第66話
「セントラルステージ本番には……絶対に絶対に駆け付けますからね!!コウ様!!……ああ!楽しみですわ……。コウ様の雄姿……ようやくこの目に……!」
「あ……あはは……。無理はしないでくださいね?マリィ様……。それとキーちゃん預かってくれて、ありがとうございます」
俺は今、この街の聖女教会で通信用魔道具を使わせて貰って、マリィと連絡を取っている。
「いいえいいえ。コウ様の頼みとあらば……!あ!そうですわ!そのキーちゃんなんですけど……お願いしたら、私の使い魔という事ならば、街に入っても大丈夫だそうです」
「え!?本当ですか!?ありがとうございます!」
やった!これでキーちゃんもこの街に来ることが出来る!!
リヴァレンを離れてからずっと一緒だったキーちゃんが側にいないと、やっぱり寂しかったからこの報告は嬉しい!!
「ふふふ。喜んで頂けた様で良かったですわ。……あ!失礼……。……解りました……。……すみませんコウ様。残念ですが今日はこの辺りで……」
「はい。解りました。それではマリィ様……また」
「ええ。次はセントラルステージで!……あ!申し訳ありません私としたことが!……勇者様は今、側におられますか?少しお伝えしたことがありまして」
「え!?エイシャ様今そちらにおられないんですか!?」
んえ!?エイシャって一回国に戻るって言ってなかったっけ!?
「いえ……。こちらには戻られていませんが……。そのご様子ですと、コウ様も勇者様の所在をご存じないのですね?」
「……はい……。一回国に戻るって言ってそれっきりでしたので……」
「あの男がコウ様を置いて一人で戻るとは、いささか考えづらいですね……。解りました、勇者様の所在はこちらで調べておきますわ。……はぁ。名残惜しいですがコウ様、今日はここで……ごきげんよう」
「はい……。ごきげんよう、マリィ様……」
うーーーん。
エイシャはどこ行っちゃったんだ?
俺の護衛はミリヤに任せて、てっきり国に戻ったもんだと思ってたけど……。
俺が頭を悩ませていると、聖女教会の人達と話していたミリヤが俺の側に近寄り話しかけてきた。
「マリィとの通信終わった……って!どうしたの、コウ?なんか悩んでるみたいだけど……」
悩んでいる俺を覗き込んでくるミリヤに、今のマリィとの会話を説明する。
するとミリヤも腕を組み、首を捻って言った。
「そうよねー。マリィの言う通り、あいつがコウから離れて一人で帰るってやっぱり違和感あったのよねー」
「そうですか?」
「そうよ!まぁあの男の考える事なんて解んないけど……まぁでも大丈夫でしょ!だってあいつ、勇者だし!」
あっけらかんとそう言い放ったミリヤに少し呆れるが、でもミリヤの言う通りだ。エイシャは最強の勇者様なので、一人で何があっても大丈夫だろう。恐らく俺達に伝えてないだけで、何か考えがあって一人で行動している様にも思えるし!
「そうですね……!エイシャ様は大丈夫ですよね!」
「うんうん!大体にして今コウにあいつの事考えてる暇なんてないでしょー?あと二週間でセントラルステージなんだしね!!」
そうだ!
たった二週間で……セントラルステージだ!!
それを思い出すと、少し緊張してくる。
クルミにはお前は緊張しないのか?なんて良く聞かれるが、デビューの時アホみたいに緊張した時以来、アイドルで居る時は常に無敵のアイドルモードで何とか乗り切ってるだけである。
うーーん。
でもこのままじゃなんか不味いなー。
只でさえ黒騎士とコウが微妙に人格違って困ってんのに、ここに更に無敵のアイドルモードの人格まで入っちゃうと、いよいよ多重人格っぽくなっちゃいそう……。
でも、ま!いっか!
多重人格っぽいだけで、実際は一つの人格なんだし(多分)何とかなるだろ(諦め)!!
「はい!!セントラルステージ……全力で頑張ります!!お姉ちゃん、見ててくださいね!!」
「もちろんよ!!私も全力で応援するから……頑張ってね!コウ!」
「はい!!」
とりあえずエイシャの事は頭の片隅に追いやり、俺はまた無敵のアイドルモードを発動させ気分を高揚させる!!
……緊張するけど高揚する!……この緊張感がたまらない!!
「じゃあ……帰りましょうか?」
「はい!」
俺達は聖女教会の人達にお礼を言って、聖女教会を出る。
聖女教会を出る時に、シスター達に「私達もLumi♡Twinkleを……コウ様を応援してます!!セントラルステージ頑張って下さいね!!!」とエールを貰った!
こうして応援してもらえると、アイドル冥利に尽きるのである!本当に感謝だ!
俺はシスター達にお礼を言って、ミリヤと共に聖女教会を去るのであった。
俺はこのままミュトス・プロダクションの寮へ帰るのだが、いつもこうやってミリヤが送ってくれるのだ。
二人で手を繋ぎ、セントラリアの街をゆっくりとぶらぶらしながら帰る。
今日は貴重なオフなので、ゆっくりと街も散策できるのである!!……ただ俺は今、この街で有名になりすぎたので少し変装しているけど……。
大きな帽子で髪をすっぽりと隠し、伊達メガネをつけて変装している。
「ふふふ」
「……?どうしたんですか?おねえちゃん?」
「いや?そうしてると、本当にコウって……有名人になったなぁってね!コウの頑張りを皆が認めてくれてるの……私も嬉しいわ!」
ニコニコと笑いながら言うミリヤに、俺の頬が緩む。
ミリヤには本当にお世話になりっぱなしだ。この街でアイドルをやるのだって、ミリヤのサポートが無ければ今ごろ俺は夢の舞台に立つことは出来なかっただろう。……本当に感謝してもし足りない!
「お姉ちゃん!ありが「ここで逢ったがぁ百年目!!デュフフwwwミリヤ殿!!コウたんwwwまた逢ったでござるなぁwww」……え?誰??」
俺がミリヤに感謝の言葉を言おうとすると、何か不審者に邪魔された。……誰??
「オウフwww拙者忘れられてるwwwあれwwwコウたんがセントラルステージに立つのって拙者の為なんじゃwww」
……あああああ!!!完全に忘れてたぁ!!!
俺がアイドルをするきっかけを作ったクソドルオタ野郎……勇者ギーツが、俺達の行く手を阻むように変なポーズを決めつつ立ちはだかっていたのであった!!
………ホントにこいつ忘れてた!!!




