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第75話 サプライズ(クルミ視点)

 希望が絶望に変わる瞬間というのは、こういう時の事を言うのだろうか?


 ステージが始まる直前から少し不安だったのだ。

 いきなり転びそうになるし、ちょっと顔色悪いし……。でもライブが始まればいつも通り、最高のパフォーマンスをするので安心はしていた。


 でも、歌が中盤に差し掛かった時、一瞬だけ胸を抑えて苦しそうにしたのを私は見逃さなかった。

 その後何事も無かったかの様に歌っていたが、よく見れば少し顔色が悪い。

 

 コウ……大丈夫かしら……。


 心配にはなるが、そればかりに気を取られては私自身のパフォーマンスにも影響が出る。

 

 本来セントラルステージでは二曲続けて歌うのだが、幸い私達は一曲歌い終わった後一度舞台裏に戻り、息を整える時間があるらしい。

 何でもカノン社長曰く、サプライズの為の準備の為に一度舞台裏に戻るそうだが、そのサプライズが何かは教えて貰っていなかった。


 まぁサプライズが何にせよ、一度舞台裏に戻れるのだからその時コウの体調を聞けばいいか……。

 

 その時の私はそう思い、コウへの心配を一時的に心の中に仕舞って、自分の事に集中する事にした。


 そして……。


 大歓声の中、一曲目『ルミナス・コード』が終わり、私達は予定通り舞台裏へと戻る。

 舞台裏へ戻り、私はコウに駆け寄り肩を掴んで聞いた。

  

「コウ!!あんた大丈夫なの!!?ちょっと体調……コウ……?」

「あ……はは……。クルミ……ゴメン……ちょっとダメ……そう……」


 コウはそう言うと少し蹲り………吐血したのだ。


「え?」


 何が起きた?……一体何が起きたの……?


「コウ!!?ちょっとどうしたの!!?」

「コウちゃん!?だ……大丈夫!!?」


 ラビル含むメンバーの皆がコウに駆け寄る中、私は呆然として動けなかった。


 え……?口から……血??……なんで……??


 頭が混乱する。なんでコウの口から血が出てんの?コウ……大丈夫なの?


「どいて!!……コウ!!大丈夫!?返事出来る!!?」


 混乱する私含むメンバーを押しのけて、カノン社長がコウに近寄り、背中をさすりながら声を掛ける。


「カノ……ン……さん……。私は……いいから……早く……皆ライブに……もどらない……と……」

「何言ってるの!!?誰かタンカ持ってきて!!コウを医務室に……!!」

「おねがい……します……サプライズ……あるでしょ……?」

「っつ!!コウ……!!」


 息も絶え絶えになりながら、縋るようにコウがカノン社長に言う。

 コウは一体何を言ってるの!?今日無理してそれこそ……この先どうするつもりなの!!?


 私は居ても立っても居られなくなり、コウに詰め寄った!


「コウ!!いいから医務室行って……早く見てもらいなさいよ!!」

「……うん。私は……ね?でも……皆は……歌って?お願い……クルミ……」

「っつ!!!アンタが居なくて!!歌える筈ないでしょ!!?」

「ううん。クルミ……クルミなら……歌えるよ……。だってクルミは……誰よりも一番輝いてる……アイドルだもん……」


「タンカ持ってきました!!彼女を早く医務室へ!!」


 スタッフの人が急いでタンカを持ってくる。そして、コウをタンカの上に寝かすと、そのまま医務室へ移動しようとして……コウが私の腕を掴んだ。


「クルミ……お願い……!私の代わりに……クルミが歌って……!!」

「コウ……!」

「クルミは誰よりも……頑張って…げほ!!……っつう!……私がこの街で……誰よりも応援して……る……私のトップ……アイドル……だよ……。だから……クルミなら……クルミだから……歌えるよ……!!」

「コウ……!!」

「私……医務室で……聞いてるよ……。クルミが誰よりも……輝く姿……想像しながら……ぐうう!!」


 それだけ言うと、コウは苦しそうに胸を抑えて何も言えなくなった。スタッフの人とカノン社長はそんなコウの様子に慌てて、医務室までコウを連れて行く。私達はそれを呆然と見送るしかなかった……。


 すると……パンッ!と手を叩く音が聞こえる。


 それはリーダーのラビルが手を叩いた音で、私達は驚いてラビルを見た。皆がラビルに注目すると、ラビルはメンバーを見渡して、頷いて言った。


「よし!!コウの分まで私達が頑張ろう!!」

「は!?まさか……棄権なさらないつもりですか!?」


 ラビルの言葉にメンバー達が異を唱える。


 当然だ!私だって……棄権するものだと思っていた!


「うん!だってここで棄権したら……コウの頑張りが無駄になっちゃう!コウに何があったのか解らないけど、コウはああなるまで頑張ったんだよ!だったらここで終わる事なんで出来ないよね!!」

「だからって!!」

「それに……コウから皆への……私達Lumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)へ、サプライズがあるんだよ!!……二人とも!!いいよ!!」


 ラビルの言葉と共に、奥から二人の女の子達が入ってくる。彼女達は……!!


「アイス!!?イリヤ!!?な……なんで!!?」

「二人とも……どうして……!!?」


 メンバー達が驚く中、大怪我を負っていたアイスと、心身共におかしくなっていたイリヤが口を開いた。


「皆……心配かけてごめんね!コウちゃんのお陰で……私達元気になったの!!」

「はい。皆様には大変ご迷惑をおかけしました。でも、こうして無事に復帰できます」


 その後のラビルの話ではこういう事らしい。

 何でもコウは聖女様に師事していて、癒しの力が使えるらしい。


 聖女教会のシスター達がさじを投げた二人の元をコウは暇があれば通って癒していたらしく、その甲斐あってかセントラルステージ本番二週間前には、リハビリ出来る程に回復していたそうだ。


 ではなぜすぐに戻ってこなかったのかと言うと、カノン社長がメンバー含む会場の皆へのサプライズとして隠していたことと、いくら二人の体調が戻っても本番で歌って踊れるかは微妙だったからだそうだ。


 そして二人は、一曲目は諦めるとして二曲目『ミラージュ・ハート』だけは出れる様に、今日に合わせて練習してきたらしい。


 私はそれを聞いて……少し安心していた。

 センターであるコウが抜けた穴を、元々センターであるアイスが埋める事が出来るのだ!


「でも……私達は復帰出来てもまだ完璧じゃないの……。だから……センターはクルミちゃんにお願い出来るかな?それが……コウちゃんの望みでもあるから……!!」


 そんな安心した私にアイスは、まるで死刑宣告の様な残酷な事を言ってのけたのだ。


「……え?」


 その言葉を聞いた私は、何が起きたか分からず只固まるしかなかったのであった……。

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