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第50話 敗北(魔族ザガン視点)

 自分が負けるなどと思ったことは無い。

 前魔王様に生み出してもらってから一度も敗北などした事が無かった。


 前大戦で、先の魔王様が討たれた時も自分自身は敗北などしていなかった。……魔王様が討たれたのだから魔族としては敗北なのだが、我は人間どもに終ぞ負ける事など無かったのだ。


 数千年の月日がたち、新たな魔王様となられた現魔王様に仕える事になってもそれは変わらない。


 同じ九天王であるヴェネアとブベルが敗北したと耳にした時も、よもや人間どもに敗北するなど所詮は今世代の魔族……九天王の恥さらしに過ぎないと思っただけで、まさかその後に自分がここまで追いつめられるなどとは夢にも思っていなかった。


 魔王様より命を受け、人間界へ潜伏しているフェネクスという魔族の手助けをしろと命じられた時、初めはまぁなんと面倒な作戦だと思った。


 そもそも現魔王様は慎重が過ぎる。勇者など我にとっては雑兵に過ぎない為、奴らの弱体化など待たなくとも力でねじ伏せればいいのだ。

 前魔王様が敗北した原因は、ひとえに我を傍に置いていなかった過ぎないのだから……。


 しかし命令は命令。


 我はすぐにフェネクスの元を訪れ、そして……今回の作戦を思いついた。

 どうもこのフェネクス。我々魔族を裏切る予定を立てていた様で、それを見越して魔王様が我を派遣した様だ。ならば……。

 

 フェネクスの小賢しい作戦を聞き流しながら、もしフェネクスの作戦が失敗した暁には我の作戦に切り替えると伝えた。

 しかし……フェネクスは体よく白銀の(エンシェント)ドラゴンと勇者を分担して見せた。思った以上に手際がいい奴だ。逆に今までは本当にやる気がなかったのだな。


 我としては勇者と戦ってみたい。今世代唯一腑抜けなかった勇者。

 フェネクスとは口約束で勇者を殺さないと言ったが、我に毛頭そのつもりなど無かった。


 フェネクスが白銀の(エンシェント)ドラゴンを殺害する為、我の配下の魔族で小娘を襲っている間に、我は仮初の聖女を見つけた。

 そしてそこに向かってくる勇者達も……!!


 これはチャンスだ。

 

 我はすぐに動いた。

 仮初の聖女の聖堂を爆破し、予想通り勇者達との戦闘になったのだ……そして……。



 なぜか今敗走している!!

 なぜだ!!?何が起きたのだ!!?


 黒騎士……確かに噂通り大した奴だ。しかし……それ以上に恐ろしいのは勇者だ!!


 我の配下の魔族の我の魔力だけを撃ち抜く技量、それを無数にやってのける神業!百はくだらなかった我の配下を一瞬で……!!


 化け物だ!!勇者とは……これ程の者だったのか!?

 確かに魔王様が勇者の弱体化を望むのも解る!こんな奴が四人も居れば魔族は終わりだ!!


 とにかく今は逃げなければ……!!

 保険としてフェネクスにも我の魔力を分け与えていたが、それも何時の間に無くなっている。このまま走って逃走しなければならない……!!

 

 しかしそれは難しいだろう。何故なら勇者が我に狙いを定め今にも矢を撃ってくるからだ!!

 全身から血の気が引く。まさかこの我が敗北するとは……!!


 しかし何時まで経っても勇者の矢は我に届くことは無かった。

 疑問に思い振り返れば、何と勇者は片膝をついて苦悶の表情を浮かべている。


 ……当然だ!!我の右手をふんだんに使った魔力爆弾(マジク・ボムズ)を受けておいて無傷な筈がなかったのだ!!


 まだ我は敗北はしていない!!今回は痛み分けの様だな!!勇者!!


 仮初の聖女も我に止めを刺すほどの力は持ってはいないだろう。つまり我を止める事が出来る者などもはや黒騎士を除いて居ないのだが、肝心の黒騎士はこの場から去った。

 恐らく我の配下の魔物とフェネクスを狩ったのは黒騎士だろう。今からでも戻ってくるかもしれないが……もう遅い!!


 いける……!!我は……やはり負けてはいないのだ!!

 

 そう思い足を速めようとした瞬間、心臓に鈍い痛みが走った。


「が……はぁ……!!?」

「……逃がすわけ……ねぇでしょうが!!!」

「女ぁ!!き……貴様……!!」


 またこの女かぁ!!先程といい、よほど不意打ちが好きと見える!!

 

 見れば女の剣が我の心臓を後ろから貫いていた。

 女の剣は先程殴り飛ばした時に手から離れた様だが、どうやら拾ったようだな。……だがこの程度の攻撃でまだ我を殺すことなど出来ん!!このままこの女を八つ裂きにして……なんだ!!?体が……痺れて……!!?


「私がどんだけ黒騎士の戦い見てきたと思ってんの!?あいつの技の真似事ぐらい出来る様になったのよ!!!」

「!!?」

「食らいなさいよ!!……稲妻(サンダル)!!!」

「う…?うおおおおお!!?」


 女の剣からあふれんほどの雷が乗った魔力が我の全身を迸る!!

 仮初の聖女の支援により爆発的に上がったであろう魔力……だがこの威力!!それだけでは説明できん!!

 よくよく考えてみれば、不意打ちとはいえ二度も我の心臓を貫いたのだ!!この女……気にも留めていなかったが相当の実力者!!?

 

 ……だがぁ!!!


「終わらん……!!この程度ではぁ……!!!」

「ミリヤ様!!!」

「!!!」


 体を捩じり、女の首を掻っ切らんと腕に魔力を込めた時、仮初の聖女の叫びと共に女の魔力が更に上がる。まさか……!!

 今仮初の聖女の支援魔法を受けたのか!!?先ほどの魔力の力はこの女だけのもの!!?


「ぐうおおおおおおお!!!?」


 馬鹿な……!勇者でも……まして黒騎士でもない……こんな女どもに……我が……負ける……!!?……そんなこと………あり得ない!!!


「はあああああああ!!!」

「おおおおおお!!?……あああ……魔王さまぁあああああああ!!!!」


 最後の断末魔を上げ、我は敗北を認められないまま跡形もなくこの世から消え去ったのであった……。

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