第85話
しばらくしても戻ってこないバエルを確認して……俺は急いで街へ向かった。まだ最大強化の効果のお陰で、暫く高速魔法は使い続けられる。
その間に……さっき俺が壊しちゃった建屋とかに、巻き込まれた人とかいないか確認して、何かあったら助けないと!!
正直体はもうガタガタだし、今最大強化解いちゃうとマジで俺はもたないだろうから、もう一歩も動きたくないけど……だからと言ってここで終わる訳にもいかない!!
幸いさっきからずっと超高速空間なので……まだ街の人達も、自分たちに何が起きたか気付いてすらいないだろう!!
急いで街に戻ると、さっきベリアルに引き裂かれて三つに枝分かれして着弾した、最後の閃光の光線は、確実に街を抉っていた。
一つは見た通り大きな建屋を破壊しており、もう一つは街の公園のような場所を、そして最後の一つは……なんか厳かな感じの宮殿を破壊していた!!!
幸い直接当たって跡形も無く消え去ってる人とか居なかったから……居ないよね?居ないって言ってくれ!!……ともかく居ないから(願望)、この後超高速移動が終わった時に、崩れ始める建築物とかから、巻き込まれそうな人たちを助けないと!!
ホントーにやばいほど悲鳴上げ始めてる体に鞭打って、俺は急いで街の人達の救助に走った!!
………正直バエルと戦ってた時からやばかった体は、多分これで限界を迎えたんだと思う。
何とか救助に奮闘して……最後の一人。宮殿内に居た、なんかいかにもお偉いさんみたいな人を助けた時……最大強化が完全に切れてしまった。
次の瞬間轟音と共に崩れ落ちる宮殿。
「な……なんだ!!?何が……おきたのだ……!!?」
今助けたお偉いさんみたいな人が、崩れ落ちた宮殿を見て愕然と声を上げる。
「き……君が救ってくれたのか……!?というか……大丈夫か!!?ボロボロじゃないか!!」
「……ふ。自分のケツを拭いただけにすぎない……気にするな……」
「なに!?」
ああああ。
なんでこんな時でも余計な事言っちゃうんだろ。黒騎士って!!その言い方じゃまるでこれを俺がやったみたいじゃん!!まぁ半分は俺のせいだけど!!
……ん?そういや最大強化が終わったと同時に変身が解除されるかと思ってたけど、どうやら猶予があるみたいで、すぐに変身が解除される訳では無いみたいだな……。なんか自分で作った魔法なのに、いまいち能力が理解出来てないな……。
まぁいつ変身が解除されるか分からないし、俺は焦りながらもボロボロの体に鞭打って、体を霧状に変える。
「お……おい!!待て!!どういうことだ!!?どこへ行く!!?……どこへ行った!!?」
申し訳したいけど、正直もうほんと限界。
俺は目の前で叫んでいるお偉いさん(?)を置いて、急いで分身の元へ飛んで行った……。
◆
霧状のまま病室へ戻ると、なんと病室は窓が吹っ飛び部屋は散乱していた。
何だこりゃ!!?何が起きたんだ!!?
正直何が起きたか解らないけど……どうやら分身は無事の様だ。なら……大丈夫かな……。もう黒騎士自身限界なのだ……。
俺は病室で寝ている分身とりあえず合体して………そして、合体して元のコウの体に戻った俺は……。
「……え?」
次の瞬間体中から血を吹き出した……。
……黒騎士で受けたダメージは……合体してコウになっても……そのままフィードバックするのね………合体しても分身の記憶とかないのに……ダメージはちゃんと……。
「う……ううう……コウ様……大丈夫……ですか……??……え!!?こ……コウ様!!?コウ様!!!?ひ……酷い!!!コウ様しっかりしてください!!!コウさまぁ!!!!!」
近くでマリィの悲痛な叫び声を聞きながら……俺は完全に気を失うのであった。
ごめんねマリィ……これは……ほんとにマリィのせいじゃないから……ね……。
◆
「あーーんもう無茶しすぎぃ!!ほーんとに死んじゃう所だったのよぉ??」
懐かしい声が聞こえる。たしか、どこかで一度聞いたことある様な……。
「今回は何とか無事に済んだけど……てゆーか君すごいねー。しょーじきあの化け物相手によく生き残ったね!!私なら脇目も振らず逃げちゃうわ!!君はスゴイ!!そんな君を選んだ私は……もっとスゴイ!!」
んーー。多分だけど、俺が死んだときに現れた湖の女神様かなぁ?
でもあの時はもっとこう、威厳みたいなのがあったような……。
「んもう!細かいこと気にしないの!死んだ人間を導くときはもっと威厳ある感じに振舞うんだけど、あれ肩がこるのよー」
さいですか。
……ん?って事は俺はまだ死んでないの??
「そだよ?まだ……死んでないよ?生死の境をさまよってる感じかな?私のお陰で!!」
そりゃ……ありがとうございます……。
「もう!!君は特別な存在なんだから、今死なれると世界的にひじょーにまずいのよ!前の彼女みたいに、殺されたりしたらまずいから……強くなるためにお兄様に頼んでちょーーーー強い魂……なんだっけ?金の命?を無理言って貰ってきたんだから……あんま無茶しないでねーーーって言いたい所だけど、あいつ相手じゃ無理かぁ……」
あいつ神殺しって言ってたけど……。
「そう……もーーーホントにやばい奴なんだから!!私の知り合いも大勢殺されたし、私は関わりたくないねーーー」
俺もですよ……。
でも本当にありがとうございます!
「んふふ。どういたしまして!……さ!そろそろ目覚めないさい?今回は特別だけど……多分次は……多分無いからねーー??」
肝に銘じまーす!
「んふ!よろしい!……じゃあがんばってね?かわいいかわいいドラゴンちゃん?キミの活躍……これからも見守ってるからね!」
はは。活躍してるのかは置いといて……じゃ!行ってきます!!
「はーーい。いってらっしゃーーい」
女神さまの気の抜けた見送りと共に、俺の意識はまどろんでいき……。
◆
「あぐ!!?」
激痛と共に目が覚めた。……ここは??
「コウ……?コウ!?……目が……目が覚めたのね!!?」
「コウ様!!あああああ……よかった……!!」
「キーーー!!」
ミリヤとマリィ(あとキーちゃん)の声が近くに聞こえる。軋む体に鞭打って声の方を見れば、涙を流しながら俺を見ている二人と目が合った。
「……おねえちゃん……マリィ様………キーちゃん……。みんな……おはようござい……ます……」
何かズレた挨拶をしてしまったが、そんな挨拶でも二人は気にせず俺に詰め寄る。
「おはよう!!コウ!!本当に良かった……二週間も目を覚まさなかったのよ!!?……もう……ダメかと思ったわ……!!」
二週間!!?……俺はそんなに寝てたのか!!?
「コウ!!目を覚ましたのか!!?」
「コウたん!!お目覚めですかあ!!?」
二週間も寝ていた事実に驚愕していると、エイシャとギーツが病室に飛び込んでくる。
おお!なんか久々のエイシャだなぁ……。しばらく会って無いもんね??
でも……皆無事そうで良かった……。
………あ!!!そうだ!!!
セントラルステージどうなったんだろう!!?
俺がセントラルステージの事を思い出し、ミリヤに聞くため口を開こうとした時。
またもや荒々しく病室のドアを開き、彼女が飛び込んできた。
「コウ!!!目を覚ましたのね!!!?大丈夫なの!!!?」
「……ふふ。そんなに慌てなくても……大丈夫だよ……クルミ……」
俺と共にアイドルを初めて……俺がこの街で誰よりも尊敬しているトップアイドル……クルミが肩で息をしながら俺を見て……その場で涙を流しながらエイシャ達を押しのけ、俺に抱き着くのであった。
……嬉しいけど今抱き着かれると、体がめっちゃいてぇええ!!!




