第91話
屋敷の長い廊下を俺とソフィアは歩かされていた。
俺達には今、魔力封じと呼ばれる首輪をつけられ力を封じられている。
俺達勇者一行を襲ったクロスが、俺を奴隷商人に売り飛ばす時付けられた首輪だが……あれ?さっき黒騎士に変身出来なかったのって、もしかしてこれのせいなの??
いや!!多分それだけじゃない筈!!
だってあいつらが襲ってきたとき、流石にもう隠すわけにはいかないと変身しようとして……変身出来なかったからな!!
それにしても……クロスは一体何考えてんだろ?
だって白銀のドラゴンを手に入れたいなら、奴隷商人に俺を売る意味が解らない。滅茶苦茶無駄じゃね?わざわざ売って買い戻すって。馬鹿じゃね??馬鹿なのか……ぺっ(心の中で唾を飛ばす音)!
ちなみにエルフの少女ソフィアは……同じ奴隷商人に捕らわれていた少女で、そこで仲良くなった少女だ。
綺麗な金髪と俺と同じブルーの瞳、そして人形みたいにめっちゃ整った顔立ちが特徴の女の子で、少し話しただけで俺と仲良くなったのだ。
なんでもこの街のスラムで過ごしていたらしく、そこで運悪くクロスに捕まってしまったらしい。……この子も奴隷商人に売って買い戻したの?マジで馬鹿なの??
ちなみに冒頭(第89話の)で言ったダン君ってのは、そのスラムでソフィアと過ごしていた男の子だそうだ。
……え?お前ミリヤやエイシャ達が殺されたのに偉く余裕だな……って??
それなら大丈夫!!!
だってミリヤ達は……死んでなんていないからだ(断言)!!!
なんでそんな事断言できるのかって?
それは…………解らない。でもそんな気がするのだ。ていうかそう思わないとやってらんないのだ!!
そもそもエイシャとマリィがあれで死ぬとは思えないし、ミリヤはあのクソドラゴンに食べられそうになった瞬間、キーちゃんの煙幕のお陰で何とか食べられなく済んだっぽい!
あのあと煙幕が晴れた時、釈然としてなさそうなクソドラゴンの表情でそう思った(ザマァ!!)!!
あのクソドラゴン……黒騎士の力が戻った暁には、クロス共々くし刺しにして、ドラゴンはドラゴン鍋にしてくれるわ……!!
もし俺の願望が的外れで、ミリヤ達が本当に死んでしまったのなら……それが解った瞬間俺は舌噛んで死のうと思います。舌噛んで死ねなくても、何かしら死ぬ方法はあるだろう。
あ!!でも先に黒騎士の力が戻ってたのなら奴らも道連れだな!クロスとクソドラゴンと奴隷商人と、マフィアの連中とあの会場に居た連中は全員もれなく道連れです。絶対に。
ともかく実は、俺の精神はそんな感じいっぱいいっぱいなのである。
よって……ミリヤ達は生きてるって信じてないとやってらんないのである。まじで。
だって悪い想像すると……マジで直ぐにでも涙が出そうになるのだ。でも泣いてたって仕方がないから、こうやって妄想で精神を保っているのだ。
「着きました。二人とも、ご主人様にくれぐれも粗相のない様……」
俺達を先導していた、奴隷の先輩っぽい人が振り返って言う。ちなみにこの人も、俺もソフィアも今、メイド服である。ちょっとエッチな感じの。
クロスの趣味なのだろうか?だとしたら死ねばいいのに……。
俺の手を掴んでいたソフィアが、更に強い力で俺の手を強く握る。
緊張しているであろう震えるソフィアの手を、もう片方の手で優しく抑えて俺はソフィアに安心する様に笑顔を作る。
正直ソフィアが居てくれて良かった。
あのクズ野郎が何のつもりで、俺達を売って買ったかは知らないが、ソフィアが居てくれたから俺も少しだけ心を強く持てる気がする。
「さあ……二人とも、中へ……」
こうして俺達にとっての地獄の門は開かれたのである……。
例えこの先どんなことが待ち受けていようと……俺は只では死なんぞコラァ!!!
◆
「うーーーん。やはり美しい種族の少女には、美しい衣装が似合うねェ!!」
開口一番にそう言ってのけたクズ野郎の顔面をへこむまで殴りぬきたい衝動を抑え、俺はクロスを睨みつける。まぁそもそもそんな力無いし、右腕上手く上がんないけどな!!
睨んでいる俺の視線に気が付いたのか、クロスは苦笑いをしながら口を開いた。
「まずは我々の守り神である、白銀のドラゴンである君をこんな目に合わせた事を深く謝罪したい……。本当に申し訳なかった」
そう言って頭を下げるクロスに少し混乱する。
もしかして……これには何か深い理由でもあるのだろうか?そう思ってしまう。
でもそんな想いは、クロスの次の言葉で粉々に崩れ去るのである。
「なーーんて!!言う訳ないよねぇ??ふっはは!!私はただただ君が欲しかったのさ!!コウくん!!私はいろんな種族の少女を集めるのが趣味でねェ。是非とも白銀のドラゴンは手に入れて……私の物にしたかったのさ!!!それに……今や希少種になってしまったエルフ!!それも実に素晴らしいね!!」
ああ……逆に安心したわこのクソ野郎。マジでクソ野郎過ぎて。
「ああ!!それと君たちも疑問に思ったんじゃないのかい?なぜ捕まえてわざわざ奴隷商人に売り飛ばして、また買い戻したのか!!」
気になってたけど、こいつの口から聞きたくねぇ。
「それはね!!保証さ!!ただ攫って自分の物にしたら、もし国の警備隊とかに気付かれた時、君たちを救っていくかもしれないだろう?だが!!君たちを一度奴隷に墜としてそこから買えば!!君たちはもう商品として私に買われた事になる!!故に……本当の所有者として私の物という保証があるのさ!!」
裏オークションで買った奴隷に保証もクソもねぇだろ!!というか、この国で奴隷って合法なの!!?
あーーーー!!もうこいつホントにどうにかなんねぇかな!!?
「どうでも……いいです……!!」
精一杯虚勢を張って、クロスを睨みつけながら言うが……多分効果はいま一つ所か、効果は無いようだ……。
「ふはは!いいね!最初はその生意気な態度なのが実にいい!!それを調教して、私好みに変えるのが……私の一番の楽しみなんだよ!!!」
こいつ……本当に……!!
死ね!!氏ねじゃなくて死ね!!
「さて……本当は今すぐにでも君たちの調教に取り掛かりたいのだが……実はそうもいかなくてねェ……本当に申し訳ないのだが……ちょっと君達を見たいという私の友人に会わなければならないのだよ……。悪いが一緒に来てくれるかね?」
「いや……です……!!」
「ふはは!!本当に君はいいねぇ……!コウ君!!だが……君たちに拒否権はないよ!!ふあははははは!!」
なら聞くなぁ!!
どーせこいつの友人ってやつも碌な奴じゃねぇんだろ!!?
もーほんとに……どーにかしてくれーーーー!!
クロスの不愉快な笑い声が木霊する部屋で、俺は心の中で絶叫を上げるのであった……!!




