第62話
「ふふ……君とは……本当にいいライバルになりそうだよ……。絶対に……セントラルステージの舞台で競い合おう……!!」
ショートカットの綺麗な青い髪。ルビーの様な紫みを帯びた深紅色の瞳の奥底に情熱の炎を燃やし、誰よりもアイドルとしてのプライドを持った少女アヤネは俺にそう言い放った。
「私……絶対に負けません……!」
「その意気だよ……!ふふふ……本当に不謹慎な事を言うけど、アイス達が事故に合って良かったのかな?……こんなに素敵なライバルに出会えたのだからね……!」
「な……!!アンタなんてこと言うのよ!!言っていい事と悪い事があるってわかんないの!?」
俺の隣に立っていたクルミが、アヤネの言葉に食って掛かる。
しかしそんなクルミの言葉など、アヤネはどこ吹く風といって様に流しながら言った。
「つまらないんだよ……。このまま荒波すら立たずにスリーピートなんてね……。だから……ね?僕をたのしませてよ……!コウ……!!」
燃えるようなルビーの瞳は最早俺しか映していない。
……負けられない!!……アイス達とはちゃんと話したことは無い。でも何度か病院にお見舞いに行った事はある。
皆から聞いたが、あの二人がどれだけ真剣にアイドルをしていたのか……どれだけこのLumi♡Twinkleに全てを捧げていたのか……話を聞いただけでも痛いほど解った。だから……!!
そんな二人の事を事故に合ってよかった、なんて言うこの人には……絶対に負けたくない!!
俺は燃える瞳で俺を射抜くFlora Kissのセンター、アヤネに負けない様に、全力で睨み返すのであった……!
……どうでもいいけどスリーピートってスポーツとかで言うんじゃなかったっけ?バスケとか……。……っは!!?冷静になるな冷静になるな!無敵にアイドルモード崩すな……!!
じゃないと自分が今何やってんのか冷静になっちゃって………アイドルなんて出来ない!!
◆
衝撃の復活ライブから早一週間とちょっと。
俺達は順調に活動を続け、この一週間の間にもう一つの音楽イベントに参加し、そこで優勝を果たしていた。
そして……カノンさんが計画してた最大の壁にして、セントラルステージ前の最大のフェス……セントラリア・ルミナフェスに俺達は足を運んでいた。
ここでもし、参加するグループの中から三位以内に選ばれなければ……俺達はセントラルステージへ行くことは出来ないらしい。
採点方法は……正直説明を受けたがいまいち解らなかったが、このフェスで絶対に勝たなきゃいけない事だけは解った。
「いい?このフェス……確かに絶対に負けられない!……でも!そればっかりを考えて貴女達が楽しめないんじゃ意味ないわ!!貴女達は貴女達らしく……全力で楽しんでらっしゃい!!それさえ出来れば……絶対に負けはしないわ!!」
「「「「「はい!!」」」」
カノンさんの激昂に、皆の声が重なる!!
俺達の出番まではまだ少しあるが、それでも皆の緊張感は嫌というほど解る。
かくいう俺は……当然緊張はしているが、どちらかというと高揚感の方が勝っていた。これも無敵のアイドルモードのお陰かも知れないが、なんというか楽しみなのだ!ライブが!!
無敵のアイドルモードやってると自分が今何しているのか冷静に考えなくてすむし、何より何時もこういう時にうるさい、心の中の黒騎士の罵倒もどこ吹く風と流せる。……黒騎士ざまぁ!
「コウ……あんた緊張とかしないの?」
俺が心を落ち着かせて楽屋の壁に背をやりリラックスして目を瞑っていると、いつの間にか隣にクルミが立っていた。
「クルミ?……ううん?緊張してるよ?」
「嘘つきなさいよ……どう見たってリラックスしてんじゃない……」
クルミは緊張のせいか、少し青くなった唇を震わせながら言葉を続ける。
「……あんた……なんて言うか……ほんとーにおかしいわよね」
「……そかな?」
「そうよ!!……はぁ。あんた見てると緊張してる私が馬鹿みたいじゃない……」
「ふふ。その意気だよ。……大丈夫!クルミなら!」
「……ふん!あんたに言われなくても大丈夫よ!……あんたにだけは負けてらんないもんね!」
うんうん!クルミはこうでなくっちゃね!
どうやら緊張もほぐれた様で、何時ものクルミに戻っていた。
「よーっし!皆集まって!!円陣組むよ!!」
丁度いいタイミングで、ラビルが皆に声を掛ける。
俺とクルミは頷き合うと、小走りで皆の円陣に加わるのであった……!!
◆
んで、結論から言うと……フェスは大成功!!
何と俺達はこの野外フェスで、二位にランクインするという大健闘だった!!
しかも一位のFlora Kissとの点数差はほんの僅かであり、何とも惜しい結果だったのだが、それでも三位以内という俺達の目標は達成されたのだ!!
これで後は、小さなフェスや音楽活動をちゃんとすれば、二カ月と二週間後に迫ったセントラルステージに足を運ぶことが出来るのである!!
興奮冷めやらぬ俺とクルミは、二人で今日のライブの反省会という名の褒め合いをしながら楽屋を出て……そこで出会ったのだ。
「やあ。……今日のライブ、本当に素晴らしかったね?コウ。……僕はFlora Kissのアヤネ……。君と話がしたかったんだ……!」
Flora Kissの絶対的センター、アヤネに……。
そして冒頭に戻る訳である。
「じゃ。僕はそろそろお暇させてもらうよ……。コウ……。さっきも言ったけど、君とまた戦うのは本当に楽しみだよ……。君なら絶対に僕を熱くさせてくれると……確信してるからね……!」
言いたいこと言って満足したのか、止める間もなくアヤネは軽やかなステップで去って行った。
「~~~~~!!!コウ!!!絶対に絶対に!!負けるわけにはいかなわよ!!!」
キーーー!!っという風にクルミが怒りながら俺に言う。
かく言う俺は……取り合えずまたアイドルモードに戻りつつ、アヤネが去った後を睨みながらクルミに同意した。
「うん……。絶対に負けない……!クルミ!!頑張ろうね!!」
「ええ!!負けらんないんだから!!」
俺とクルミは固く手を握り誓いあう。
俺達は絶対に負けない……!!必ずセントラルステージで……勝って見せる!!!
なぜこんなに俺がセントラルステージで勝ちたいのか当初の目的を完全に忘れ、俺は強く誓うのであった……!!




