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練馬騒動

ルーシーと財前誠が出会うきっかけとなったお話です。




突然警報が鳴り出し建物中に一斉放送が流れたのは、ルーシーを発見して30秒も経たない。

まさにあっという間の出来事だった。

警報が鳴り響くと同時に、武装した迷彩服の人間が建物から飛び出し捜索をはじめる。



「まずい

この人達はこの国の兵隊さん達だわ

と言うことは軍事施設に入ってしまったの?

あのキリがそんな効力が?」



キリの中に邪悪な魔力のようなものは探知していたが、魔物のような物を探知できずかと言って目の前に広がる世界を探知できなかったが、魔力はなくとも少なからず人を探知することはできていない。

袋小路に迷い込んでいたのことに気がついて体の震えが止まらず膝を抱えて座り込み、泣きそうになりながらも心を落ち着かせようと必死になる。



「こんなはずじゃぁ

こんなはずじゃ」


「こっこっこっ…?」


「え?」



パッと顔を上げ声の主の方をチラリと見る。

そこにいたの白黒マダラ模様の鶏がいた。

軍事施設で動物がいることに驚き、さらにはその動物が鶏であることに驚く。

アルメリアの鶏にしてはひとまわり小さいものの、猛禽類に似た目つきと鶏らしからぬ雰囲気に気圧される。

だがこれを好機と踏んで、ルーシーは鶏に使役魔法(テイム)をかける。




「私の声わかる?」


「わかるも何も、通じてるよ?

…君はどこのチュウタイの人?

ネリマじゃ見ない顔だけど

その服装は自衛官じゃないなぁ?」


「私はルーシー・アストライオス

魔神族なのだけど…

お父様の命令で仕事をしていたらここに迷い込んで

どうしたらいいかわからないの…」


「あー

俺は難しいことわからないからよ

とりあえずお父ちゃん所に行こう

なんとかしてくれるはず

と言うかネリマ中の隊員(ひと)が君を探してる

まぁついておいでよ」




言われるがまま鶏はテクテクと歩き始め、ルーシーをどこかに誘う。

何度も瞬きをしながらルーシーは、鶏の跡を追いかけて施設の中を右へ左へ。

時に背を低くして施設の窓から隠れるように歩き進んでいく。

ルーシーを探す声や怒号らしい声は聞こえてくるものの、誰とも会敵することなく中枢施設と思わしき建物へと近づいていく。




「すごいだろ?

ここはネリマチュウトンチにあるダイイチシダンって建物なんだ

名前言い忘れてたな

俺はネリマピヨスケ

階級はニトウリクソウ

君は…ルーシー・アストライオスさんだろ?」


「そう…です」


「お父ちゃんも事情を話せばわかってくれるよ

ついたぞー」




ピヨスケなる鶏がダイイチシダンと言う施設に入った時、ルーシーの肌に触れる空気が一気に冷たくなっていく。

何も考えずについて行ったまでは良かったが、ここは敵の中枢であり核となりえる場所。

そこに考えもなしにホイホイと付いて行ったのが間違いだったと今になって思い始めたのだ。

お父ちゃんと呼ぶ声が遠くに聞こえ、重そうなドアが開いて固唾を飲み込む。

現れたのは背丈は180ほどで、ほど良く引き締まったイケおじが立っていた。



「こら!

今お父ちゃんは作戦中だって言ったんべ?

お部屋で待っておきさんしょ…

貴方は…どこから…!」


『あっ…あの、私はルーシー』


「お父ちゃん…この人多分アメリカの女の子だよ

髪の毛は淡い金の髪

目鼻立ちクッキリ、色白の青い瞳

アメリカのチャンネーだよ』


「…どこで覚えたその言葉!

そんなことよりも!」






男が気がつくころにはルーシーは建物の中をひたすらに走っていく。

男が呼んだ兵隊達によって捕まりかねない。

捕まれば有るのはと、考えたくない考えだけが頭の中を駆け巡り頭の中が段々と白くぼんやりとした渦の中に引き込まれて息ができなくなっていた。

自分が今どこにいるのか。

何をしようとしていたのか。

全てがキリの中に迷い込んで逃げ道を無くして袋小路に迷い込んでしまっていた。




「殺される

殺される…私はここで、殺される

異邦の人間を許すほどこの人たちはきっと

きっと…きっと…」





ルーシーがルーシーでなくなる。

自分の目の前に広がる明るい闇が迫りくる。

早鐘を打つように心臓が激しく叩きつける。

全てが自分自身の体を押しつぶす壁になって感じたことのない痛みが全身を覆っていた。

もう無理だと何度も巡っていた時。

目の前に人が現れたことに驚き、避けようとしたが蹴つまづきそのまま倒れ込んでしまった。





「いったた…失礼いたしました!

じゃなくて早く逃げなきゃ!

…お父様?」




『…』




体を起こし倒れた拍子になだれて倒れた正体に見つめて固まってしまった。

今まで出会った兵士らしい人間達は皆、緑や茶色に黒と奇怪な模様の服を纏っていた。

だが目の前に倒れていた男は薄いクリーム色のようなシャツに金色の線が入った紺色のズボンを履き、シャツの両肩口には星が三つほどつけられている。

驚くべきはその顔立ちだった。

自分の父親によく似ており、違うのは髪型と色。

それに透き通るような琥珀色の目。



「お父様…お父様?」


『…ぁぁ

まさか、そんなはずは

だが君は俺の娘にとても似ている

まさかさんなはず

だが…まさかそうなのか』




瑠香?




名前を呼ばれてビクッと反応するルーシーに、どこか思い込むように見つめる。

おそらくこの軍事組織の上位のものだと推察して、どうやってことを切り抜けようか考えていた。

しかし父親に似た存在をみて、家族に会いたいと不安が爆発しそうになる。

ハッと男が気がつきルーシーが走ってきた方向を振り向き、慌ててルーシーを立たせると自分の背中に回るように立ち回らせ隠すように男が立つ。

最初は何をさせようとしていたのか皆目検討が付かなかった。

だがバタバタとやってきた兵士たちに何かを伝えて、退かせようと必死に説得を始める。



(今ならいける?)



男の背中にそっと手をかざし、あらかじめ用意していた魔術札を貼り魔法を発動させる。

恐る恐る見つめ、魔法の効果が発揮されるのを今か今かと待ち望む。

明らかに兵隊達は怒鳴りながらルーシーに近づこうとするが男は冷静に首を横に振って拒絶する。


『彼女は私の娘の友人だ

高校の頃に留学生として来たと来ている

相当のアニメファンらしい

彼女の名前は」


「ルーシー・アストライオスです」


「ふふ

彼女の名前はルーシー・アストライオスさんだ

だがどうやって入って来てしまったのか

探らないといけない

今は皆落ち着いて…持ち場に戻ってくれ

頼む」



男が頭を下げると兵隊達は警戒しながらも渋々後退りを始め、散り散りになって建物から去っていく。

その場にへたり込んで動けなくなってしまったルーシーを見てか男は軽くしゃがみ顔色を伺う。



「手荒な真似を許してくれませんか?

怖い思いをさせて悪かったね…ルーシーさん

私の名前は財前誠

どうして君な言葉がわかるようになったかわからない

だけど、よろしくね」



ここに練馬騒動は終焉を向けたが、騒動の後始末が膨大に残っているのに気がついて勝手にゾッとしている財前誠で有る。



ルーシーが財前誠に出会うお話です。

今回自衛隊の基地ではあり得ない設定がたくさん出て来ますがファンタジーなのでお許しを。

ルーシーは魔法を駆使することができず、己を追い込んで見えない壁に阻まれて逃げられずにいました。

途中で出会った鶏ことネリマピヨスケを使役魔法(テイム)して脱出しようと画策します。


また逃げ回ることによって財前と出会いました。

さらりと書いていますがルーシーにとってはとてつもない時間逃げ回り、騒動が落ち着いて腰が抜けてしまったと思います。


次回はほのぼの回になる予定です。

よろしくお願いします

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