第77話
うごごごごご!!
かーらーだーがいーたーいいいぃ……。
いやホントに俺、さっきまでよくステージで踊れてたな!!?無敵のアイドルモード怖すぎない!!?
ちなみにもう無敵のアイドルモードは切れてます。というか多分だけど、もうアイドルモードになれない気がする……何となくだけど。
それにしても……俺からの皆へのサプライズはどうだっただろうか?
そう!!前回(王都編)の俺の役立たずっぷりを克服するため、王都に居る時密かにマリィに回復魔法とか習っていたのだ!!
一応聖女(笑)である俺も、マリィ同様に補助系とか回復系とかの魔法に秀でているらしいので、たった三週間で、しかも限られた時間だったけど意外と回復魔法は上達したのだ!!
そのお陰で今回、アイスとイリヤを癒す事が出来た訳である!!だってあの二人かわいそ過ぎるしね!!
え?じゃあその回復魔法で今自分を治せないのかって?
………それが出来たら苦労しねぇ(血涙)!!
何故なら俺は……人を癒すのは得意なのだが、自己回復が苦手だったからだ!!
……普通逆じゃない?とも思わなくはないが、こればっかりはしょうがない。
「コウ!!今ミリヤさんと聖女様を連れてくるからね!!待ってて!!」
なんて阿保な事を考えていると、カノンさんはそう言って医務室から急いで出て行った。
カノンさんには本当に申し訳ない事をしたと思う。ライブの方も気になるだろうに、俺がこうなってしまったせいで……。
しかし……クヨクヨしても仕方がない。俺も今、出来る事をやらないと!!
幸い今、医務室には俺しか居ないので、俺は痛む体に鞭打って黒騎士へと変身する。
そしていつもの様に分身をして、取り合えず分身の様子を確認する。
どうやら分身をすると、体の痛みは全て分身が引き受ける様で、さっきまであった吐き気と眩暈と体の痛みは無くなった。
「……ふん。今回ばかりは……お前にしてはよくやったな……」
黒騎士になると自然と口が悪くなる。特にコウに対しては、これでもかって程悪くなるのだが……今回ばかりはそれも鳴りを潜めていた。……まぁなんか自分を褒めてるようでむず痒いけどな!
そして俺は、息も絶え絶えで苦しそうにしている分身を、解析魔法で調べる。もしこの苦しみが呪いの類なら、俺の解呪魔法でどうにかなるかもしれない。……だが……!
「っち。毒か……!」
そう。
今、俺を蝕んでいるのは、呪いの類では無くどうやら強力な毒の様だ。
何か呪いが練り込まれてる様にも想えるけど、例え呪いを解除した所で毒は消えないっぽいので……俺の解呪魔法で分身を助ける事は出来ない……。
……やばくね?早くマリィが来ないと、俺死ぬんじゃね??
取り合えず呪いだけでも解いておくかと思っていると、廊下の方から勢いよくこの部屋に向かって走ってくる気配を感じた。
この気配はミリヤとマリィだ。ならば……護衛も兼ねて分身の側にいたが、後は二人に任せても大丈夫だろう。
「……全てお前に押し付ける様で悪いがな……」
さすがの黒騎士も、毒を全部分身に押し付けてこの場を去るのは、後ろ髪引かれる。しかし……。
「けほ……!……ふふ。……行って……ください……。だって……私達には……黒騎士にはまだ……やるべきこと……あるでしょ……?」
「……ふん。お前に気を遣われたら終わりだな……。………死ぬなよ?」
「……はい。……後は……まかせ……た……よ……?」
苦しそうに胸を抑えながら、言葉を発する分身を置いて、俺は体を霧状に変化させる。
目指すは……殺気を放っている奴の所だ!!
ライブが始まってからずっと、黒騎士だけに殺気を向けてきた何者か。正直黒騎士狙いなら、ずっと姿現さずにほっとけば良かったんだけど……殺気が語っている。
もしこのまま無視を続けるなら……標的を変えるぞ!!……と!!
正直めっちゃ嫌だし、分身が気になるしで行きたくは無いが……多分これを無視し続けると、この街が危ないのが何となく解っていた。だから……。
「っち!!本当に面倒だな!!」
俺は文句を垂れながら、殺気の主の元へと急ぐのであった。
◆
結論。来なきゃよかった。
「よお!!俺のラブコールをようやく受け取ってくれたかぁ!!待ちくたびれて、別の遊びを考える所だったぜぇ?」
目の前の、景色も歪むほどの殺意と魔力を感じながら俺は心の底から思った。……来なきゃよかった!!
ここはセントラリアから数キロ程離れた場所で、特に開拓もされていない大地だ。
その土地にある大きな岩に座って、俺を見下ろしている魔族を見て……来たことを心底後悔した。
だってこの魔族、見ただけで滅茶苦茶やばいのが解る。
今まで見た事ある魔族は、どことなく人間の部分を残しつつ、それに角やら羽やら尻尾やら、あと肌の色が違うとか……そんな感じの見た目をしていた。
だがこいつは、人型なのだが昆虫の様な硬そうな黒い装甲。背中から生えている四本蜘蛛の様な足も先っぽが尖っててどう見てもやばい。顔だって人間からかけ離れており、バッタと蜘蛛を足したような……なんか仮面〇イダー見たいな顔してる!!正直かっこいい!!ダークヒーローみたいで!!
そんな見た目だけでも激やばと解る魔族だが……何よりやばいのが魔力。
今まで見た魔族全員を足しても到底及ばないような、圧倒的な魔力。多分だけど……俺より多くね!!?
うーむ……まずいなぁ……こいつ、俺より強くねー?
なーんて現実逃避したくなるぐらい激やばな魔族なのだ。正直なんで来ちゃったんだろ?帰りたい……。
「くくくく!いいねぇ!!お前……最高にいいじゃねぇか!!」
そんな俺の気持ちを無視して、目の前の魔族はご満悦の様だ。何がいいんだよ!!俺は良くねぇよ!!
「やっぱ勇者はベリ……なんちゃら?に譲って正解だったなぁ!こんな極上の戦士がいるなんて、世の中まだまだ捨てたもんじゃねぇな!お前もそう思うだろ?黒騎士ぃ!!」
いや全然?全く同意できないですけど?
「ふん……。ペラペラとよく喋る奴だ……。お前の得意技はおしゃべりなのか?なぁ……魔族よ……!」
「くくく。おっと!!自己紹介がまだだったな?俺ァバエルってんだ。以後お見知りおきを……!」
「ふっ。以後があればいいけどなぁ?」
精一杯の虚勢を張りつつ、俺は臨戦態勢に入る。
しょーじきこんな奴と戦いたくは無いが、ここで俺が戦わないと多分こいつは街を襲うだろう。
そんな事させる訳にはいかない。あの街に手を出させない!!
だってあそこでは今……クルミ達が頑張ってるんだ!!だから……。
「お前はここで倒されるんだ……俺に。故に以後など……無い……!!」
「くはっははあ!!いいじゃねぇか!!是非そうしてほしいぜぇ!!!」
その言葉と共に、バエルも臨戦態勢に入る。
こうして黒騎士は、この世界に転生して二度目の死闘(ちなみに一度目は白銀のドラゴン)を繰り広げる事になるのであった……!!………やっぱ帰りたい!!!




