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似たもの同士

ルーシー目が覚めたってよ。




「あれここは…知らない天井だわ!!」



目を覚ましたのは見知ったはず景色ではなく、どこか消毒薬と清潔感で溢れかえった場所にいた。




(ここは練馬で言うところの療養院かしら?

と言うことは、魔力切れを起こして運ばれたの…ね)




ルーシーが目を覚ました時、ふと閉められたカーテンの向こう側から漏れる月明かりに目をやる。

長く寝込んでしまったのだと感じ取っていたが、月明かりに照らされてふと地面に何かが寝そべっているのに気がつく。

じっと目を凝らせば、そこにいたのは村上や天城。

そして1番のお母さん枠と自負する向井の三人が寝袋の中で眠っていた。




(みなさん…どうしてこんなに

異邦人の私に、どうしてこんなにも!?)




部屋を抜けて優しさに浸りながら、優しさと暖かさに涙が溢れて気がつけば療養院の端の出口から抜け出していた。

涙が溢れ気がつけば、頭がぼーっとするほど考え込んでいた。

だが優しさに満たされすぎたが故にルーシーの心にはどこか悲しみのようなものが溢れかえっていた。





「あれ…屋上に誰かいる?」




飛翔魔法(ウィングアップ)と唱え、屋上にふわりと飛び上がる。

屋上の手すりにもたれ鼻歌を歌いながら、前に飲んだコーラを嗜みながら男が気持ちよさそうに座っていた。






「あ…あのぉ?」


「こんな夜更けに彷徨うは、何処の娘さんかな?

目が覚めたようで何より

三日三晩寝込んでしまっていたので、私としても不安でしたよ

ルーシー・アストライオスさん」


「田中1佐様?」


「様はつけなくてよろしいのですよ

まぁなんです…少し月でも見ていきませんか」


「月ですか?」







東京の月は昔はよく見えたのになぁとぼやく田中の言葉に驚きを覚えたが月が見えなくなっている原因が、東京の街の明るさなのかと思えば合点がついた。

田中から何かを手渡され、匂いを嗅いで少し不思議そうに見つめる。





「毒じゃありませんよ

それはハチミツ飴です

ハチミツと喉に優しい成分を含んだ飴玉です」


「ハチミトゥハチミトゥ!!」


「ふふふ!

孫娘を見ているようだ

これも何かの縁なのかもしれませんなぁ」





それからはたわいもない話をした。

学友のこと、父親や兄のこと。

アルメリアでは魔法が盛んだが、日本では科学という未知の領域が主流であること。

そして何より、もう一つの家族を見つけられて幸せであるということ。




「家族か…いいなぁ

そう思っていただけたのならジジイも嬉しいですよ」


「そう言えばどうして田中様はご自身のことを

その…おじいちゃんと言ったりするのですか?」


「私自身も曰く付きなのでね

後は年寄りだからということにしておいてくださいな」


「えー?」


「はっはっは

どこかイタズラ心を働かせるのは、孫娘(るか)と重なって見えますなぁ

なんとなく貴女がここにきた理由がわかるような気がします」





田中の目が夜空に向けられ、つられてルーシーも空を見上げる。

数多の星は見えずとも、月は美しく輝きほんのりとあたりを照らす。

不意に見た田中の表情にはどこか寂しさのようなものが滲み、瑠香なる少女のことを憂いていた。




「あの子も貴女と同じ、ふとした時に現れたのです

この前見た化け物が日本中に放たれようとしていた事件がありましてね」


「え?」


「我々の国では、なんらかの方法で国内の治安を破壊することをテロと言いましてね

化け物を使ったテロがあったのです

その首謀者に瑠香は命を狙われたのですよ」





田中の口からはとても平和な日本とは想像もつかないような凄惨な話であった。

瑠香が幼少期の頃、実母はテロ首謀者の策略によって殺害され、家族が離散してしまう。

そして16になったころ、学校にて勉学に励んでいたところ活動が活発になったテロ組織の構成員に連れ去られそうになったのだ。

その構成員こそ練馬にいる自衛官達の闇の一部となった化け物。




「それからは大変でしたよ

本来なら我々の世界に来ることがなかったのに、身を守るために練馬に生活を余儀なくされた

でもテロ組織は解体されました

あの子が突破口を開いたのです」


「そんなことが」


「ルーシーさんもあの子に似ていると思ったのです

突然やってきて本来なら困惑するはずなのに受け入れ

見ず知らずの同胞を助け出した」


「それは、そうやらないと私の信条が壊れるからです

大切な人を助けたかったので」


「やはり貴女は似ている

似たもの同士の負けず嫌いで、自分の信条を大切にする人

それがかっこいいですよ

決定的に違うのは、貴女は全てを包み込んで守ろうとする

あの子は近づけまいと、自分の背中に回して守ろうとする」




いつか出会うことがあればきっとわかりますよ。

そう言われて三度田中は空を見上げる。

ルーシーも自分の性格を見抜かれていたことに驚いたが、いつの間にか溶け込んでいたことに幸せを感じていた。

理解している田中にも、理解した上でどんな自分をも受け入れてくれる練馬の人たちも。



(やはりこの場所に迷い込んでよかった

大切な人達がまた増えていく)





別れる寂しさが増すことはなく、もう少しここで自分を探してもいいのではという気持ちが芽生えていた。

全てを包み込むように夜風がふわりと吹き抜けていく。

自分の覚悟や背中を押してくれるかのように。

がんばれと言っているような気がした。

だが無情にも別れの時間はやってきている。

それでも今が特別に楽しくてたまらない。



「そう言えば私の事が怖くないのですか?

さっきみたいに空を飛んできたりしましたけど?」


「いいえ、全く

うちの看板鶏と普通に会話しているのを見てなんらかの力を持っている人なのだと思いました

うちの駐屯地にいる人間も、みんな別に怖がってませんよ?

どうやって入ってきたのかは気にしてましたけど」


「そうなんですか?」


「はい

みんな魔法が使えるから入ってきたんだなって言ってます

駐屯地の全員がルーシーさんは魔法というものを使う

って認識です」


「適応能力高い」




「「ねー」」




適応能力の高さに驚きつつも、遠くから見れば親子の会話にしか見えない。

そんな光景を警備で見回っていた自衛官達は気がつき屋上を指差しながら笑って何事もなかったかのように過ぎ去る。

気がついていたルーシーと田中だがお互いに笑い合い、少しだけ夜更かしをするのであった。

ルーシーと田中源一郎1佐の雑談です。

ルーシーは練馬の人が自分を怖がっているのではないかと不安だったようですが吹っ切れたみたいです。

そして田中はルーシーと行方不明の瑠香が似たもの同士だけれども人を守るスタンスの違いを見抜いていました。

似たもの同士ですが違うことをわかっていたようです。

どちらも大切にしたいとそう思ったのでしょう。

でも別れの時は近づいています。

やはり故郷が呼んでいるのです。


次回は練馬編最終話。

次次回から新章突入します。

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