第14話
「さてさて!!気を取り直しまして!!勇者エイシャ王子様!!ようこそ我が街リヴァレンへお越しいただきました!!」
あの後俺の体調が良くなったと判断されたため、仕切り直しとしてまた市長の部屋で勇者様の歓迎が行われた。
最初は俺の体調を心配して渋っていた勇者だが、俺が必死にもう大丈夫だと伝えると一応は納得したのかこうしてまた歓迎を行えるのである。
「いやーこう言っては大変申し訳ないのですが、お越しいただいたのが勇者エイシャ様で本当に良かったですよー!!いや本当に!!」
「……まあ貴君らの心配は分かる。俺が言うのもなんだが、他の勇者たちの横暴は目に余るからな……」
勇者は渋い顔をして市長の言葉に同意した。
やっぱりエイシャ様から見ても他の勇者たちは素行が悪いのか……。
「……ゴホン!では!コウちゃん!ミリヤ!改めてご挨拶を!」
わざとらしく咳払いをして、市長が俺達を促す。
「はい……。ゆう……エイシャ様。この度、街のご案内をさせて頂きます、コウです」
「……ミリヤよ……」
ミリヤさーーん!!
なんでそんなにつっけんどんなの!!?
相手は勇者様で王子様だよ!!?
俺が言えた義理じゃないが、あんまり不敬な態度取ってると首が飛んじゃうよ!!?
あと勇者様も!俺が勇者って言おうとした時ちょっと睨んだでしょ!?
ミリヤの態度は無視なのに!!
「え……えと!よろしくお願いします!」
「……よろしく」
俺は深々と頭を下げたが、ミリヤは軽く頭を下げただけでフイっと顔を反らした。
ええええええ。
ミリヤってこんなに目上の人に対して無礼な人だったっけ?
確かにミリヤはお世辞にも口がいいとは言わないが、だからと言って目上の人にはちゃんとした言葉遣いも出来るはずだし、礼儀だってちゃんとした人の筈だ。
もしかしたら勇者の事が嫌いなのかも知れないが、だからってこの場でその態度は無いだろう……。
俺はハラハラしながらも勇者の言葉を待つ。
もし勇者がミリヤにイラっとして彼女を罰するような事を言ったりしたら、俺は全力で勇者を止めなければいけない!!……どんな手を使っても!!そう……色仕掛けしてでも!!
「……おい、お前……」
あばば。
やっぱり勇者様はご立腹のようだ。
勇者はミリヤを睨んで言い放った。
「チェンジで」
「……ああん!?」
風俗か!!
何言ってんだこの勇者!?
「まあ冗談として、お前は別にいいぞ?俺の事を気に入らない様だし、そもそも俺がこの街の案内を頼んだのはコウだけだ。故にお前はいらん」
「コウ一人に、あんたみたいなスケコマシ相手させる訳ないでしょ!?」
「……はぁー。……おい市長」
「は……はいぃ!」
成り行きをハラハラと見守っていた市長が、突然勇者に話を振られて飛び上がる。
「俺の案内はコウ一人でいい。他は邪魔だから下がらせてくれないか?」
「あ……いや……あのですね。実はコウちゃんは遠い国から来た娘でして、まだこの国の言葉を流暢に話せるわけではないのですよ。だから彼女の姉代わりでもあるミリヤが一緒に案内をと思いましてね!それに彼女はこの街の冒険者でも一位二位を争う実力者でして、王子様のお相手としては申し分ないかと思います!少し口が悪いですがそこはご愛嬌と言いますか……!」
早口でミリヤのプレゼンをしてくれる市長だが、勇者はそれをしらーっと聞いていた。
いや?聞いてんのかな……あれ……。
仕方がない。
今までの会話で分かったが、勇者は俺に随分と甘い様だ。
ならばコウの時にしか使えない究極の必殺技を久々に使う時がきたようだ!!
この必殺技は諸刃の刃故にあまり使いたくは無いのだが、ミリヤの為ならばしょうがない!!!
「あの……」
「ん?どうした?コウ……っつ!!」
俺は勇者様の手を両手でぎゅっと握ると、懇願する様に上目遣いをした。
「ぐぅ!!?」
「エイシャ様。さっき市長にも言われた様に、私は本当に……まだ言葉をうまく話せません。だから……お願いします!ミリヤさんもいっしょに……だめ……ですか?」
うごごごごご!!
必殺かわい子ぶりっ子は今の所百発百中の最強の必殺技なのだが、俺自身へのダメージも計り知れない。
今日は何時もよりもうんとおめかし(強制)しているのでいつも以上に効果は高いと思うのだが、それ故か俺に返ってくるダメージも大きい気がする!!
心の中の黒騎士がゲボ吐いているのが分かる!
男に媚びるしか能のない気色の悪い寄生虫め!!って罵ってるのが分かる!!
俺は心の中で満身創痍になりながらも、上目遣いを続けた!
「わ……分かった!! 分かったからもう止めてくれ……」
うーん。これは効いてるのかなー?
それともちょっときもいから止めてくれって意味だろうか?だとしたらちょっと泣いちゃうぞ。
取り合えず言質を取ったので、両手を離して一歩距離をとる。
「コウ……ごめんね……。コウにこんな事させて……」
するとミリヤが神妙な顔で俺に謝ってきた。
そして勇者を見据えると、真っすぐと綺麗なお辞儀をした。
「申し訳ありません勇者様。先ほどまでの無礼な態度、謝罪します」
「……顔を上げてくれ……俺こそ申し訳なかった。……俺がお前の立場なら恐らく同じような態度をとったはずだ。むしろ、この俺にあそこまで言ってのけたお前の芯の強さ、恐れ入った」
「勇者様……」
「市長!!やはりこの女性も案内役として頼むとしよう」
勇者は改めて市長に向きなおり、大きく頷いた。
市長もほっとしたように胸をなでおろすと、汗をぬぐいながら笑顔を作った。
「はい……!もちろんですとも!!ではではまた改めまして!!改めまして二人とも!!ご挨拶を!!」
三度目の正直だ!!
俺がミリヤを見つめると、ミリヤは申し訳なさそうに苦笑いして俺にペコリと頭を下げた。
俺はそれを笑顔で受けると、ミリヤの手をぎゅっと握る。
そして勇者にもう一度、今度は二人で頭を下げるのであった。
「勇者様。改めまして……この度街をご案内させていただきます。コウと……」
「ミリヤです。どうぞよろしくお願い致します」
……完璧だ!!
今度こそちゃんとご挨拶出来た!!
俺は嬉しくなって頭を上げる。
するとそこには少し不満げな表情をした勇者がいた。
えーーー!!?
今度は完ぺきだっただろう!?何が悪かったんだ!!?
俺が頭に疑問符を浮かべていると、勇者は不満そうに口を開いた。
「勇者様じゃないエイシャだ……!」
俺は最後の最後にダメ出しされてしまうのであった……。




