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エピソード11:豪三郎大暴れ

商店街襲撃事件をきっかけに、桐生院組と神宮寺組は、奇妙な共闘関係を築き上げていた。私たちは、それぞれの情報網を駆使し、黒幕である政治家や企業の不正の証拠を着々と集めていた。しかし、黒幕側も黙ってはいない。彼らは、さらなる悪辣な手を打ってきたのだ。


「ヤクザ同士の抗争が始まる」

そんなデマをマスコミに流し、“ヤクザ撲滅キャンペーン”で世論を味方につけようとしたのだ。テレビのニュースでは、連日、桐生院組と神宮寺組がまるで悪の組織であるかのように報道され、街の人々の間にも不安が広がり始めていた。商店街の活気は失われ、人々の顔には、再び暗い影が落ちていた。


追い詰められた豪三郎は、事務所で吠えた。

「わしが直接出るしかない! このままでは、街の人々が不安がるばかりや! わしが、この桐生院豪三郎が、直接真実を訴えるんや!」

その言葉に、タツヤが慌てて止めに入る。

「組長! それは危険です! 相手の思う壺ですよ! 組長が表に出れば、さらに世論は悪化します!」

しかし、豪三郎の決意は固かった。彼の目には、この街を守るという、揺るぎない覚悟が宿っていた。

「ええんや! わしは、この街の組長や! 街が困っとる時に、黙っとるわけにはいかんのや!」

豪三郎は、タツヤの制止を振り切り、事務所を飛び出していった。


翌日、豪三郎は、巨大な体と鬼の形相で、テレビ会見に乱入した。会見場は、多くの記者でごった返している。豪三郎の突然の登場に、記者たちは一瞬、静まり返った。しかし、すぐにざわめきが起こる。

「われら桐生院組は街を守るためにあるんじゃ! 人を追い出すような再開発は認めん!」

豪三郎は、マイクを奪い取ると、大声で叫んだ。その豪快な叫びに、記者たちは一瞬、ビビったように静まり返った。しかし、すぐに質問が飛び交い始める。

「極道がなぜ再開発に反対するのか?」

「単なる利権争いでは?」

会見は騒然となり、私はテレビ画面の前で、思わず叫んだ。

「お、お父様……! こんな無茶を!」

私の心配をよそに、豪三郎は必死に“街を守る理由”を訴え続ける。

「わしらは、この街で生まれ育ったんや! この街には、わしらの親父も、そのまた親父も、みんなが守ってきた歴史があるんや! それを、金儲けのために壊そうとする奴らは、絶対に許さん!」

豪三郎の言葉は、荒々しいながらも、真実の響きを持っていた。彼の言葉には、この街への深い愛情と、人情が込められている。しかし、世論は、そう簡単に動かない。

むしろ、豪三郎の乱入は、さらに「ヤクザは危険だ」という印象を強めてしまう結果となった。


「お嬢、組長が……」

タツヤが、苦しそうな顔で私を見た。

「分かっていますわ、タツヤさん。しかし、お父様の気持ちも分かりますわ。このままでは、この街は……」

私は、テレビ画面に映る豪三郎の姿を見つめた。彼の言葉は、確かに人々の心に響いている。しかし、それ以上に、彼が「極道」であるという事実が、世間の偏見を煽ってしまう。

「私たちは、真の黒幕の狡猾さに、改めて戦慄した。彼らは、私たちの弱点を的確に突いてくる」

アカリが、私の隣に立っていた。彼女もまた、テレビ画面を見つめている。

「このままでは、桐生院組の信用は地に落ちるわ。そして、神宮寺組も、無関係ではいられなくなる」

アカリの言葉は、冷静でありながら、危機感を滲ませていた。

「何か、手はないのでしょうか……」

私は、アカリに尋ねた。

アカリは、しばらく黙っていたが、やがて、静かに口を開いた。

「一つだけ、方法があるわ。ただし、それは……」

アカリの言葉に、私は息を呑んだ。

「どんな方法でも構いませんわ! この街と、この人たちを守るためなら!」

私の言葉に、アカリは私を真っ直ぐに見つめた。その瞳には、強い決意が宿っていた。

「分かったわ。でも、これは、私たち二人だけの秘密よ。誰にも言ってはならない」

アカリの言葉に、私は力強く頷いた。

私たちは、この絶望的な状況を打開するために、最後の賭けに出ることを決意した。

この戦いは、まだ終わらない。

私たちは、この街の未来を賭けて、戦い続ける。

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