それぞれの答え ENDING
事件が解決して気付くともう夏休みを迎えようとしていた。
真守は養父である田中真先と実父であった大蔵剛造の気持ちを考えて大蔵家を背負っていくことにしたのである。
が、もちろん己のやりたいことはやっていくつもりでもあった。
補の方もこの事件を受けて吾妻利雄も思うところがあったらしく真実を補に告げた。
由利子夫人もそれに反対することはなかった。
が、補はさっぱりと
「でも俺はやっぱり俳優が好きだし、争いの種を巻きたくないから」
異母兄弟に全てを譲るよ
と答え、今まで通り明らかにせず暮らしていくことになった。
それぞれの立場のそれぞれの答えを出したのだ。
冬里六花も東京や東都大学の生活に慣れ、懸命に本を読みつつ時々六月に連絡を入れながら実の父である七月とも夕食を共にしたり親子の交流を行っている。
同時に今後の事を考えるようになっていたのである。
六花が東京に来てから書いていた考察と先日書いた小説は教授から高い評価を受けた。
葵や補はいっそのこと
「「探偵兼小説家になったら?」」
と言ってきたのである。
が、六花はそれに
「私はやっぱり推理小説の研究者になって推理小説の考察とかエッセイとか書いて行きたい」
とカッと目を光らせて答えた。
「だってお父さんに素敵な推理小説を届けるのが私のやりたい事だから」
葵は呆れたように
「って、唯の父親が顧客の営業じゃん」
と告げた。
「けど、それも本にして出せば印税で生活できるかもしれないな」
経営は任せろ
真守は冷静に
「というか、政経なら分かるだろ需要と供給」
とビシッと突っ込んだ。
補は笑って
「じゃあ、俺が宣伝するよ」
と告げた。
「それに推理小説とかも時々書きなよ」
書いたら映画にするとかもできるよ
「俺、六花ちゃんの書いた小説の映画の主演したい!」
六花は笑むと
「そうね!時々なら」
研究しながら小説も書くわ
「考えたら新しい推理小説ジャンルを作ったらお父さん喜ぶかも」
と告げた。
葵は腕を組むと
「よし!俺も頑張ってコンサルティング方面でバックアップするか」
真守さんはITの方な
「サイト作成とか頼むぜ」
とビシッと告げた。
真守は深く息を吐き出すと
「はいはいはい」
と答えた。
補は笑って
「じゃあ、4人の矢で推理小説マンションチームだね」
と告げた。
その時背後からオドロオドロしい声が響いた。
「補君…撮影…あるから」
今日の会話はそこまでで
そう言うと唐沢真司が最近すっかり慣れているらしい補の首根っこを摑まえると引き摺って行った。
六花も時計を見ると
「私も大学行ってきます」
と立ち上がった。
葵は笑顔で
「行ってら~」
俺は2コマ目からだから
と見送った。
真守も笑顔で
「気を付けて」
と送り出した。
六花が出て行った後に覆面パトカーがやってくると本郷が姿を見せた。
「あれ?六花くんは?」
2人は同時に
「「大学にいってます」」
と告げた。
本郷は敬礼すると
「了解」
と立ち去った。
葵は笑むと真守に
「六花ちゃんが推理小説エッセイストになるのと探偵になるのとどっちが早いか気になる」
と告げた。
真守は冷静に
「探偵に今日の夕食を賭けようか」
と答えた。
葵は笑うと
「賭けにならねぇ」
と肩を竦めた。
明るい日差しが射し込み穏やかな日が流れていた。
推理小説研究者の探偵模倣