城下町隠密行動
前回までのあらすじ
敵兵をとっ捕まえて、敵の親玉のところにいざ前進するところです。
今回はどう進んでいくのかが味噌です。
森を抜けきり、2人は王の住まう城のお膝元。
つまりは城下町にたどり着いた。
森の入り口になる木陰から一本の大通りを挟んで人と獣人や人に近い何かが往来する。
大通りではあるもののメインストリートと呼ばれるほどではないと瑠香は気がつく。
「エルフっぽいのと、獣人と魔法使いと魔女と勇者っぽいのと…」
「数えたらキリがないぞ?
どうやって侵入する気だ?
ここは道が広い分、往来が激しい
本通りになれば尚更だ…まさか瑠香
やはりレンジャーはレンジャーだな」
「ご明察、そして風邪をひくのを覚悟してください」
「水路潜入か、致し方あるまい
レンジャー…っと、返しておけばいいか?」
「レンジャァ」
2人の目の前には緩やかに流れる川がある。
川というよりも水路といった方が正しい。
その水路は魔神の住まう城よりも上から流れ、中間に所在する城に対して三層の水堀が流れる。
その水堀を軸に各街に水が流れて水路を構成しているのだ。
「私が先導するから忍さんは後方警戒をしてほしい」
「忍さんっていうのやめろ
忍って言ってくれ…じゃないと雷落とすよ?」
「……レンジャ」
軽くため息をつく忍に対して、往来の途切れる瞬間を今かと待ち続ける瑠香。
今目の前に通っている一団が途切れれば水路まで駆け込める。
そう思い込んでいたのが間違いだったと気がついてしまう。
「ひとがいない」
「…なるほど、この国の人間も馬鹿ではないんだ
『じぇーあらーと』みたいなものを俺たちが来たのを察知して流していたんだ
向こうは本気らしいな」
「気配を消そう、匂いは水路を進めば消える
それに消せば慌てて出てくるよ」
「失探して慌てて出てきたところをやるか?
おっかないな空挺降下レンジャーは
まぁ水路潜入と行こう」
瑠香は携行でき得る弾薬を弾倉やダンプポーチの中に詰め、脱落防止措置を施し水路に向かう準備を整える。
一方の忍は弾薬や刀をきっちりと締め、被っていた首を覆える布付きヘルメットを外し、刺繍の施された布を頭に巻きヘルメットを被り直す。
水路までは目測にして10メートル。
背負っていた背嚢を土の中に埋め隠して、水路に走り飛び込んだ!
「ぅっっぁぁ…しゃっけぇぇぇえ!!」
陽の光が心地が良く、水温も外気温と同じくらいかと慢心した瑠香の体を襲うツンと冷たい水。
おそらく地下水を用いた水路なのだろう。
流れる水はさながら富士山の麓を流れる柿田川の清流が如く、清らかで冷たく美しさを誇る。
だがそんな事を悠長に考える暇など2人には存在しない。
被覆を貫通し肌を刺す水の冷たさで体温どころか命をも奪いかねない。
「これは身に応えるが、進むしかないぞ
俺たちが溺死する前に泳ぐしかない
指示をくれ、分隊長!」
「くぅぅぅ、なまらしゃっけぇ!
ここから城に向かって北東進50メートル前まで水路潜入
後に水路の終点地点で陸地に上がり建物を掩体として城内の潜入に向かう
レンジャー神前はこのまま後方警戒、用あれば敵の無力化!」
「レンジャァ!」
「私達がおっ死ぬ前に脱出するよ!
空挺レンジャー部隊前進!」
体力の無駄遣いを防ぐ様に且つ、じんわりと体温を上げるために2人は平泳ぎで進み続ける。
2人の装備が体に食い込み、被覆達は水を吸い溜め身動きが取りづらくなる。
着衣泳で何度も泳いだことのある瑠香ですら、体感で感じる水温は10度くらいと察する。
あまり高くない水温だからこそ、早く外に出なければ死は免れない。
急ぐ以外ほかないのだ
『どうやらお客様がここにきてくれる様だが…戦闘体制に入っている様だな
1人は私の娘とよく似ている
もう1人は、人ではなければ神でもない…
つまりは亜神か』
『魔神様…敵がここまで来ます
迎え撃ちましょう!』
『いいや、その必要はないさ
歓迎しようじゃないか…百何十年と挑戦者が現れなかったのだから
今回はどう動くか見ものだね』
まさかの冷たいお堀のような用水路に2人はダイブしているようです。
水温が低くなればなるほど生存率はガクッと下がります。
真冬の海なんかも、一回落ちたら即⚪︎だと聞いたことがありますが、ここではどうなるのやら。
魔神なるお方はそれを知ってか知らずか何かことを起こすのかも?