アリシア奪還
アリシア奪還に向けて場内に潜伏したでやんす!
警衛の眼を掻い潜り、6人はアルビレオ城内に潜入していた。
潜入戦において音や匂いなど五感で感じる変化こそ最大の武器であり、弱点になる。
特に瑠香の潜入における異常性はティナやニコルはもちろん。
潜入をやったことのないマリウスですら度肝を抜いていた。
「動くな…アリシアヴェロナーはどこにいる?」
「アリシア…様は…自室で…幽閉されています
どうか…お助けを…」
「味方でしたか
首を絞めてごめんなさい
普通の警衛に戻ってください
ご協力ありがとうございます」
「げっほ!
はぁ…はぁ…いない
それに気配を感じなかった」
建物の裏に隠れてありとあらゆる魔力の探知にティナは集中し、姿が見えないように霧散詠唱を唱えて瑠香の帰りを待つ。
屋根の上に登る忍とマリウスで、アルビレオ城の警備を観察しながら瑠香の行動を確認し、アリシアが幽閉されているであろう地点を探る。
「マリウス、アリシアの気配は感じ取れるかい?」
「なんとなく、天守閣あたりが怪しいかな?」
「ウルム…は相変わらず娘たちを守ろうと鉄フライパンで素振り中かぁ
いいね、最高ダァ」
(このパーティやっぱり頭おかしい)
斥候から帰ってきた瑠香が霧散詠唱で作られた結界に戻り、ティナと斥候で得た情報でアリシアの位置を特定する。
ティナの魔力探知においてもやはり示す場所はアルビレオ城の天守閣付近。
建物の上で見張りと索敵をやっていた忍とマリウスが建物の屋根から降りてきたかと思えば、木の枝を拾ってアルビレオ城の簡略図を書いたかと思えば正門付近に丸をつけて木の枝の先で示す。
「ウォーレンさんや街の人たちが正門の前で抗議行動やってた
リリアさんや、城の警備兵たちがわんさか集まってる
…みんな上手くやってるよ
フェーズ2に移行できるよ」
「「「「「やりやすっかぁぁ!!!」」」」」
アリシア奪還作戦と名して海星府の人々が協力してくれていたのです。
作戦を決行する前ウルムは近衛騎士団の副団長であるリリア・ノーマンの元へ向かいことの経緯を話し、その話を聞いていたウォーレンが何故かノリに乗って街ぐるみで作戦を敢行しようと言い出す始末。
街ぐるみで騒動を起こし、街ぐるみで鎮圧させる。
無視できなくなったジャクソン侯爵の注意をアリシアではなく、街に向けさせてしまうという。
無謀な強力に感謝しつつも、6人は天守閣に向けて走り始めた。
堂々と正門をくぐり青い回廊を抜けて天高くそびえる塔の上を目指す。
「本当…よくみんな協力してくれましたね」
「マリウスの兄貴、顔が死んでるわ」
「だって仕方がないよ…
敵が目の前にいるもの」
階段を上り切り、息絶え絶えになるティナとニコルが顔をあげるとそこにいたのはアリシアを捕縛した黒いローブを纏った5人の魔法使い。
その奥にいるアリシアに近づけまいと、防衛の任務を、任されているのだろう。近衛騎士団庁舎で出会った時よりかは殺気をはらんでいた。
「こんばんは皆さま…
でももうここでおしまい
アリシアの処刑が終わり次第、貴方たちも処刑ね
大人しく捕まってちょうだい」
「相手は魔法士5人
こっちは私1人…いいねぇ久々に荒ぶってみますかぁ!」
「始まりました、一級魔法士ティナ先生の無謀講座
助手としてニコルがつきますからね!
瑠香も手伝って欲しい!
この前見たあの青い雷」
「おかのした
発動させるまで30秒かかるから
その間のフォロー、おなしゃす」
「任せなさい!
忍とマリウスさんは先行してくれたみたいだねぇ
行きますか!」
「何を足掻こうとしてるの?
爆龍烈火!」
「防御しますからねぇえぇえ!」
ティナの咆哮とニコルの高速詠唱の咆哮が入り混じる中、忍とマリウスは階段を抜けて別ルートでアリシアが閉じ込められている部屋へと向かう。
下から聞こえる轟音に耳を塞ぎながら、ウルムはただ3人の安否を気にせず、相対していた敵を心配していた。
3人の本気ほど恐ろしいものはないと身震いを起こしていたからだ。
「ついたでやんす」
「鍵をピッキングして開けるでやんす」
「「でやんす!」」
(元気よすぎでしょ!)
マリウスが驚愕していたのも束の間、2人はピッキングツールを使ってアリシアの部屋を開錠しようと試みる。
周りを警戒するマリウスだったが、忍が四つん這いになったかと思えば忍が被っていたヘルメットを脱がして、ピッキングツールを取り出しウルムがドアに耳をそば立てて作業を始める。
どういう状況だよと言いそうになったが、鍵が開く音が聞こえて3人は中に入った。
「…マリウス…師匠…ウルム
なんでみんな…みんな…ドヤ顔してるの!?!?」
「やぁ、アリシア
俺っちたちイケメン三銃士が助けに来たっちぃ
安心しろよ?」
というかウルムだが、アリシアの異様な姿と部屋の内装を見て目を瞑りたくなった。
ボロボロの麻のワンピース。
というよりもただ切れ込みの入った服と言っていいのか粗末な布を被せられ、両手首には鎖付きの手枷が、足首には小さな鉄球が付いた足枷がついている。
部屋は全体的に淡い水色の内装に綺麗に整頓された本棚、小さな木の箪笥と武器を置くためのウェポンラックが壁にかけられている。
相反する情景にマリウスですら言葉が出てこなくなった。
「アリシア…ここから出よう
おふざけとか一切なしで」
「マリウス…」
「御託はいらんよ…マリウスや
お前さんが担いでここから出せばいい!
手枷と足枷はウルム…ピッキング!」
そうはさせないわ!
でやんす!
クラリスの情報とウォーレン率いる街の人々が結託してアリシア奪還に向けて作戦行動中です。
リリアやアルビレオ城の警備をいつのまにか人員掌握していた6人。
天守閣に囚われているアリシアの元へと急行しますが、妨害にも遭ってしまったようです。
マリウス達を先行させて戦う女三人衆。
おばかパワーが炸裂するかもしれません。
次回も楽しみに




