第27話
煌びやかな王宮の晩餐会。
シャンデリアの光が大理石の床に映り込み、鏡のように人々の姿を映し出していた。ラヴァダイ王国の王宮で催される晩餐会は、王族や貴族たちが一堂に会する年に一度の大舞台だそうだ。
まったくもって俺にとっては未知の領域な訳だが、なぜかその晩餐会の中に俺は立っていた。
………なんで!?
青いドレスを身に纏い、会場の端で呆然と立っていると、黄色い美しいドレスを身に纏った可愛らしい女性が俺に近づいてきた。
彼女の名前はエレナ。
この国のお姫様で、エイシャの妹だ。
「もう!こんな所で立ってないで、早くエイシャお兄様の所に行きましょ?お兄様がお待ちですわ!……今日は貴女が主役なんですのよ?コウ」
「……ええぇ」
「ええーじゃありませんわ!だって貴女は……エイシャお兄様の婚約者なんですもの!!」
ばばーん!と効果音が付きそうなぐらい堂々と言い放ったエレナ様だが、当の本人の俺としては完全に見当違いなのでやめてほしい。
ほら!!
今の言葉を聞いた周りの女性たちの目が!!目が!!人殺しの目になってますよ!!!
はぁぁぁ……まじでどうしてこうなった?
俺は現実逃避で天井からぶら下がってるシャンデリアを眺めながら、こんな事になった経緯を思い返していた……。
◆
二年間過ごした街を離れ馬車に揺られて約四日、ようやく俺達は目的地の王都ラヴァダにたどり着いた。……お尻が痛い!!
実は一度来たことがある王都だが、あの時は夜だったので良く街並みが解らなかったが、なるほど……王都というだけあってめっちゃ都会である。
なんだろ、俺はこの世界がよくRPGとかである中世系の世界なのだと少し舐めていたが、この王都に来てその考えが少し変わった。
車とか流石に走ってはいないが、なんと言うか街並みが都会なのである。
建物が立ち並び、煌びやかなお店、大きな役所……そして人の多さ!!
元居た街も結構な都会だと思っていたけど、ここに比べたらあそこも田舎だったんだなぁとしみじみ思い知らされた!
まずは旅の疲れを癒すため、俺とミリヤはあてがわれたホテルに泊まったわけだが、そのホテルが滅茶苦茶豪華だった。
エイシャは勇者だが王子様なので、そこいらのランクの宿では無いだろうと思っていた。だって道中に泊まった宿だってめっちゃ豪華だったし。
しかし今までの宿とは一線を画すランクのホテルに、俺とミリヤは驚愕しっぱなしだった。
滅茶苦茶広い部屋に、豪華なベット!!
マッサージ付きの高級スパに、夕食も高級ビュッフェ!!
なんだか別の世界に来たような感覚に囚われた俺達だったが、これもエイシャからの労いなのだろうと全力で楽しむことにした。
「明日、勇者のお父様……つまりこの国の王様と会う事になったわ」
食後、部屋のベットでキーちゃんと遊んでいると、ミリヤが俺にそう言った。
どうやら俺とキーちゃんが遊んでいる間に王宮からの遣いに人が来て、その事を言付けに来たらしい。
王様かーーー。
まぁ王子様で勇者であるエイシャのパーティーに加入するのだから、お会いしないといけないのだろうが、正直めっちゃ緊張する!!
だってこの国で一番偉い人だよ?エイシャの時みたいに粗相があったらどうしよう……。
「……緊張しますね……お姉ちゃん……」
「そう?大丈夫よ!!……この国の国王は大らかな方だって有名だから!」
「そうなんですか?」
「あれ?神父様から教わらなかった?今の国王陛下であるアレス4世様は民想いの偉大な国王なのよ?」
ゔ……!!
このままでは俺が微妙に上の空で、神父様の授業を受けていたのがバレてしまう!!
「あ……ええと……そうでした……ね?」
「あははは!コウってば神父様の授業上の空だったのね?まぁコウって意外とぽけーッとしてる事多いものね?」
「ゔゔ!!ごめんなさい……」
はい、バレました。
心なしかキーちゃんもやれやれって感じの目で俺を見てる……。
俺は心の中で涙をながしつつ項垂れてしまう。
そんな俺を笑いながらミリヤが撫でてくれるのであった……。
◆
次の日。
俺は胸にキーちゃんを抱き、緊張しながら王宮歩いていた。
隣を歩くミリヤは全く緊張していない様で、何時もと同じように平然と歩いている。
いくら優しい王様だからと言って、超格上の人にお逢いする訳だから少しは緊張したらいいのに……。
今朝、迎えの兵士の人達がやってきて俺達を王宮まで案内してくれたのだが、王宮の中ではその人たちではなく専用の騎士がいるみたいで、その人たちが俺達を王様の書斎まで案内してくれるそうだ。
……ん?書斎?
こういうのって普通王座とかでするものではないのだろうか?
こう……王様が王座に座ってその周りに騎士たちがいて……ばばーんって感じの場所で謁見するものではないのだろうか?
……まぁいいか。
それは置いといてホントに立派な建物だなーっと思う。
ラヴァダイ王国はかなり裕福な国だという事は知っていたが、この王宮も例にもれずその裕福さをこれでもかと前面に押し出してるように見える。
ぶら下がるシャンデリア、下に引いてある絨毯、壁に飾られた豪華な絵とか、目に入ってくるものすべてが煌めいて見える!すごい!
「ミリヤ様、コウ様、ここが国王陛下の書斎です」
緊張しつつもすごいなーっと思いながら歩いていると、どうやら王様の書斎に到着したようだ。
ほんとに緊張するなー。
「国王陛下、お二人をお連れしました」
「ご苦労。……入ってよいぞ」
その言葉を聞いた騎士の人に促され、俺達は王様の書斎に入る。
書斎に入ると豪華なテーブルと椅子があり、そこは恰幅の良いダンディな男性……多分国王様とその隣には多分王妃様であろう美しい女性が座っていた。
その後ろに立っているのは三人の男性と一人のかわいい女の子だ。
三人の男性の一人は我らが勇者様であるエイシャだったので、あとの二人は多分兄弟なのだろう。
そして……
「まぁ!!とってもかわいいのね!!貴女がエイシャお兄様の……婚約者ですのね!?」
俺と年齢はそう変わらないであろう女の子。
美しい縦ロールの金髪と整った容姿、大きな緑色の瞳をキラキラとさせて少女はそう言い放った。
その言葉を聞いて俺は、新たなる嫌な予感にその場で気絶しそうになるのだった……。




