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エピソード9:宣戦布告

黒幕の存在がちらつき始めた頃、神宮寺組との会合の場が設けられた。

場所は、市内の高級料亭。豪三郎とタツヤ、そして私も出席した。豪三郎は、いつになく険しい表情で、その巨体から威圧感を放っている。タツヤもまた、冷静沈着な表情の奥に、鋭い眼光を宿していた。私もまた、前世の悪役令嬢としての経験を活かし、毅然とした態度で臨む覚悟を決めていた。


料亭の奥座敷に通されると、そこには既に神宮寺組の組長と、その隣に立つアカリの姿があった。神宮寺組長は、豪三郎とは対照的に、細身で知的な印象の男だ。しかし、その瞳の奥には、冷徹な光が宿っている。アカリは、前回と同じく洗練されたスーツに身を包み、その表情は読み取れない。


「桐生院組長、本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます」

神宮寺組長が、静かに口を開いた。その声は、まるで氷のように冷たい。

「神宮寺組長、この度の再開発、我々桐生院組は断固反対いたします!」

豪三郎が、地響きのような声で宣言した。その声は、料亭の壁を震わせるほどだ。

神宮寺組長は、豪三郎の言葉に動じることなく、冷徹な視線を向けた。

「それは、承知しております。しかし、この再開発は、この街の未来のために必要なこと。感情論で、物事を止めることはできません」

その隣で、アカリが私を見据える。

「桐生院レイナさん。あなたも、この再開発に反対なさるのですか? 前回は、感情的になられていましたが、今回は、冷静にお話しいただけますか?」

アカリの挑発的な言葉に、私は一歩前に出た。

「当然ですわ! わたくしは、この街と、この街に住む人々の生活を守るため、極道として戦いますわ! あなた方のような、金儲けのためだけに街を破壊するような真似は、断じて許しません!」

私の言葉に、アカリは不敵な笑みを浮かべた。

「ならば受けて立つわ。私のほうが正しいと証明してみせる。この再開発が、この街に真の繁栄をもたらすことを」

周囲の組員たちは、まさに組同士の“全面戦争”が勃発するかと思われた。両組の間に、ピリピリとした緊張感が走る。

しかし、その時だった。


「大変です! 商店街が襲撃されました!」

一人の組員が、血相を変えて飛び込んできた。彼の顔は、恐怖と焦りで歪んでいる。

「何だと!?」

豪三郎が、怒りの声を上げた。その声は、料亭全体を揺るがすほどだ。

「黒幕の政治家たちが雇った地元の愚連隊が、商店街を襲撃したようです! 店主たちが何人か怪我を……」

その言葉に、私の頭に血が上った。卑劣なやり方だ。私たちの会合の隙を突いて、街を襲うとは。

「卑劣ですわ! こんなやり方、ぜったいに許しません!」

私は、怒りに震える声で叫んだ。私の手は、怒りで震えている。

一方、アカリもまた、怒りをあらわにしていた。彼女の冷静な表情が崩れ、その瞳には、激しい怒りの炎が燃え上がっている。

「商店街の人を傷つけたら、神宮寺組として黙っていられない。この悪質行為は、神宮寺組主導ではないことを強調するわ!」

アカリの言葉に、私は驚いた。彼女もまた、この事態を許せないと思っている。彼女の言葉には、この街の人々を守ろうとする、強い意志が感じられた。

「神宮寺の嬢ちゃん、お前もそう思うか!」

豪三郎が、アカリに問いかけた。

「ええ。この街は、私たち神宮寺組のシマでもある。この街の人々を傷つけることは、私たちへの侮辱に他ならないわ」

アカリの言葉に、豪三郎は満足そうに頷いた。

こうして、私たち二人は、図らずも“不本意ながら同じ敵を討たねばならない”という共通の目的を得たのだった。

前世では敵同士だった私たち。しかし、この現世では、共に戦うことになるのかもしれない。運命の皮肉に、私は小さく息を吐いた。

「タツヤさん、組員たちに指示を! 商店街へ急ぎますわ!」

私は、タツヤに指示を出した。タツヤは、すぐに組員たちに指示を出し、彼らは一斉に動き始めた。

「神宮寺アカリさん。あなたも、ご同行なさいますか?」

私がアカリに問いかけると、アカリは迷うことなく頷いた。

「当然よ。この街は、私の街でもあるのだから」

私たちは、共に料亭を飛び出し、商店街へと向かった。

夜の街を、私たちの足音が駆け抜ける。

この街を守るために。

私たちは、今、一つになる。

私の心の中で、新たな絆が芽生え始めていた。

それは、前世の因縁を乗り越え、この街の未来を切り開くための、確かな絆だ。

私は、アカリの横顔を見た。

彼女の瞳には、私と同じ、この街への思いが宿っている。

私たちは、きっと、この戦いに勝利する。

そう、確信した。

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