父親の復讐劇
大切なものを傷つけられて怒り狂った父親の後を追いかける様に、子供が大災厄と立ち向かうために捜査します。
「やっぱりニコルの言ってた通りだよ
迷宮が街にできたら、普通は結界を張って魔物が出てきても結界から出られないようになるはずなのに結界が思いっきり壊れてた
壊れていたよりも壊されていたわ」
「ニコルねぇさんが言うなら本当だわ
結界石と封印柱が外側からぶっ壊されてた
なんとなくそんな予感はしてたけど
こんなオーバースペックな結界を張れるのは1人だけ
何がどうなってしまったのか教えてください
組合長」
療養院での事件の後、忍を抜いたほぼ全員で会議をしていた。
その名も特定指定害獣討伐対策会議。
よく刑事ドラマで見るような捜査会議が始まっており、各人で持ち合わせた情報をもとにコカトリスの討伐及び、迷宮にかけられていた結界の再構築を軸にした会議が始まっていた。
アリシアとティナによる迷宮付近を捜査したところ結界石や封印柱がメッタメタに破壊されている現実が浮き彫りとなった。
『魔物が這い出てくるなんてあり得ない
何度もいろんな冒険者パーティに混じってきたからなんとなくわかるんだけど
もしかして結界がぶっ壊された?』
瑠香を看病しながらふとニコルが思い出したかのように、ポツンと呟いたのが始まりだった。
マリウスは首を傾げて不思議そうにしていたが、ニコルの発言でウルムやアリシアのレーダーに何かが引っかかった。
回復ポーションを嫌がる瑠香に無理やり、お尻の穴から突っ込むぞと圧をかけていたティナもニコルの言葉を聞いて手を止めてポーションの入った試験管を叩き割って気がついたのだ。
『ぼ…僕も聞かないとダメ!?!?』
冒険者達の対応に追われるセドに、すごみをかけて瑠香の病室に無理やり連行する5人。
さながらどっちが自由業かわからない大⚪︎府警の警察官を彷彿とさせる姿に熱でうなされていた瑠香は笑い転げていた。
そんな笑いもティナと療養院の婦長によるダブル座薬攻撃によって鎮静化されてしまう。
「セドさん…裏は取れてるんですよ!」
「ひっ…ひぎぃ!」
「なんでマリウス、スーツ着てテーブル叩いたの?
ここって取調室だっけ?」
「洗いざらい吐き出してスッキリしろよ?」
「なんでニコルも乗ってるの?
ちょっ…ティナはなんで供述調書を取ってるの?
ウルムも、アリシアも、なんで誰も止めないの?
また笑いが込み上げてきた
私、一応病人…ぎゃぁ!」
「座薬たーっくさん入れてあげるね!!」
心配でやってきたエルフのネロ率いるマッスル5人組が病室を訪れたがすぐにドアを閉めた。
コカトリスの呪いによって高熱でうなされている陸自娘を見舞いに来たが、収拾のつかない現場を見て黙って帰ろうと話し出す。
「親分、多分俺たち捕まりましたよ」
「なんだって?」
こそこそと話し合っていたが、エドガーが扉を指差し異変に気がついたネロがドアを見た時、全てが遅かったと後悔する。
見られたと気がついた暴走モード4人組がマッスル軍団を無理やり病室に連れ込み、作戦会議という名の取調べに無理やり同席させたのだ。
肩にタリタウス山を乗せていると自他共に認める肩トレーニーこと、オーガのボリスは肩の筋肉を最大限隆起させ、強行突破で逃げ出そうとするもニコルの吐く冷たい吐息に身がすくんでそのまま動けずにいた。
「まあ役者は揃ったってことでいいっちぃぃぃ
今回のこと全部洗いざらい履いてもらおうか
セドさんよぉ!」
「…なんで…取調べ…してんの」
「ぴぃぴぎぃぃぁ
僕は、僕は悪くないぷくぅぅ!!」
(((((昔からセドは強いやつに頭が上がらない
本当に古の鍛治氏といわれた森人種か?)))))
「ウル吉、そんな風にセドさんを脅しても怖がられるからやめておきな!
でもセドさん、本当のことを言ってくださいね!」
「うぅぅ…」
アリシアが分厚い冊子を全員に配り終えると、苦虫を噛み潰したかのように話し始めた。
今回のコカトリス討伐に際して、そもそも誰が迷宮の周囲に結界を張っていたのか。
そもそもこの結界がオーバースペックであり、過剰すぎると話し始める。
「この結界は3重にはられている大結界
一つの結界に500の層からなる防護結界
どんな属性の攻撃をも吸収して通さない
仮に1層目が壊れても」
「残りの2層が対処する…ね」
「瑠香姉さんすごい察しがいい!」
「そしてこの結果を貼った張本人だけど
そもそもこの結界は大魔法級
一級魔法士の中でも上位数人ができるかできないか」
「アリシアや私でもできない
封印柱や結界石を置いて、結界を張って馴染ませるのに一年かかる
1人ですぐにはできない」
その言葉を聞いた瞬間に全員の表情が固まる。
迷宮ができたのは数週間前、それに合わせて大結界を張っても一年かかるならすぐに任務は開始できない。
それをすぐにできてしまうほどの魔力を持つのはティナが思い浮かべるのは1人だけだ。
「ここに来たんですよね
嫌なものを予感して、海星府からやってきて、大結界を張って最終階層にいたそいつを弱体化させ出てこれないように
本当に怖かったのは…最終階層にいる魔物であるコカトリスではなく本当の力を持ったそいつですよね
本当のことを教えてください
セド組合長」
「その通りです
この街に、鍛治府に来た時と同時に対処してくださったのはルーシー・アストライオス皇女様です」
ルーシーが鍛治府にやってきて、所掌の用事を済ませ次の街へ移動しようとした時だ。
旧神殿から異常な魔力を感じ取り大結界を張った上で、それをコカトリスという幼体にさせてから封じ込め鍛治府を出発した。
だがルーシーの計算よりも早くコカトリスは動き出してしまった。
未踏破の迷宮だが魔力や邪気が弱ったことにより、多くの冒険者達がやってきた。
だが回復するスピードが早く、失せたはずの魔力を取り戻し、旧神殿やタリタウス山からくる神威に近い魔力の影響で回復の歯車が早まったのだ。
その頃にルーシーの失踪も相まってさらに収拾がつかなくなってしまい、緊急任務を発動。
治安が悪くなってきた頃に、瑠香達がやってきて今に至るという。
「ルーシー様はこの事を予見してたのです
ここを出て行かれる際に、『門の一族に得てきます』と言って出発されていきました
この国で1番最高峰の結界魔法を扱える一族ですから…」
「じゃあ…あの迷宮にいた最終階層の魔物ってなんだったんだっちぃ?
コカトリスじゃないなら何がいたんだよ?」
「そう言えばここの療養院の先生
動物や魔物の検案書も書けるんだ
その人が言ってたけど、この前の蛇は確かにコカトリスの尻尾の一部で合ってるって
でも雷みたいな電流で切り裂かれた傷があったってさ」
全員が頭を抱え始めたが、セドの気の抜けた発言のせいで文字通り迷宮入りし始めた。
だがセドの一言で、瑠香はふと思い出していた。
走って組合に逃げるゴブリンの叫び声や旧神殿の石柱に登っていた姿をふと思い出す。
病室でぼーっとしている時にティナの魔獣大辞典を勝手に読みふけり、辞典に載っていたコカトリスの姿と完全に異なる。
翼はワシ、馬のようなしなやかな前足と虎のような筋肉質な後ろ足。
頭は鶏だが尻尾は蛇と蠍のような毒針のような尻尾と竜の尻尾があった。
「…あれは確かにコカトリスだった
でも暗くてよく見えてなかったんだ
でも思い出したよ
あれはコカトリスって鶏の化物じゃない
いくつもの動物が混ざり合った何か
私が逃したらまずいと思って雷撃を撃ったんだ
当たらなかったからダメかと思ったけど…
あれはまるでキメラだ」
「…みんなごめん、俺の中で全ての辻褄が合ったよ
魔物は呪いのスキルを持ってない
でもいろんな獣を無理やりでも組み合わせたら?
そんなことができる最低な奴がいれば?」
「マリウスさん、それまずいよ」
「ニコル…私もなんとなく嫌な考えが出てきた
あの蛇の頭から紋章のついた木札が出てきたでしょ?
もしかしてエストラゴの人間がけしかけた?」
「ティナ…まずい…忍の命が危ないっちぃ!
忍は1人で全部片付ける気でいる!
キメラって生き物だとしたら、呪いの類が使えるなら…」
「まあ、俺の目論見通り
帰巣本能って奴だろうなぁ
クソデケェ鳥野郎かと思ったが、昔見たあの爆撃機と似たところか?」
忍は山間の獣道を通り、迷宮もとより旧神殿のそばで羽を休めるキメラを山の中からキツく睨むように監視していた。
何度も冒険者達がキメラに挑むが毒や猛攻に耐えきれず敗退していく姿を見て、この迷宮にいると踏んだのだ。
ようやく見つけたことに安堵したが、忍自身もあまり状態が良い方ではなかった。
思ったより呪いの影響で、身体中から激痛が走り時より体から傷ができ血が滲んでいた。
「呪いを受けるくらいがちょうど良いわ
俺の死ぬ間際くらいの痛みと熱さだなぁ
良いぜぇ、1人義烈空挺隊…いざ参ろうか!」
復讐劇が幕を開け、忍の目には再び白目は黒く濁り虹彩には濃い青い瞳になり、うっすらと六芒星の白い模様が浮かび上がる。
身体中から黒い雷を纏わせ、キメラに立ち向かっていった。
忍がいなくなってしまいましたが、なんでこうなったのか捜査が始まりました。
全てがおかしいことに魔法を使えるティナやニコルは勘付いたのでしょう。
そして裏をとるかの様にアリシアが捜査を始めました。
結果として大結界魔法を発動し、中にいた魔物を弱体化させたのはルーシーです。
そして、弱体化したならばいけるのだと安直に考えたセド。
ですがコカトリスはすぐに回復し、元々の神力が宿っていた場所にいたことで力を増幅させた様です。
普通の魔物では到底できない呪いというスキルを持ち合わせていたのはマリウスのいう様にキメラ化されたことが原因です。
犯人はアルメリア皇国の敵対国であるエストラゴ共和国です。
次回は忍の全力攻撃が行われます。
もう特⚪︎に近いです。
さてこれを止めれるのか…次回もお楽しみに




