いざ対決…だよね?
7回にいた敵を全て叩き、本丸の元への向かうのですが…。
ろっ…ロープ?
一向との戦闘を終えて2人は魔神の住まう5階を目指して進撃していた。
7階からロープを使って降下するという、レンジャーらしいと言っても過言ではない突入方法を用いる計算でいた。
7階から5階までロープにて降下し、ピッキングで窓を開錠しそのまま突入する。
無茶苦茶といえば無茶苦茶だが物損を起こさないように、且つ大胆に相手の懐を突く。
「ほな先に行くでぇ〜」
「おっ…おう…おう」
「えっ、高所恐怖症だったっけ?」
「いや、瑠香の肝の座り具合がすごくて引いた」
「…」
ハーネスとロープに異常がないことを確認して、軽く息を吸い込んだ。
準備終えて瑠香は白の外へとロープを軸にし、窓の淵に足を掛け7階下の地面に正対した。
後は7階下まで降りていくだけだが、いくら待っても忍が左隣立つことはなく突入できずにいた。
早くこないかと不意に左を見た。
ガッチガチに固まっているのですよ!
「高所恐怖症やないかい!」
「心の準備がぁぁ」
「そんな時はどうするか知ってる?」
レンジャーと叫びながら降下すればいいんだよ!
お前は何言ってるんだと言いたかった。
いつの間にか、距離を詰め寄られ忍の背中をきつく叩かれて驚いたと同時に5階に向けて降下していた!
耳元で聞こえる空気を己の体で斬る音。
景色が一気に変わっていく感覚。
何より足が城の壁を蹴り進んでいるような錯視。
口から漏れ出ているのは声にもならない悲鳴だ!
ぶつかる!
と思った時には体がグンっとしなるような衝撃に襲われる。
そっと目を開けると、瑠香と城内に入った時に魔神が立っていたであろうバルコニーと目測にして3メートル上の方で静止していた。
そして自分でも気が付かないうちに、左手の拳の中に降下用ロープがきつく握りしめられブレーキとなっていた。
「はぁ…ひっはぁ…ふぁ!」
「レンジャー財前到着!
…やればできるじゃん」
「後で…説教…だからな…
覚えて…いろ…ふざけんな…」
「すごいね2人とも…
この地に来てもう500年は経つけど初めてこんなの見たよ
レンジャーだっけ?
とりあえずそんなところにいないで降りてきなさい
歓迎するよ!」
2人が小競り合いを始めた瞬間に声が聞こえたのか。
それとも声にならない悲鳴を聞いて見に来てしまったのか。
魔神なる男がバルコニーから外に出て、頭上にいる瑠香達を見て驚愕してしまっていた。
歓迎するとは言っていたがその顔には、
嘘でしょ?!
と言いたげに書いていた。
2人が体勢を立て直し、バルコニーに降下し終えると魔神は2人を自室に招き入れた。
「すっすご!」
「西洋諸国の城というべきか
美しきかな」
「気に入ってくれた?」
((というかこの人イケオジだな))
グレーの髪をオールバックにまとめ上げ、整った眉にすっと伸びる鼻筋。
背丈は190はあり、その背丈が影響してから牧師がきているローブを纏い裾には白いストライプが入っている。
「2人は紅茶はいける口かな?
僕のオリジナルブレンドなんだけどね」
((好きが跳ね上がる、神様がこの人!))
お互いに目を合わせて、ハーネスにつけていたカラビナからロープを抜き警戒しながら案内された部屋へ入る。
白を基調とした部屋に、この城から見える景色を模写した油絵が飾られ、白木のテーブルの上には鮮やかな青いクロスがひかれ、ケーキスタンドにはケーキやクッキーにスコーンらしいものが並べられている。
「なぁ瑠香、俺たちとんでもない相手」
大変申し訳ありませんでしたァァァァ!!!
「へっへぇ?!」
「…はっ!
大変申し訳ありませんでしたァァァァ!!!」
忍は気づいてしまったのだ。
瑠香がスライディングジャンプ土下座をしたのを。
その意味が自分達の目の前にいる王の存在を。
最初は喧嘩をしかけた我々が、魔神という王の存在を。
いくら温厚そうに見えていても、2人の行動は器物損壊や傷害罪なんてものじゃない。
いくらなんでもやりすぎたと2人は猛烈に反省していたのだ。
「ふっはははは!
いやいや痛快だったからいいものを見せてもらえたよ
気にしないでほしいな
僕はアルバス・アストライオス
アルメリア皇国をまとめて…ねぇ聞いてる?
お願いだから頭をあげてよ!」
2人が土下座の体制を崩して、話をきちんと聞く時間はかなり経った頃だった。
椅子に座り緊張する2人と、少し困り顔のアルバスの珍妙談話が始まって行く。
だか魔神アルバスの顔にどことなく影があるのを察したのを。
最初に気がついた瑠香の反応を見て、魔神は席を立ち瑠香達の突入したバルコニーに立ち、くるりと振り返って問いかけたのだ。
「君たちの力を見込んで言わせてくれないか?
僕の娘を…ルーシー・アストライオスを捜索・救助してほしい!」
魔神様の心がとてつもなく寛大でございました。
なんと紅茶まで用意してくれていたようです優しいです。
7階から5階までロープを使ってダイブというか降下したのです。
忍は怒ったみたいですけどね。
魔神様のお願いはとても切羽詰まっていました。
次回もお願いします。