第46話 勇者と仲間達(勇者エイシャ視点)
何とか間に合ったな……。
俺は建屋の上から魔族を狙い撃った後に、心の中で安堵のため息をついた。
ミリヤと共に聖女の元へ向かっていたが、突如鳴り響いた轟音に嫌な予感がした。ミリヤを置いて瞬間移動で聖女教会まで辿り着いたのだが、その悲惨な現状にしばし呆然としてしまった。
教会自体は崩壊し見る影も無くなっただけではなく、周りの建物すら巻き込んだ大爆発。
パッと見る限り生存者など居ない様に見えたが、崩壊した建屋の中心に結界を張った聖女と、それに対峙している魔族が見えた。聖女の結界の中には件の令嬢も居る。
俺は直ぐ様弓を構え、魔族を討ち取らんと全力で弓を撃った。そして……。
「俺を抜きにして随分と盛り上がっているな?悪いが俺も混ぜて貰おう!」
不敵に言い放った訳だが、俺は内心戦慄していた。
何故なら……。
「ほう……貴様が勇者か……。少しは骨の在りそうな奴……」
そこには、俺の全力の射撃を受けてなお平然と立っている魔族がいたからだ。
自慢では無いが、俺の全力の射撃を受けて今まで平然としていたものなど誰一人居なかった。当然幹部を名乗る魔族達も同じだ。
こいつは明らかに今まで魔族とは違う……!!
俺は内心気合を入れなおし、一跳びで聖女の前に飛んだ。
「……弓使いでありながら、距離の有利を捨てて我の前に立つとは……勇敢なのか馬鹿なのか……」
「ほざけ!俺が遠くからちまちま打つ事しか出来ないとでも思っているのか?」
こいつ相手に様子見は不要だ!
俺は守護霊のケンタウロスを召喚し、聖弓を預けて自分の剣を構える。
これぞ俺の必勝の構え。守護霊に援護射撃を任せて俺自らが、魔法と剣技を用いて斬り込む。この戦闘スタイルで敗北したことなど、今までに一度もない!!
守護霊の援護射撃を受けつつ、俺は俊足で魔族との間合いを詰め、魔力を溜めた斬撃で一気に斬りこむ!
魔族は俺の斬撃を自身が召喚した剣でいなすと、自身の周りに小さな魔力の塊を無数に作り出す。恐らくこの一つ一つが先ほどの様に爆発する魔力なのだろう。
完全に魔力が固まりきる前に、守護霊に聖なる力を籠めた矢で魔力の塊を撃たせる。聖なる力は魔を退け、消し去る力を持っている。
俺の読み通り聖なる矢で撃たれた魔力の塊は、着弾と同時に無へと還った。
「!!」
「どうした?随分と驚いている様だが、自慢の魔術が消し飛ばされて驚いたのか?」
魔族を挑発しつつ、俺は手を緩めることなく剣を振るう。
魔族と俺の剣技は互角で、俺が一方的に押し勝てる相手ではなかったが、俺には守護霊がいる。
加えて……。
「む!!」
互角の鍔迫り合いをしていた俺達だが、突如俺の力が急激に増し魔族の剣を弾き飛ばした。そのまま俺は魔族の腕を切り落とし、心臓を貫かんと踏み込む。しかし、魔族は一跳びで俺と間合いを広げ、また無数の魔力の塊を展開しようとして……。
「ぐう!?」
後ろから襲い掛かったミリヤに胸を貫かれた。
辛うじて心臓は避けたようだが、それにより一瞬の隙が出来た。
「ミリヤ!!離れろ!!」
「!!」
ミリヤが一跳びで魔族から離脱したのを確認し、俺は剣を掲げ全力の魔力を溜める。そして全力で一気に振り下ろすと、魔力は斬撃へと変わり魔族へ襲い掛かる。それと同時に守護霊も魔族の周りを駆け回りながら無数の矢を撃ち放つ。
これぞ俺の奥義『煌閃・双魂の裁き』。
この奥義を受けて形を保った魔族は今までに一人とていない。加えて今、俺とミリヤは聖女の支援魔法で肉体が強化されている。何時もの倍以上の威力を誇る俺の奥義は魔族を跡形もなく消し去った。
「ちょっと!!いきなり置いてかないでよ!!びっくりするじゃない!!」
「それは……悪かった。だが緊急事態だ」
「……まぁこの有様見たら、分からなくはないけどね……」
神妙な顔で辺りの悲惨さを見回すミリヤ。
聖女の支援魔法で強化されているとはいえ、あの魔族に一太刀入れるとは……ミリヤはこの二週間で飛躍的に強くなった。今までまともな戦闘訓練を積んでいなかったというのに、ある程度の戦闘能力を持っていたミリヤは、騎士団での戦闘訓練でその力を開花させたそうだ。
騎士団長の話では、今のミリヤに勝てるのはもう騎士団長を除いていないらしい。
これは嬉しい誤算だった。
コウの人質として利用されては困るという理由で連れてきたミリヤだが、彼女自身が俺の仲間としての戦力に数えられる様になるまで成長したからだ。
「エイシャ様!ミリヤ様!」
聖女マリフィセントが件の令嬢を連れて俺達に近づいてくる。
彼女の支援魔法も非常に強力なものだった。恐らく俺一人ではかなり手こずっていたであろう先ほどの魔族を、聖女の支援、そしてミリヤの不意打ちによってあんなに簡単に仕留める事が出来たのだ……。
これが……仲間か……。
悪くない。そう思いミリヤとマリフィセントに声を掛けようと振り返った時、俺が魔族を跡形もなく消し飛ばした場所から、底冷えするような憎悪の声が響いた。
「くく……ふ……ふはははは!!」
その光景は正に驚愕だった。
俺が打ち倒した筈の魔族は、何もない場所から魔力だけで体を形成し、何事もなかったかのように完全に復活したからだ。
「勇者……本当に大した奴だ!我を一度打ち倒すとは……賞賛に値するぞ!!」
「き……貴様……!!」
魔族は悠然と俺達を見渡すと、にやりと口を上げて言った。
「我を楽しませるお前達に褒美をやろう……」
「褒美ですって?どうせ碌なもんじゃないんでしょ!!」
魔族の言葉にミリヤが食ってかかる。そんなミリヤに魔族は笑みを向けると静かに言った。
「我らの狙いは白銀のドラゴンの娘だ」
「!!!」
「ではなぜ我が白銀のドラゴンの元ではなく此方に居るのか……」
こいつは一体何が言いたい?
俺は警戒を新たに魔族の言葉を聞く。
「それは……もう終わるからだ。白銀のドラゴンの抹殺が……な……!!」
その言葉と同時に、王宮の方角から耳を塞ぎたくなるほどの轟音が響いた。
まさか……あれは……!!
「今正に……白銀のドラゴンの娘は……死んだ!!!」
声高らかに宣言する魔族に、俺とミリヤと聖女は愕然と目を見開くのであった……。




