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第76話 この世で三人にしか期待されていないセンターでも!(クルミ視点)

 足がすくんで目の前が真っ暗に感じる。

 一歩一歩踏みしめるステージは、まるで……死刑台の様だ。


 今まではあんなに煌びやかに感じていた希望のステージは、まさに今私の絶望の死刑台なのだ。


 なんでこんな事になっている?誰が悪い?

 

 それはもちろん……コウが悪い!!

 なんで私なんかをセンターにしろなんて言ったのよ!……いや、コウの口から直接私をセンターにしろ、なんて言ってないけど、なんでそんな感じに受け取れるニュアンスで話したのよ!!


 おかげで私は……今本当に絶望的な気分よ!!


 でも私は歩みを止める事だけは……出来なかった。


 吐血して苦しそうにしていたコウ。いったい何があったのかは解らないが、只事では無いことだけははっきりと解る。そんなコウが……私に後を託したのだ。

 だから私はこの先どんな地獄が待ち受けていようとも、このステージから降りる事なんて絶対に出来ない!!


 そして私は絶望の壇上に立つ。そして……ステージを見渡して言った。


「みなさーーーん!大変お待たせしちゃいました!!ちょっとメンバーのコウが体調崩しちゃって……ステージに立つことが出来なくなってしまいました!!」


 その瞬間どよめきだす会場。

 当たり前だ。誰もが望んだセンターであるコウが……居なくなってしまったのだ。この中にはコウを見る為に足を運んでくれた人たちも大勢いるだろう。

 その人たちからすれば、不満が出るのは当然の事なのだ。


 でも……それでも……!!


「でも!!コウの変わりに頼れるメンバーが帰ってきました!!それは……アイスちゃんとイリヤちゃんです!!」

 

 私の呼びかけに、二人がステージの前に立つ。


「みんなーー!!心配かけてごめんねーーー!!アイスふっかつでーーす!!また皆に笑顔を届けられるように、全力でがんばるから、皆も応援よろしくねーーーー!!!」

「皆さん長らくお待たせしました。アイスと共にイリヤも完全復帰です。これからも皆さんの心に響く歌声を届けて行けるよう努力します」


「う……うおおおおおおお!!!?」


 サプライズ復帰を果たした二人のメンバーに、どよめいていた会場が一気に盛り上がりを見せる。


 これなら……いけるかしら……!?


「二人ともありがとう!じゃあ復帰した二人を含めて、私達Lumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)の新曲……『ミラージュ・ハート』!!聞いて下さい!!」


 だが……私がまた言葉を発した瞬間、会場が冷めるのが解った。


 理由は……解る。なんでお前がセンターを陣取っているんだ?……そう言いたいのだろう。


 コウで無いにしろ、せめて復帰した元々のセンターである、アイスがセンターにいるのが普通なのではないのか??……そう言いたいのだろう……!!


 ああそうよ!!私だって同じ気持ちよ!!

 今までコウの影に隠れて、大して目立ちもしていない新人をセンターに起用するよりも、センターとしての経験豊富で人気もあるアイスがセンターするのが当たり前だなんて!!私だって解ってる!!


 この会場に私を期待している人なんていない……。

 絶望に心が満たされながらも、演奏が始まろうとしていた最中……会場を見回した私の目に二人の人物が飛び込んできた。


 あの人たちは……!!


 

 パパ!!!ママ!!!!


 そこには、祈るように手を組んで私を心配そうに見つめる母と、そんな母の肩に手を置きつつ、強く……そして温かい目で私を見つめる父が、客席に居たのだ!!


 なんで……!!?なんでパパとママがここにいるの!!?


 二人に何も言わず、家を飛び出した私……置手紙には、この街に行くともアイドルになるとも一言も書いてなかった筈なのに!!


 二人は私を……怒っているだろう。親不孝者の私を。

 でも……今私を見つめる二人の視線は、怒りなんかじゃ決してなく……親愛、心配、そして……全霊の信頼を籠めた応援だった!!


 なぜそう感じたかは解らない。


 でも……私には解る!!二人は……二人だけは私を信じて応援してくれているのだ!!


 そうだ……この会場にいる誰にも期待されていなくたって、誰からも応援されていなくたって……二人だけは!!私を全力で応援してくれているのだ!!


 いや……二人だけじゃない。


 私を信じて、私なら出来ると……自分だけのトップアイドルだと言ってくれてた私の……誰よりも大切な私の親友!!コウも私を信じてくれている!!


 その瞬間、今まで感じたこともないほどの力が、体の底から湧き上がるのを感じた!!


 コウ!!アンタの真似!!させて貰うわよ!!!


 コウはいつも自分でイメージをしているのだと言った。自分を殺して別の何かになりきるのだと……そう!!イメージするのは常に最強の私!!


 私こそ最強で無敵のアイドルだ!!!


 例えこの会場で他の誰にも期待されて無いとしても……私を期待してくれている、たった三人の為に……その為に私はセンターとして歌いきる!!!


 『ミラージュ・ハート』は今の私にぴったりの曲だ。

 蜃気楼……幻影……幻想……!!私の心は正に今幻想で出来ている!!


 一度目を閉じ……そして私は目を強く開いて会場に言った!!


「みんな!!!私から目を離さず最後まで見てなさい!!!私が……私達が!!最強のアイドルグループLumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)よ!!!」


 コウ!!聞いてなさいよ!!?

 私が……私達が絶対にこのセントラルステージで、あんたを優勝に導いて見せるわ!!!


 湧き上がる圧倒的な感情を声に、体に乗せ、私は大きく一歩を踏み出したのであった……!!!

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