を洗うのが終了したのか、湯船につかる事が出来た。
大きなお風呂で中心で俺とソフィアだけが、ゆっくりと湯船につかれる。……この屋敷に来て初めてちょっとだけ得したなぁと思ってしまっていたが……その想いは次の瞬間打ち崩されるのである。
「おお!これは絶景絶景!!ふはは!やはり君達二人は本当にいいねぇ……!!」
「は!!?な……なんで貴方が……!!?」
そう大浴場に……勇者クロスが入って来たのだ!!最悪!!
なんでこいつがいるの!!?ミリヤ達を追いかけに行ったんじゃあ!!?
「ん?ああ、何故今私が屋敷にいるか、疑問なのかね?いやはや……意外と逃げ足が速いのか、賊を見つける事が出来なくてねェ……。暗くなって探すのもなんだし、一旦屋敷に戻ってきたのさ!」
そこは夜な夜な探せよ!!まぁミリヤに見つかってほしくはないけど!!
てゆーか俺達がお風呂入ってる時に入ってくるなよ!!デリカシーが無いのかよ!!まぁ奴隷がデリカシー求めるなって言うとそうなのかも知れないけど!!!
俺は手で胸を隠し、口が浸かるぐらいまでお湯に入る。
元男なのだから、裸を見られるのも男の裸を見るのも何ともない……と、心の中で言い聞かせても恥ずかしいものは恥ずかしい!!
くそ!!こんな所で自分が女であると、突きつけられるなんて思って無かった!!思わず目尻に涙が貯まる……!
「くくく。いいねぇ!いいねぇ!その初心な反応!!君は本当に……最高だよぉ!!!」
お前は最低だよ!!
体も洗わず、湯船で体を隠している俺にどんどん近づいてくるクロスに、恐怖心を感じて体を震わせながらも俺は思う。
こいつに比べると……エイシャは本当に紳士だったんだなと、思い知らされる。時々俺の反応を見て、ちょっとからかう事はあっても、エイシャは決して俺が心から嫌がる事なんて……絶対にしなかった。
ギーツだって変態で言動は可笑しいけど、決して悪い奴じゃなかったし、何よりアイドル達の為に戦う変態紳士だった!!
それに比べて……同じ勇者としても、男として、こいつは本物の屑だ!!
こんな奴……こんな奴……勇者に相応しくない!!
「ぐうう!!?」
俺が強くクロスを拒絶した瞬間、クロスは胸を抑えて苦しそうに呻いた。
………なんだ??どうしたんだ!?
「クロス様!!?」
「クロス様!どうなさいましたか!!?」
ついに胸を抑えて蹲ってしまったクロスに、周りの使用人及び奴隷の人達が駆け寄る。
「……はは……。疲れが出たのかな?……そう言えば最近働きづめだったし……残念だけど、今日はもう寝るよ……」
胸を抑えながら苦笑いをして、奴隷達の肩を借りながらお風呂を出て行くクロスを、俺とソフィアは呆然と見送るのであった……。……いきなりどうしたんだ?あいつ……。




