潜入戦
無事に潜入して城中に潜入します。
これから城主の元へと駆け上がっていきます。
「なんとか潜り込めたね」
「不意打ちどころの問題じゃないな
幹部らしい人間を撃ち抜いてすぐにまた水路に飛び込んで
今じゃあ城の中に入ったってことか?
今頃外の兵隊蟻どもが騒ぎ立ててる頃だろうぜ?」
「せやなー」
(この曾孫娘…本当に親父の教育の影響を受けすぎだ!)
瑠香達がいるのは城の地下道を抜け、城の2階のエントランス付近。
ちょうど最初に潜入した入口の反対側にいる。
瑠香が撃ち抜いてしまった敵が倒れてすぐに水路に逃げ込み、庭園の入り口から走ってくる衛兵達を観察しながら城の中へと潜入したのだ。
地下道から出てくると途中の通路に散りばめられたステンドグラスや大理石の壁の美しさに心を奪われる。
傷つけずに魔神なる者の所まで到達しなくてはならない。
面倒ごとが多いと感心しない忍を制する様に瑠香は立ち止まり額をつける距離で耳打ちを始める。
「ねぇ忍さん、お願いがあるんだけど?」
「なんだい?
瑠香の頼みならなんでも聞くよ
言ってごらん?」
「この潜入戦…ううん、特殊戦は私が死んだとしても対象のところまで行って倒して
それがこの城の中で私たちが足掻いた証拠になる」
「特殊戦…その言い方俺は大嫌いだよ
真は得てるけどそれは違う
でもわかった
それよりも…俺たち進みすぎたみたいだね
目の前の壁を左に曲がったところに、弓矢構えてる兵隊がウジャウジャしてるよ
無力化よろしく」
「ん?
じゃあ私達の6時の方向から追尾してきてるドローンの対処よろ」
壁の際まで近づき一挙に向かうべく先の敵情を観察する。
敵は弓兵であり横隊で弓を構えて出てきた瞬間に射殺そうと殺気を滲み出していた。
忍が気が付いたのも無理はない。
いかにも今から撃ち抜きますよと言いたげに列を成しているのだ。
向かう先の通路は今まで通ってきた廊下よりも狭く弓兵を携えるには不向きだ。
だがそうするのは、魔神なる王の元へと到達させない様に、敵を誘導していると瑠香は踏んでいた。
「めんどっちぃからあれ使うか…
ちょうど賞味期限切れしそうになってたし」
「…やってみますかな」
『団長…敵の姿が見えません!
私たちはいつまで待てばいいのですか!』
『相手はもう私たちのことを察知したの?
みんなもう少しの辛抱だ!
敵はここを通って…!?』
目の前に転がる金属製の筒が転がり、緊張から誤って引いていた弓を離してしまった。
何を!
と声をかける前にキンッとつんざく破裂音に濛々と煙をあげ次第に何も見えなくなっていた!
ツンざつ金属音が聞こえなくなると同時に弓が一斉に放たれ空を斬る音に変わる。
しまったと思ったがもう遅い。
自分の目の前を蒼い閃光が凄まじい速さで駆け抜けていく。
短刀を構え突き立てようとした時には、目の前に青い瞳が捉えていた。
『あっ…』
手元からするりと短刀滑り落ちそうになった時、意識がプツンと途切れてしまった。
ぐらりと足の軸が抜けるように倒れそうになる刹那に
ぽそりと
ごめんなさい
と単語と言えばいいものかが聞こえた気がした。
最後に捉えたのはどこか懺悔に似た憂いのような表情だった。
その言葉の意味がわからなくとも謝っていたのだと。
それ後のことは覚えていない。
「…オールクリア
敵の脅威なし、全ての無力化を確認
しばらくすれば目を覚ますからその時は別の方からお暇させてもらおー!」
1人また1人と倒れ伏す敵兵の安否と無力化を確認する。
そっと倒れる敵兵の肩に手を置き、呼吸の確認の外傷の有無を調べ始め最後に敵兵の大将であろう甲冑を着た女兵士の顔を見るように片膝をつき眺める。
素直に綺麗な金色の髪と整った目鼻立ちに見惚れてしまっていた。
「なまら美人」
「やっぱり瑠香が恐ろしいわ
あの試験を受けて合格しただけある
我が曾孫息子といい娘といい、げに恐ろしきは血縁か」
ぎくぅ!
なんて擬音語がピッタリ似合うように体をびくつかせ、顔を引き攣らせながら自身が突入してきた左後方をゆっくりと振り返る。
そこには気まずそうに右半身を預けて、右手には拳銃を左手に何かを乗せるように持つ忍がいた。
瑠香の戦闘中にドローンらしきものを撃ち落としていたのだ。
戦闘の後なのだろう何かガラスのようなものが砕けて散っている。
「あっははぁ、それは言わないお約束…
あっ、ドローンの方はどうなった?」
「どろーんかどうかといえばわからんが…
可愛らしい虫が何かを運んでたぞ?」
「むーしー?
…わぁい、ナナホシテントウムシだぁ!」
(本当に瑠香は女学生だったのか?
もう、お父さんどうしたらいいんだ…)
左手に乗せられたその正体は、手のひらにすっぽりと収まるほどのテントウムシだ。
だが日頃見るようなテントウムシとは異なる。
図体があるのはもちろんだが、とてつもなく愛くるしいずんぐりむっくり感なのである。
それを肩に乗せてさらに進もうとするから、呆れを通りして恐怖心のようなものを感じざるを得ないのだ。
その恐怖心は砕け散ったガラスのようなものに対してもだ。
弓兵の緊張を煙幕を使って揺動をかけました。
視界が見えない中、共倒れを起こしました。
団長と言われる人間の采配より上を瑠香が超えました。
忍の言うあの試験とはまた今度に。
次回もお願いします!