エピソード15:混乱の果てに
公開交渉の場は、私たちの思惑通り、混乱の渦に包まれていた。
アカリが次々と不正の証拠を突きつけ、私が高飛車な口調で追い詰めていく。会場の住民たちは、私たちの言葉に耳を傾け、政治家たちへの怒りを露わにしていた。メディアのカメラも、私たちの言葉を一言一句逃すまいと、必死にシャッターを切っている。
追い詰められた政治家たちは、顔を真っ赤にして叫んだ。
「な、何の権利があってそんなことを……! 我々は、この街の発展のために、正当な手続きを踏んでいるだけだ!」
彼らの言葉は、もはや言い訳にしか聞こえない。住民たちの怒りの声が、会場に響き渡る。
その時だった。
「わしの娘とこの街を侮辱した報い、きっちり受けてもらうでぇ……!」
地響きのような低い声が、会場に響き渡った。その声は、まるで雷鳴のようだ。
豪三郎だ。
彼は、いつの間にか会場の最前列に立っており、その鋭い眼光は、政治家たちを射抜いていた。その凄まじい迫力に、観衆さえ凍りつく。彼の背後には、桐生院組の組員たちが、静かに、しかし確固たる存在感を持って控えている。彼らの視線は、まるで獲物を狙う猛禽類のようだ。
「お父様、もう少しソフトに……!」
私は慌てて声をかけたが、豪三郎の迫力は抜群だった。彼の存在感は、会場の空気を一変させるほどだ。もはや政治家たちも怖気づき、逃げ腰になる。彼らの顔は、恐怖と絶望で歪んでいる。
そこへ、アカリがスマートに追撃した。
「逃がさないわよ。あなたたちが利用してきた人々の涙を思い出しなさい。あなた方の不正は、全て白日の下に晒されたわ。もう、逃げ場はない」
アカリの冷たい言葉に、政治家たちはさらに顔色を悪くする。彼らは、もはや何も言い返すことができない。
組員たちは、メディアや観衆をサポートし、不正の詳細を公開していった。用意周到に準備された資料が、次々と配布される。SNSでも瞬く間に情報が拡散され、政治家や企業幹部らは世間の批判の嵐に晒された。彼らの悪行は、瞬く間に世界中に知れ渡った。
再開発計画は頓挫し、商店街は白紙に戻されることとなった。私たちの捨て身の作戦は、見事に成功したのだ。
会場は、歓喜の声に包まれた。住民たちは、私たちに感謝の言葉を叫び、拍手喝采を送る。
私は、豪三郎とアカリ、そしてタツヤと組員たちを見渡した。彼らの顔には、達成感と、そして、この街を守り抜いた誇りが満ち溢れている。
この街と、この人たちを守ることができた。
その喜びが、私の胸に満ち溢れていた。
「お嬢、やりましたね!」
タツヤが、興奮した声で私に言った。
「ええ、タツヤさん。皆様のおかげですわ」
私は、タツヤに微笑みかけた。
豪三郎が、私の肩を抱き寄せた。
「ようやったな、レイナ! お前は、わしの自慢の娘や!」
豪三郎の言葉に、私は胸が熱くなった。前世では、決して聞くことのできなかった言葉だ。
アカリが、私の隣に歩み寄ってきた。
「レイナ。あなたのおかげよ。一人では、ここまでできなかった」
アカリの言葉に、私は静かに微笑んだ。
「いいえ、アカリさん。あなたがいなければ、わたくしも、ここまで来ることはできませんでしたわ。私たちは、互いに支え合ったのですわ」
私たちは、互いに顔を見合わせ、そして、固く握手した。
この瞬間、前世の因縁は、完全に過去のものとなった。
私たちは、この街の未来を切り開くための、真のパートナーとなったのだ。
会場の歓声が、私たちを包み込む。
この街は、私たちによって守られた。
そして、この街は、これからも、私たちによって守られていく。
私は、強く、心に誓った。
この街の、そしてこの人々の、守護者として。
私は、この新しい人生を、生きていく。