乗り込むか
前回までのあらすじ
訓練で歩いていたら霧に包まれおまけに原隊と逸れてしまう。
2人の運命?
知らんな!
「忍さん…いつも体が若干透けてたっしょ?
なして…忍さんの身体さ実体なの?」
「…俺の身体が実体化してる?
瑠香触ってみて?」
そう言って忍の体に触れてみようとした時だ。
近くに敵がいると察知したのは。
数にして2人だが、気配のうち1人は人間もう1人は獣に近いものだった。
こちらには気がついていないと踏み込むと同時に、茂みの一部に化けるようにゆっくりしゃがみ込んでうつ伏せになって身を隠し相手この行動を予測した。
「聞きなれない言語
英語でもなければ中国語でもない
どの分類の言葉に当てはまらない」
「相手は俺たちそのものには気がついていないだろうが、俺たちの事は察知していると思うぞ?」
どう言う意味かなど考えずともわかりきった事だ。
相手方は山の中を何かを探さように仕切りに動き回っている。
人探しや物探しではなく、敵を見つけるために忙しなく動いているのだ。
だが見つけようにも何も感じない。
それもそのはず。
瑠香や忍は己の気配を消し、相手2人の後方に位置取っていつでも攻撃できる隙を探していたのだ。
(私が先に獣の方を制圧する
次いで忍さんが人を制圧して…決して殺さないこと)
(甘い考えだけど、了解した)
援護しろと左手の拳を握り、右手で獣の方を銃を構えるようなポーズで指差す。
100キロのおもりのようなリュックは敵の目を逸らさせるために眼前におき、あえて注意を引かせて気を逸らさせた。
あとはうまく調理するだけだ。
音もなく背後に近づき、首筋に一気に銃剣より少し長いコンバットナイフを突き立て驚かせた拍子に一気に体勢を崩させる。
残りの人型も忍の手によって倒れ込んでいる。
「…Don’t move 」
だが、捉えた敵に自分たちの話す言語が通じることは決してなかった。
暴れながら仲間を呼ぼうと今にも雄叫びをあげようと必死になっている。
(ラチが開かないか)
首元に腕を回し、徐々に気道を圧迫し始める。
見かねた忍もまた、首に圧をかけてゆっくりと失神させる。
完全に沈黙して数秒経った頃に近くの木に2人を座らせ縄でぐるりと手を拘束し幹に2人を巻きつけた。
情報を漏らすことはないと理解していた瑠香に対して、忍は己の両手に黒い何かを薄く惑わせ頭にそっと触れる。
「脳内検索…みたいなこと
おっかないなぁ忍さんの雷の性質は」
「瑠香も似たようなことができるだろ?
さて獣というかこの二足歩行する犬っころと人間から情報は得た」
「我が曽祖父はなまら怖い…っと!」
「何か言った?」
「いえ何も言ってないであります、神前軍曹!」
はぁ…とため息をつき、雰囲気でことの次第を話しだす。
聞き取れない言語であったがここはアルメリアという地。それを構成する自治州のような物を納めるのは高貴な王だが、人間ではなく神に近い。
否、神は神でも魔物を統べる魔神のようなものが人間と魔物…あるいは精霊なるものを束ねているということ。
そしてアルメリアの兵達は、魔神の娘らしい人物を探している。
だが行方不明のまま、次に瑠香達を察知したとのことだ。
「さて、我が挺進兵の末裔にして精鋭無比たる曾孫娘
こいつらの王は俺たちを探しているようだ
どうする?」
「会いに行ってみて、話してみる」
「くふふふ…いいだろう
俺も賛同するがただ挨拶するだけではつまらん
ここは一つ、俺たちの力を見せないか?」
「平和的にいきたい」
「くっふはは!
まぁいい、あいつらは本気だぞ?
少し脅した方がいい…乗り込むか」
「レンジャァ!」
王が住まう城までは目視上3キロはある。
アルメリアという地は平穏で戦いとはかけ離れた世界なのだろう。
全てにおいて穏やかな空気が流れ、外敵が現れた途端に慌てふためいている。
平和な国を統治する王が人間ではなく魔物の神というのだから瑠香は緊張のを隠しえない。
相手がどのような武器を持っているか不明。
我らの攻撃が効くのかも不明。
だが出向くは適当、引けば何もわからない。
2人は王の住まう城へ向かう。
接敵しました。
普段の訓練からうまく相手の間合いをつめて拘束したのです。
瑠香が忍に対して言った脳内検索や雷については今後も出てきます。