表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/18

エピソード12:仕組まれた罠

豪三郎のテレビ会見は、世論を味方につけるどころか、かえって「ヤクザは危険だ」という印象を強めてしまった。

彼の熱い訴えは、一部の心ある人々に届いたものの、大半のメディアは「極道が再開発に介入」というセンセーショナルな見出しで報じ、私たちの正当な主張はかき消されてしまった。真の黒幕は、この状況をさらに悪用してきたのだ。


「お嬢、神宮寺組長に、また圧力がかかっているようです」

タツヤが、険しい顔で報告してきた。

「今さら足抜けは許さない。あんたの娘もどうなるか分からんぞ」

そんな脅迫めいた言葉が、神宮寺組長に突きつけられたという。アカリは、父の身を案じながら、必死で動いていた。彼女の顔には、疲労と焦りの色が濃く浮かんでいる。

「アカリさん……」

私は、彼女の苦しみを思うと、胸が締め付けられる思いだった。前世では、私が彼女を苦しめていた。しかし、今、私たちは同じ敵と戦っている。


さらに、桐生院組が過去に引き起こした些細なトラブルが、マスコミにリークされた。それは、何年も前の、些細な揉め事だった。しかし、メディアはそれを大々的に報じ、「実は街を守ると言いながら利権を得ているのでは?」という印象操作を進めた。

「お嬢、これは……」

健太が、新聞記事を差し出してきた。そこには、桐生院組が過去に起こしたトラブルが、あたかも最近のことのように書かれている。

「卑劣な……!」

私は、怒りに震えた。彼らは、私たちの信用を地に落とそうとしているのだ。

桐生院組の信用は地に落ちていく。商店街の人々の中にも、私たちを疑うような視線を向ける者も現れ始めた。

追い詰められた私は、どうにかして真相を公にしようと奔走した。しかし、証拠集めが思うように進まない。黒幕は、巧妙に証拠を隠滅し、私たちを追い詰めていく。

タツヤもまた、焦りを隠せない様子で、何度も頭を抱えていた。

「何か手がかりがあれば……。このままでは、組の存続も危ういかもしれません」

彼の呟きが、事務所に重く響く。私たちは、まるで巨大な蜘蛛の巣に絡め取られたかのように、身動きが取れなくなっていた。

このままでは、この街も、私たちも、破滅してしまう。

私は、焦燥感に駆られながら、夜空を見上げた。あの、前世の断罪イベントの悪夢が、再び私の心を蝕み始めていた。

「リリアーナ……あなたは、また、何も守れないの……?」

心の奥底から、弱気な声が聞こえてくる。しかし、私は、その声を振り払った。

「いいえ! わたくしは、もう、あの頃の私ではありません!」

私は、強く、心の中で叫んだ。

その時、私のスマートフォンが鳴った。アカリからだ。

「レイナ。今、どこにいる? 会って話したいことがあるの」

アカリの声は、いつもより少しだけ、震えているように聞こえた。

「ええ、すぐに参りますわ」

私は、タツヤに事情を話し、事務所を後にした。

アカリとの待ち合わせ場所は、人通りの少ない公園だった。

アカリは、ベンチに座り、俯いていた。その肩は、小さく震えている。

「アカリさん……」

私が声をかけると、アカリは顔を上げた。その瞳は、涙で潤んでいた。

「レイナ……私、もう、どうしたらいいか分からないの。父は、この再開発を諦めようとしない。でも、このままでは、この街は……」

アカリの声は、途切れ途切れだった。

「分かりますわ、アカリさん。わたくしも、同じ気持ちですわ。しかし、私たちは、諦めるわけにはいきませんわ」

私は、アカリの隣に座り、その手を握った。

「この街と、この人たちを守るためなら、私はどんな困難にも立ち向かってみせる。たとえ、それが絶望的な状況であろうとも。あなたも、そうでしょう?」

私の言葉に、アカリは顔を上げた。その瞳には、再び強い光が宿っていた。

「ええ……そうよ。私は、ヒロインだもの。この街を、この人たちを、守ってみせるわ」

アカリの言葉に、私は静かに頷いた。

私たちは、互いの手を強く握りしめた。

この街の未来を賭けた、最後の戦いが、今、始まろうとしている。

私たちは、もう一人ではない。

前世の因縁を乗り越え、この街を守るために、私たちは共に戦う。

夜空には、満月が輝いていた。

その光は、私たちを、そしてこの街を、優しく照らしているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ