ラッキースケベって最高じゃん?
海星府に向かう途中に起きたニコルとティナに起きた悲劇です。
「むにゃ…眠い…んん?」
早朝、ニコルは目が覚めてしまった。
メラク王と達と別れ、海星府の分岐となる街でキャンプを兼ねて郊外で野営をしていた。
夜は星を見ながら、酒屋で買ったワインやラム酒を買い予定していた薪30キロ分も購入してキャンプ場で二日酔い覚悟で飲み耽っていた。
「へへへ…うまいねぇ…ヒック!」
悪酔いをしたニコルから潰れ、ティナ、マリウスにウルムと潰れ最後に残った忍の瑠香の潰し合いを朧げに覚えていた。
そして気がつけば朝の5時半ごろ。
皆、テントの中でそれぞれの部屋の中で眠っており寝ぼけたニコルが寝巻きをきてサンダルに履き替えて外に出る。
朝の澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込み、アルコールを体から出すようにゆっくりと吐き出す。
それを繰り返して気がついた。
空気を切り裂くような、強い棒がしなる音が近くから聞こえてくることに。
「誰かいるの?」
「どうしたの、ニコ?」
「何か…空気を切るような…
ブン…ブンって聞こえるの」
「えぇ!?!?」
寝ぼけたティナがテントから出てきて、ニコルと一緒に音がする方向に近づき、テントを盾にして進み音の正体を探る。
そして音の正体が近くなったことに気がつき、ティナは右手に杖をニコルは左手に詠唱魔法書を持ち戦闘体制に入る。
「「…お前は誰だァァ!!
わっ…あっ…あっ…!!!!」」
日が上り草木が目を覚ました頃、なんとも言いようのない悲鳴があたりに響き渡る。
恐怖や忌避から来るものではなく、それに近いがどこか黄色い歓声のような幸運にも見れて幸せなのだと感じれるような声色に近い金切り声のようなものが響き渡る。
その声に反応してさっきを帯びた瑠香とマリウスがテントから駆け出して、声の元まで向かう。
服装も整えず、瑠香は銃剣とフライパンを、マリウスは剣とお玉をもって今にも飛びかかろうとする。
「ふざけんなって!
こんな時に敵襲かァァ!?
やってやんよ、レンジャー財前見せてやんよ!!
…あぇー?」
「ティナさん、ニコルさん!
どこにいますか!?
後無事ですか!?
忍さん…なにやってんの?」
頭にはバンダナを巻き、上半身は裸で濃い灰色に深緑色のマダラ色のズボンを履き、素足で素振りをしていたであろう忍がやっちまったとばかりに慌てる。
2人が見たものの正体は朝の特訓と題して抜き身の軍刀を素振りしていた忍だったのだ。
2人が倒れたのを見てなんとかして担いだのだろう。
右腕でティナを抱き支え、左腕にはニコルを抱き支えてどうしようと顔面が白くなっていく。
「後で事情を話すから助けてくれない?」
「「…おかのした」」
ウルム特製元気いっぱい朝ごはんなる朝食を済ませて、6人は海星府に向けて前進する。
朝からご機嫌なティナとニコルとは反対に忍はトボトボと肩を丸め気配をころしながら歩き続ける。
そしてことの真相を知ってしまった瑠香やマリウスにウルムもなんとも言えない顔をしながらずっと歩き続ける。
「「朝からちょっといいもの見れちゃったー!
うふふふ!」」
「うふふじゃなくてムフフっしょ?」
「あの、瑠香さん?
忍さんの顔がもっと暗くなってるんですが」
「忍…かわいそうに
俺っち抱きしめて、元気出せ」
「くぅぅん」
なんとも言えない空気が流れ込み、どうしたものかと困惑する。
だがそんな空気を蹴飛ばすなにかが、瑠香達の前方からやってきていた。
ニコルが耳をぴくりと動かし、やばいと声を漏らす。
小高い丘の上から遠くに海が見えて、海星府の街並みが遠くに見えつつあったのだが、それを掻き消すほどに隊列を成して馬が走る音が聞こえてきたのだ。
「敵さんの斥候部隊かな?
茂みに隠れて…逃げ切れないっすね」
「お前達は、異国から来たという者か!
それとも怨敵たる国の使者か何かか!」
海星府からの使者なのだろうか。
それとも防御システムなるものがあり、敵と認識されて迎撃部隊がやってきたのだろうか。
白馬に跨った男女5人組が瑠香達が逃げられるように包囲していく。
普通なら囲まれた時点で降参と申し出るのだろうが、この6人のうち4人は違った。
「なまら美人…すごい」
「だよね〜」
「ラッキースケベいただきました」
「俺っちの可愛いが崩れた」
この日、二つのとんでもないことが起きてしまった。
一つ目の事件。
朝のティナとニコルが失神した原因は、忍が上半身裸で鍛錬をしていた忍の姿に興奮してしまい歓喜とも言える黄色い歓声を挙げて失神してしまったのだ。
元々整った顔立ちに鋼のボディが突き刺さってしまったのだ。
そしてもう一つ、今目の前にいる騎士の1人が馬に乗って走ってくる際にチラリと長いスカートのスリットから美しい太ももが見えてしまったのだ。
おまけに金髪にハーフアップしたヘアスタイル。
翡翠色の瞳に、愛らしい顔立ちとは反対に重い甲冑を着込む。
「今日はラッキースケベが多いねぇ…
最高でやんす!」
「へへへ…ラッキースケベ
へへ…へへへへ!」
「おいちゃん、はぁはぁしちゃうわぁい
ねぇ今からおいちゃんといい事しようよ?
全部奢ってあげるから」
娘三人衆のなんとも破廉恥な発言に眉をびくっと動かして怖がるマリウス。
助けを求めようとも、ウルムは俺の可愛いがと嘆くだけ。
そして忍は、ニコルやティナがラッキースケベで歓喜している現実を受け入れられずに頭を抱え込んで地面に顔を埋めていた。
「どうしよう…みんな壊れちゃった
どうしたらいい、アリシア?」
「…私もわからない」
騎士に先導されて6人は海星府へ連行されていく。
途中で休憩と称して、ハーブティーとハチミツスコーンを嗜みまた歩くを繰り返した。
潮風薫る目的地まで残り10キロほど。
だが、ぶっ壊れパーティの心が壊れゆく何かに変化する様をマリウスとアリシアなる人物は恐怖の対象でしかなかった。
ラッキースケベって最高ですよね。
忍の鍛えられた体を見て歓喜乱舞したんです。
そりゃ悲鳴だってあげますわな。
ムキムキでかっこいいお兄さんを私も見てみたいです。
そしてチラリズムで悩殺した騎士、アリシアの存在が現れました。
おいちゃんはぁはぁする瑠香や下心丸出しのティナやニコルが最高ですね。
忍は壊れましたし、ウルムも可愛いが保てなくなったのです。
次回もよろしくお願いします




