第95話 やっと見つけた私の…(ソフィア視点)
人間は嫌い。
だってたった数十年で、直ぐに死んでしまう。長くても百年も生きない。
どれだけ仲良くなっても、どれだけ彼らの事を想おうとも、彼らは寿命という縛りから抜け出す事なんて出来ないのだから。
だから私はいつも彼らを見送る側。
もう嫌なんだ。仲良くなった人たちが、老いて……そして満足そうに私を置いて先に逝ってしまうのは。
だからもう……人間は嫌い……。
私達エルフは長寿だが、年々その数を減らしてきた。
理由は知らないが、私は私の一族で最後のエルフだった。親は私を生んで、何故だか知らないが帰らぬ人となったらしい。
らしいというのは、私を育ててくれた人間の老夫婦からそう教わったからだ。
故に他のエルフを知らないし、会ったことも無い。
当然私を育ててくれた老夫婦も、直ぐに私を置いて帰らぬ人となった。
そこから私は旅をしている訳なのだが……その先で逢った人たちを皆、私は見送ってきた。
私を親友だと言ってくれた娘も、私を愛していると言ってくれた男も結局は皆私を置いていく。
だから……私はもう人間とは極力関わらない様にしていた。
そして……私と同じように、長寿の種族を探す旅をしてきた。……長寿の種族で一番に思いつくのは魔族なのだが、彼らはエルフを大層嫌っており、とてもじゃ無いが共存など出来なかった。
そして……流れ流れてこの街にやってきたのだが……そこでようやく見つけたのだ!!私と同じように長寿で、しかも私を嫌っていない……とても優しくて可愛らしい愛しの白銀のドラゴンの娘!!……コウに!!!
◆
灰色がかっていた世界が、まるで光が差す様に感じた。
共に同じ奴隷屋敷の牢屋に入れられて、彼女に逢った瞬間から……彼女が特別だと一目で解った!それ程までにコウは輝いて見えたのだ!!
正直なぜ自分が奴隷になったのか、いまいち覚えていない。
スラムであった少年……ダン?を庇って勇者?に捕まった様な気がしていたが……至極どうでも良かったのであんまり覚えていない。
まぁ誰の奴隷になろうとどうでもいい。だってどんな事をされようとも、少しの間……それこそ数十年耐えればそいつは死ぬのだ。
だから奴隷になったことに、大して感慨は無かったのだが……コウは違った。
彼女は勇者?の仲間らしく、勇者??に襲われて奴隷になってしまったらしい。なぜ勇者が勇者を襲って奴隷になったのか、いまいちピンとこなかったが……まぁそれはどうでもいい。そもそも勇者って何人いるんだ?
ともかく私は少しでもコウと仲良くしたかった。
全然怖く無いのだが、わざと怖がっているふりをすれば、彼女は私の心配をして強く手を握って励ましてくれた。
涙を浮かべてみたら……優しく抱きしめてくれたのだ!!
今まで多くの人間に抱きしめて貰ってきたが……そんな事は完全に頭の中から消え去る様な衝撃を受けた!!
これこそ私が求めていたもの!!私が欲しくてやまなかった……私と永遠を共に生きてくれる温もり!!私は今……この永い生涯を共にする伴侶を得たのだ!!!
しかし残念なことにここは奴隷屋敷。
私もコウも別々の所に売られてしまうかもしれない。
その時久々に私は心の奥底から恐怖を感じた。やっと手に入れた温もりを……奪われてしまうかもしれない恐怖……!!
こんな事になるなら首輪をつけられる前に細工して、魔力を使える様にしておくべきだったと、久々の後悔を感じた……。
しかし!!そんな私達に奇跡が起きたのだ!!
なんと私とコウは同じ主人に買われる事になった!!
私達を買った男は勇者??らしく、私達を捕まえた男と同じ人物らしいのだが……そうだっただろうか?こんな顔だっただろうか?……全く記憶にない。
そもそもたまにコウの口から出る、ダン??の事ももう正直あんまり覚えていない。
私がコウと牢屋で、お話がしたいが為に直近の記憶を呼び起こし言っていた名前らしいのだが……正直あの少年の名前はダンであってたっけ??
まぁそんな事はどうでもいい!!
私はこれからもコウと……ずっと一緒に居れるのだ!!それだけが本当に嬉しい!!
私達の主人となった勇者??が私達の体を好き勝手するのだろうが、そんな事は本当にどうでもいいのだ。だって数年も耐えれば彼は勝手に死ぬ。たとえ勇者だろうと、寿命という枠組みから外れる事など出来はしないのだから。
その時コウと二人で抜け出して、そして誰も知らない場所で二人で一緒に何時までも仲良く生きる。
私はコウがいつ死ぬのかと怯えなくていいし、コウだって同じだ。
コウはまだ若いから解らないだろうが、人間を見送っていくと心が摩耗していく。そんな想いを、大切なコウにしてほしくなんて無い。
だから……コウの大切な仲間が、勇者??に殺されて本当に良かったと思う。
もうコウはこれ以上失わなくて済むし……正直私達の間に邪魔な存在なんていらないのだから。
そう思っていた……なのに……!!
◆
つい感情が高ぶりコウをベットに押し倒してしまった。
先程勇者??から聞いたコウの仲間の生存。
私はそれに大きな衝撃を受けてしまっていた。何とも役に立たない勇者??だ!!仕事をこなせない無能とは彼の様な男だろう!!……奴は男だったっけ?女だったっけ?……まあどっちでもいい。
これでコウはまた、仲間が生きているかもしれないという呪縛に囚われて、目の前に居るはずの伴侶である私を無視してこの屋敷から飛び出そうと模索してしまっていた。
これは……いけない。
「そ……ソフィ?ど……どうしたの……?」
本当なら……この場でコウを抱き、めちゃくちゃに犯して私以外の事を考えさせない様にするのが一番いい。
でも……そんな事をしてコウに少しでも嫌われたら……私は生きていけない。
焦るな……ゆっくり……ゆっくり時間をかけて……コウを墜としていかないと……!!
「ふふ。コウが嬉しそうにしてたから……つい悪戯したくなったの。……怒った?」
「ううん!全然!私こそごめんね……私ばっかりで……。ダン君も……無事だといいね!」
「ダン??……うん!そうだね……コウ……」
私はゆっくりと体を起こし、仰向けに倒れているコウを腕で引っ張って抱き寄せる。
今度はベッドの上で、二人で座って抱き合う形になった。
やっぱりコウは……本当に優しい。私の理想の……伴侶だ。
「皆……無事だといいね?」
心に無い事を口にしながらコウを強く抱きしめると、コウもまた強く抱き返してくれた。
「うん!……大丈夫だよ!皆……きっと無事だから!」
出来れば無事じゃないといいなぁ……。どいつもこいつも……。
出来ればここの勇者??含めて皆死んでほしい。
そして……私とコウを二人っきりにしてほしい……。
コウ……私が探し求めていた、たった一人の女性。たった一人の……愛しの伴侶。
貴女だけは………何があっても絶対に、絶対に……離さないから……ね?




