第28話
「………おいエレナ。さっきも説明しただろう。コウは俺の婚約者じゃない…………まだな」
金髪縦ロールの少女の言葉にエイシャが反応する。
……まだ?
今まだって言いましたよね?エイシャ様!!
「ふふふ!エイシャお兄様ったら恥ずかしがりやですのね!!大丈夫よ!!わたくしちゃあんと分かっていますもの!!」
たぶん貴女は何一つ分かってないと思うよ!?
「なるほどねぇ!二人ともとってもかわいいじゃないか!どうだい二人とも、この後お茶でもしないかい?」
エイシャの隣に立っていた、長身の金髪イケメンさんが口を開く。
この人はいきなり何を言っているのだろうか?
今そんな事言ってる場合じゃないと、空気を読んで欲しいのだが!?
あーもうめちゃくちゃだよ!!
というより、王様も王妃様も朗らかに笑ってないでこの人たち止めて欲しいんだけど!!?
俺とミリヤは、どうしたらいいのか分からず扉の前で立ちすくんでしまっていた。
すると……
「おい……お前たちが勝手に盛り上がって、彼女たちが困っているだろうが。とりあえず全員黙っていろ」
凄みのある低い声に、エイシャ含む三人は黙ってしまう。
この人は……
「失礼。……私はこの国の第一王子のレオンだ」
レオンはエイシャと同じ少し浅黒い肌に黒髪、意志の強そうなきりっとした目をした、がっちりとした体格の男性だ。
「私の兄弟たちが迷惑をかけたな……聖女コウとその姉ミリヤよ」
「せ……聖女!?」
「ん?エイシャから聞かなかったのか?其方は白銀のドラゴンの娘なのだろう?……ならば其方は間違いなく聖女の筈だが」
ひええ!?
確かにエイシャから先代白銀のドラゴンは聖女だったと聞いてはいたが、俺が聖女だと言われるのはなんか違う気がする!!
恐れ多いし、何より白銀のドラゴンとしての能力なんて何一つ使えないので、聖女なんて言われても委縮してしまう!!
「ははははは!」
俺が混乱して委縮していると、突然王様が笑い始めた。
皆が驚いて王様を見ると、王様は楽しそうに笑いながら口を開いた。
「ははははは!すまないすまない!!……エイシャから聞いてはいたが、本当に君は可愛い娘だな!!」
「ええ、本当に。エイシャの婚約者がこんな可愛い娘でわたくしも安心いたしましたわ」
「ははは!本当だ!っとすまないね。どうぞ!!二人とも座ってくれたまえ!!」
そう言って王様は、俺達を自分たちの前の席に促した。
あと婚約者じゃねぇ。
えーっと。
王子様達が立っているのに俺達が座っても大丈夫なんだろうか?結構不敬な気がするけど……。
そう思いエイシャに目をやると、エイシャに少し微笑んで言った。
「俺達の事は気にするな。本当は俺と陛下達だけで話すつもりだったのだが、どうしてもと兄弟達が来たんだ。だからこいつらに遠慮は不要だ」
そうは言われても……と思うが、座らないと話が進まなそうなので、ここはお言葉に甘えて座ることにしよう。
ミリヤに目配せすると、頷いてミリヤも俺と座った。
高級な椅子に腰を下ろし、改めて目の前に居る王様達に目をやる。
少しくせっ毛の金髪の髪、優しそうな顔に口ひげを蓄えてとても恰幅の良い男性の国王様。
綺麗な長い黒髪に綺麗な緑色の瞳、すらっとした美人の王妃様。
この国のトップの二人で間違えないが二人ともとても優しそうに微笑んでいて、心の中で少し安心してしまう。
かなり緊張していたが、優しそうな王様達でよかった……。
その思いが顔に出ていたのか、安心した俺を見て王様は笑みを深くした。
「少しは緊張はほぐれたかね?」
「は……はい」
「はい。ご心配ありがとうございます」
王様の言葉に、ミリヤと俺は頭を下げて答える。
「はははは!なに!そもそも君は白銀のドラゴンの娘なのだから、立場で言えば私より上なのだ!!それに、ミリヤ君はその姉なのだから私達に敬意など不要なんだよ!」
「そういう訳には……」
さすがのミリヤも王様相手では口ごもってしまうようだ。
かく言う俺も、王様の言葉に目を白黒させてしまう。
俺の方が立場が上だとか、この王様何言ってんだろうか!そんな訳ないだろ!
「はははははは!!」
「あなた、お二人が困っていますわ。お戯れはそこまでに……」
俺達が困り果てていると、王妃様が助け舟を寄こしてくれた。
王様はひとしきり笑うと、すまないすまないと言って大きく微笑む。
この人楽しんでんなぁ!
「陛下はお二人に……特に白銀のドラゴンである貴女にお逢いできるのを本当に楽しみにしていましたの。……かく言うわたくしも本当に楽しみでしたわ。物語の上でしか聞いたことのない白銀のドラゴン……来たりし聖女様にお逢いできるのを」
王妃様はそう言うと、少し悲しそうに目を伏せ言った。
「お母様は……残念でしたわね……」
「あ……それは……大丈夫……です。お姉ちゃん達が居てくれたので……!」
「コウ……!」
俺の言葉にミリヤは感動したように目を潤ませ、王妃様もまた優しく微笑む。
「この国にとって……いえ、世界にとって白銀のドラゴンは無くてはならない存在。……ミリヤさん。よく今までコウさんを守ってくださいましたね」
「いえ!!私はコウを守れてなんて……!!!前も魔族に操られてコウを傷つけたばかりですし……」
「いいえ。貴女という存在はコウさんにとって掛け替えのないものです。だからこそ魔族は貴女を狙った……。それでもあなた達の絆を断ち切ることは出来なかったでしょ?」
「王妃様……!!」
「そんな二人の確かな絆に、コウさんは守られていたんだと思いますわ」
なんていいこと言うんだろう!!この王妃様は!!
ちょろい事に、俺はこの王妃様との会話だけでこの人の事を好きになっていた。
こんな素晴らしい王妃様のお陰で、エイシャもいい奴なんだろうな!きっと!!
「ふふふ。エメラルドの言う通りだ。……おっと、私としたことが自己紹介を忘れていたな」
王様は俺達をみて優しく微笑むと、改めて自己紹介を始めた。
「私はこの国の国王の、マクシミリア2世だ!!そしてこっちが……」
「王妃のエメラルドよ。コウさん、ミリヤさん、よろしくお願い致しますわ?」
王妃様は小首を傾げて優しく笑うのであった。




