第74話 セントラルステージ裏側での攻防③(勇者ギーツ視点)
拙者とベリアルは、エイシャとは反対側から攻めていた。
既に倒した暗殺者は二人で、次の暗殺者を探して今拙者達は客席に向かっている!!
「あ!イケメン勇者さんが、また一人倒したわ!あっち方面最後の暗殺者に向かって行ってる!これは間に合いそうよん!!」
ベリアルの言葉に希望が見えてくる!!
暗殺者は全部で七人。今エイシャが三人、拙者達が二人倒したので……残り一人ずつ倒せば暗殺者達は全員倒せる!!
実はついさっき、Lumi♡Twinkleのライブが始まってしまって、拙者の焦りは限界を迎えていたのだ!焦りと緊張でウ〇コ洩れそう!!
最後の暗殺者は、ベリアル曰く客席の後ろの方でコウたんを狙っている初老の男らしい。
拙者とベリアルはその場所に急いで……ついに辿り着いた!!
「あの男よ!!」
「よっしゃ!!」
拙者はベリアルに促されるように、会場の後ろの席からパチンコでコウたんに狙いを定める初老の男を見つけ……後ろからチョークを決める!!!
「ぐう!!?き……貴様!!?」
「うっせぇうっせぇうっせぇわ!!くせぇ口塞げや限界です!!!」
少しもがいた暗殺者も、拙者の必殺チョークによりものの数秒で落ちる。しゃあ!!テンカウントはいらねーなぁ!!?
「ちょうどいいタイミングね!!イケメン勇者さんも最後の暗殺者を始末したみたいだわん!!」
「ファーーーwwwまにあったぁwww」
やった!!本当にやった!!!
拙者はコウたんを……アイドルを守り切ったんだ!!!
拙者は喜びと、緊張のほつれでその場で崩れ落ちる様に座り込んだ。
「ベリアル殿……サンキューガッツ」
「え?なんて?……まぁいいわ。お礼を言いたいのは私の方だし!あの子達を……私のDevil's Winkの子達を守ってくれて本当にありがとう……」
「フヒヒwwwなんのなんの……!」
慈愛の目でステージを……この先歌う予定のDevil's Winkを見据えてか、眺めるベリアルに拙者は……魔族も人間も無いのかも知れないと考える。
お互い今はいがみ合っているかもしれな……でもいずれは……もしかしたら……。
そんな事を考えて、ステージで歌うコウたんに目をやった。
やはり彼女のパフォーマンスは神がかっている!!ステージが……会場が熱気で満たされている!!
それに合わせて魔道スフィアの輝きも半端ではない!!
これは……本当に食われるかもしれませんなぁ……アヤネちゃそ!!
「でも……」
「???」
拙者がコウたんのライブに目が釘付けになっていると、ふいにベリアルが口を開いた。そして……。
「やっぱり白銀のドラゴンは別よね?」
その言葉と共に、無造作に右手をコウたんに向かって振る。
するとベリアルの指先から、何か光るものが飛んで行く。それがスローモーションのように狙い違わずステージ上で踊るコウたんに当たった。
「え…?」
コウたんは一瞬胸を抑えて苦しそうにした後……気を取り直し何事も無かったかの様にパフォーマンスを続ける。
「わお!!すごいわぁ!!あの毒、即効性で一瞬で全身を巡るのよ??大の大人どころか、鍛え上げられた戦士だって体中を巡る毒の激痛でもがき苦しむってのに……やっぱり白銀のドラゴンは違うわねぇ?」
コイツは一体ナニを言ってるんだ……?
「もー!!それにしてもホントに困ったもんだわん!!人間の中途半端な毒とかじゃ白銀のドラゴンの命を取る事なんで出来ないもの!!アンタたちが思ってる以上に白銀のドラゴンってのは頑丈なのよ?」
「お……お前……」
「だから中途半端な人間の暗殺者に攻撃されて、例えばその場で裏にひっこまれたりしたら……それこそアンタ達白銀のドラゴンをがっちり守るでしょお??そしたら面倒だもの!!だ・か・ら!ほんとーに感謝してるわん……ギーツくん?人間の暗殺者始末してくれて……ありがと」
「こ……このクソ魔族……!!」
「くほほほ!!!大体にしてあんた達本当に勇者ぁ???なーーーんで魔族なんて信用しちゃうのよ!!この……大間抜け共ぉ!!!」
目の前で勝ち誇った様に大笑いするこの魔族の首を今すぐにでも捩じり切ってしまいたい。
俺は今、今まで感じた事の無い程のうねる激情で頭が可笑しくなりそうだった。
「きさまぁ!!!」
「他のファンに迷惑よぉ?それに……白銀のドラゴンはもう助からない……絶対に。それだけの致死量を籠めた毒を打ち込んだもの……。だから、最後の雄姿ぐらい見てあげたら?……くほ……
くほほ……くほほほほほほほほ!!!」
うおおおおおお!!!ブチ殺す!!!このカマ野郎を今すぐ血祭に上げてやる!!!
俺が魔族に飛び掛かろうとした次の瞬間、俺の後ろから音の壁を破り飛んでくる一本の弓矢!
しかし……その神速の矢をベリアルは片手で無造作にキャッチした……!!
「んふふ。あんた達千年前の勇者よりずいぶんと弱いわねぇん。そんなんじゃ彼には到底及ばない……。やっぱり彼には悪いけど、今回は出番は無さそうね」
「彼だと!!?」
「くほほ!まぁアンタ達には関係無いわよねぇ!!この私にすら勝てなさそうなアンタ達じゃあねぇ!!」
「言いたいことはそれだけか……腐れ魔族が……!!」
いつの間にか俺の隣にエイシャが立っていた。……そう言えばエイシャは瞬間移動が使えるんだったな。……だとしたら、暗殺者を始末した後すぐにこっちに来てれば……!!
「瞬間移動?結構便利な魔法が使えるのね?だったら暗殺者倒してすぐにこっちくれば、もしかしたら白銀のドラゴンは助かってたのかもねん……。くほほ!暗殺者倒して安心して気が抜けちゃったぁ!!?この……大間抜けぇ!!」
「貴様の言う通りだ……俺はどうやらこの男レベルの大間抜けの様だ」
エイシャが頭に青筋を立てながら、冷静を装い言葉を発する。
しかし解る。エイシャが今まで見たことも無いほどの怒りで身を焦がしているのが。
勿論俺だって同じだ!!こいつだけぁ……生かしちゃおけねぇ!!!
「んじゃ。場所を移動しましょっか?Lumi♡Twinkleの後は私の可愛い子達のDevil's Winkが歌うんだもの……。邪魔はしないでねぇん」
好きかって言いやがって!!!
だが……場所を移動するのはこっちだって好都合だ!!
「それに……イケメン勇者くんは白銀のドラゴンの最後を看取らなくていいのぉ??私なんかに構ってる暇あるのかしらん??」
「黙れ……!!貴様……!!」
「……エイシャ。こいつの言う通りだ……。コウたんの側に行ってやれ……」
「ギーツ……お前……」
「聖女ちゃんにこの事を伝えろ!彼女なら……コウたんを助ける事が出来るかもしれねぇ!!」
「!!!」
俺の言葉にエイシャが目を見開く。
ったく!何時も冷静なエイシャらしくもねぇ……。
「行け!!このくそったれは俺に任せろ!!」
「……すまん。任せた……」
「いやいや。聖女いるんなら話は別でしょ?行かせる訳「そりゃこっちのセリフだボケェ!!!」!!!?」
ベリアルの言葉が終わる前に、俺はベリアルの胸元を掴んでそのままセントラルステージの壁を突き破る!!
幸い余りの熱狂に、会場の人達は気付いていないみたいだ。
このクソ魔族は本当に許せねぇ!!絶対にだ!!
俺は今!!初めて人の為に……勇者ギーツに戻り、魔族と戦う事を強く胸に誓うのであった……!!!




