第23話
あーーーー、めっちゃ疲れた。
本当に疲れたよ……まじで!!
あと……滅茶苦茶恥ずかしかった!!
俺は戦闘後すぐに霧状になって皆の様子を見守っていた訳なのだが、べそべそと泣きながらミリヤにすがる分身を見て共感性羞恥で見ていられなかった……まああれも俺だから共感性羞恥は可笑しいのだが!!
あの後話は後日という事でお開きになったわけだが、俺はしばらく羞恥に悶絶して動けなかったぐらいだ!!
でも……教会へ帰るミリヤと分身が手を強く握りしめ、今度こそ笑い合って仲良く戻っていく姿を見て、俺は頑張ってよかったと本当に思った。
その後、部屋に戻りミリアの隙(お花を摘みに)をついて霧状で待機していた俺と分身が合体したわけなのだが、分身している時の分身の記憶は実は俺には流れてこない。
しかし、分身している時に感じたコウの感情はダイレクトに流れてくるというクソ仕様により、俺は合体後流れる涙を抑える事が出来なかった。
不安、悲しみ、絶望、そして安心……もうやめて!!俺のライフはゼロよ!!
その後トイレから戻ってきたミリヤがぎょっとして慌てて俺を抱きしめてくれた訳だが、余計な心配をかけて本当に悪かったと思う。
それにしても、うーーーーん。
勇者パーティーかーー。
正直……めっちゃめんどくさい!!
何を隠そう俺は結構なめんどくさがり屋なのだ!!
それに何よりこの教会を離れるのが……嫌だ。
エイシャはすごくいいやつだ。
俺達を助ける為に戦ってくれたし、彼が言っていることも最もだ。
あ!
いきなり名前呼びなのは、心の中で勇者って言ってたら口からまた名前がパッと出てこないので、もう心の中でも名前呼びにした。
ともかく、エイシャの言う事は判る。
俺は白銀のドラゴンの娘なので、これからも魔族に狙われるのだろう。
聖女の話は正直よくわかんないが、魔族が俺を狙ってくるのは間違いないだろう。
ここまで考えて俺はつい最近まで皆に迷惑をかけるのならば、街を追い出されても仕方がないと考えていたことを思い出した。
黒騎士に変身してそれとなくミリヤ達に伝えたこともある……碌な伝え方にならなかったが……。
これはチャンスなのかもしれない……。
この教会を……街を出てみんなの迷惑にならない様にする。
それに……現金な話だが、ミリヤがついて来てくれるのならば俺は何とか耐えれる気がする。
隣ですやすやと寝息を立てているミリヤを見る。
ミリヤは俺にとってこの世界で一番頼れる人だ。だから……。
◆
「コウ……コウ……?起きて?もう昼よ?」
ゆさゆさと優しく体を揺らされて、深い眠りから目を覚ます。
考え事してたらそのまま眠ってしまったみたいだ。
……ん?
もう昼なら……エイシャの案内とかは!!?
俺は慌てて起き上がる。
「ミ……ミリヤさん……!!おはようございます!!え……と!!」
「お……おはようコウ。どうしたの?そんなに慌てて……」
「だってもうお昼……ですよね?え……エイシャ様は……!!」
「あー、勇者ね」
ミリヤは合点がいったのか、手をポンと叩くと笑いながら言った。
「それなら大丈夫よ!今朝勇者が教会を訪ねて来てね。コウと私を心配して来てくれたみたいなんだけど、昨日の事もあるし今日は案内は大丈夫だって!……コウに宜しくって言って帰って行ったわよ?」
わざわざ教会を訪ねてくれたのか。
本当に律儀なやつだなー。
「だから今日はゆっくり休んでもいいけど……さすがにこれ以上寝ると今夜寝れなくなっちゃうわよ!」
ミリヤは笑いながら俺をベットから起こし、そのまま座らせた。
そして俺と目線を合わせる様に屈むと、申し訳なさそうに口を開いた。
「改めて言うのも何だかだけど……昨日は本当にごめんね?」
「いえ!ミリヤさんのせいじゃ……!!」
「ううん、私が悪かったのよ。私の心が弱かったせいで……だから……」
何というのだろうか?
昨日の夜はずっと一緒に居てくれると約束したが、一晩考えてやっぱり考えを改めたりしたのだろうか!?
俺が戦々恐々としていると、ミリヤは決意を秘めた瞳で俺を見据えて言った。
「だから私は、もう変な誘惑に負けないくらい心を強く持つわ!!だって私は……コウのお姉ちゃんなんだから!!」
「ミリヤさん……!!」
「それでね……その為にも……コウにお願いがあるの……」
なんだろうか?
ミリヤの為なら何でもお願いを聞く所存だ!!
「はい!なんですか!?」
「……また、お姉ちゃんって呼んでくれない?」
「……う!!」
昨日分身が勢いでお姉ちゃんと呼んだのを、ミリヤは覚えていた様だ。
正直滅茶苦茶恥ずかしいが、それだけでミリヤが元気になるなら……俺は恥ずかしさを抑えて言おうではないか!!
「お……お姉ちゃん……」
「コウ……!!!」
ミリヤは感極まったように、俺を抱きしめた。
うーーーん。こんなに喜んでくれるのなら、今度からずっとお姉ちゃん呼びにしようかな?
前世では兄貴を名前呼びしてたので、ちょっと照れ臭いがミリヤの為だ!!
それに……ミリヤと本当に家族になれたようで、嬉しいしな!!
「お姉ちゃん……ずっと一緒にいてくださいね……?」
「うん……うん!お姉ちゃんがずっと一緒にいるわ!!離れたりしないからね!!」
その言葉に自然と俺の目からも涙が零れる。
昨日あんだけ離れないと言って貰ったのに、やっぱり俺自身かなり不安に思ってたんだなぁ……。
俺が思っている以上に昨日の出来事は、俺の精神にダメージが大きかった様だ。
二人で涙を流しながら、俺達は当分の間強く抱き合っていた……。
◆
どれぐらい時間がたっただろうか?
ようやく心の奥底から安心できた俺達は、少し離れて笑い合う。
これで本当の意味で一件落着だ!!
……とすると今度こそ気になるのは、勇者パーティに俺達が加入するという話だ。
俺としては教会やギルドの人達にこれ以上迷惑を掛けたくはないので、エイシャの話を受けて勇者パーティに加入しようと思っているのだが、ミリヤはどう思っているのだろうか?
「あの……お姉ちゃん」
「ん?どうしたの?コウ」
「昨日のエイシャ様の話なんですけど……」
「ああ……勇者パーティに入らないかって話ね?」
ミリヤは真剣な表情を作り、大きく頷いた。
「コウはどう思ってるの?」
「私は……エイシャ様について行こうと思っています。自分の力はまだよく分からないですけど……私がいるせいで皆に迷惑を掛けたくありません……」
「そっか……うん。……私も実は勇者パーティに入ろうかと思ってたの」
ミリヤは俺を見据えて真剣な目で続ける。
「もちろんコウのせいでこの街が……なんてことは思ってないけど、事実魔族達はコウを狙ってるわ」
「……はい」
「アレックスや私達だけじゃもうコウを守り切れないと思うの……。でも勇者は違う、あいつは黒騎士と同じぐらい強い」
「黒騎士……」
「確かに黒騎士はこの街を守ってくれているけど、何時までも彼に頼りっきりじゃあだめだと思う。それに……勇者について行けば私も強くなれる気がするの!」
拳を握りしめ、目を瞑りミリヤは決意を示す様に口を開いた。
「もう二度と……もう二度とコウを傷つけないわ!!だからその為にも私は……強くならなきゃいけないの!!」




