第29話
「わたくしは第一王女のエレナですわ!!」
王様と王妃様の自己紹介の後、金髪縦ロールのかわいい少女が手を上げて言った。
隣でエイシャが「別に誰もお前の名前を問うてない」と言っているが、完全無視である。
するとまだ名乗っていないもう一人の男性も口を開いた。
「ならば僕も名乗っておこうかな?僕はこの国の第二王子のフェネクスだよ!二人ともよろしくね?」
ウインクをしながら名乗る第二王子様。普通の人がやると何だかなーって感じになるけど、第二王子様みたいなイケメンがやると様になる。
するとミリヤがハッとして俺を見る。そして王様達を見て口を開いた。
「私はリヴァレンの冒険者のミリヤです。名乗りが遅くなって申し訳ありません」
「……!!私は……コウです!申し訳ありません……」
ミリヤの言葉に俺も慌てて続く。
エイシャから聞いたのか、皆俺達の名前を知っていたから忘れてたけど、まだ俺達名乗って無かったんだ!!先に王族の人達に名乗らせるなんて、不敬もいいとこじゃないか!?
二人して頭を下げた後、ドキドキしながら王様達を見ると、二人はにこにこと笑いながら言った。
「ははは!!気にしなくていい!!君たちの名乗るタイミングを奪っていたのは私達だ!!」
「その通りですわ。お二人とも、お気になさらずにね?」
うーーーん。
エイシャといい、この人たちといい、この国の王族の人達はいい人達だな!!難しい顔をしている第一王子様は実は怒ってるのかもしれないけど、面と向かって罵倒しないところを見ると、多分許してくれるのだろう!!
そんな第一王子様だが、俺達を一瞥すると口を開いた。
「自己紹介は済んだな?ではなぜ君たちをわざわざ呼び出したのかを説明しよう」
「おいおい兄さん。そんなに急がなくても、せっかく可愛い二人がいるんだ。もっと親睦を深めたほうが……」
「黙れ。お前と違って私は忙しいんだ。……失礼。実は二週間後、年に一度の大晩餐会が執り行われる」
年に一度の大晩餐会……!!
何か聞くからにスケールのデカそうな……!!
「そこには当然この国の重要な要人が参加するわけだが、その晩餐会に君たちも出席してほしい」
「!!!?」
「私達が……ですか……?」
俺は驚きのあまり言葉を失い、ミリヤは訝しげに眉を顰める。
「そうだ。君たちは今からエイシャのパーティーとして、これから民衆にお披露目されるわけだが、その前に貴族達にも君たちを紹介しておきたい。……今後の為にもな……」
「今後……と、言いますと?」
「ああ。普通の勇者達と違ってエイシャは王族だ。当然エイシャを通じて王族に取り入るために多くの貴族達が自分たちの手の物をエイシャのパーティーにと打診してきたわけだが、今までエイシャはそれを全て蹴ってきた。だが……」
「そんな中、私たちがエイシャ様のパーティーに加入する事になった……」
「そうだ。当然面白く思わない者も多いだろう。故に君たちはエイシャのパーティーとして相応しいと、周りの貴族たちに示す必要がある。加えて……」
加えて?何だろうか?
「コウ。君はエイシャの婚約者だ」
違いますけど!?断じて違いますけど!!?
「ちが……!!」
「エイシャの婚約者の座を狙っている女性は多い。そして……その中でもエイシャの婚約者候補として最上位に名を上げているのが、今の聖女教会が誇る聖女のマリフィセントだ」
婚約者じゃねぇ!!あと聖女様の名前!!
一文字違いで眠れる何某の映画の、魔女様を思い出すお名前なんですけど!!?
いやいや。人の名前にケチつけちゃいけないのは分かってるけど、なんだかなーー。その名前の人本当に大丈夫?……いや本当に、名前で判断しちゃいけないのは分かってるけども……!!
「聖女教会としても、君がエイシャの婚約者なのも、君の正体が白銀のドラゴンなのも面白い話ではない。故に……君とエイシャの仲を彼女達に見せつける必要もあるし、エイシャが常に君の側にいると聖女教会に示す必要もある」
この人何言ってますの?
聖女様達に俺達の仲を見せつけるって……。そもそも俺がエイシャの婚約者なの前提で話し進めるの、やめて貰っていいですかね?
一応エイシャもさっき否定したよね?……ね?
ううううう!!
このままじゃほんとに俺がエイシャの婚約者ってことで話が纏まりそうで怖い!!
エイシャも否定してよ!!さっき妹には一応否定したじゃん!!
あとさっきから隣のミリヤが殺気立っててちょっと怖いよ!!流石にエイシャの時と違っていきなり罵倒とかはしない様だけど、いつ爆発するか分からないので気が気じゃない!!
俺が一人で悶々としていると、それを見かねてか王妃様が助け舟を出してくれた。
「まぁまぁ、レオン。いきなり色々言われてはコウさん達も混乱してしまうだろうし、今回はここまでにしないかしら?」
「母上……」
「一週間後、晩餐会に一緒に参加してほしい……今回の要件はそれでしょ?それを伝える事が出来たのだし、これからもお二人には逢えるのだから、今日はこれでいいのではなくて?」
「解りました。……二人とも手間を取らせたな、申し訳ない。ともかく二人には一週間後の晩餐会に参加してほしい」
ぜってぇ出たくねぇ!!
……でも拒否権なんてないんだろーなー。だって王族からの願いだし!!
「……承知しました。……コウも大丈夫?」
「はい……。晩餐会に参加します……」
俺とミリヤは渋々参加する事を約束した。
俺達の返事を聞き、王様と王妃様は満足そうに頷く。
第一王子様も小さく頷くと、皆が納得したという事で今日はこれでお開きとなった。
これからの事をミリヤと相談するために、俺とミリヤはすぐにでも宿に戻りたかったのだが、そんな俺達に待ったがかかる。
待ったを掛けたのは、今まで黙ってずっとドアの前で立っていた俺達を案内してくれた騎士の人だった。
なんでも今のミリヤの装備ではこれからに支障が出るだろうから、ミリヤに新しい装備をくれるそうだ。
その為にミリヤに少し時間が欲しいと騎士の人に頼まれて、ミリヤは少し考えた後、おっけーを出したのだ。
「ということなの。悪いけどコウ……一人で宿にって言いたいけど……それは不安だから、私についてきてくれる?」
「はい!もちろんです!私もミリヤさんの新しい装備……見たいです!」
と、意気揚々とミリヤについていく気満々だった俺なのだが、今度はそんな俺に待ったが掛かった。
「コウ……少し話せるか?」
バツが悪そうに俺に話しかけてきたのは、俺の大切な婚約者(怒)の我らが勇者エイシャ様だった……!!




