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次の旅の始まり

決闘喜劇(バトルフロンティア)が終了してからのお話となります。





「すっごい筋肉痛」


「詠唱しずぎでのどガザガザだぁ」


「しばらく俺っちも飛べないかも」



((こりゃ筋トレ始めだなぁ…ふっ!))





早朝のエルドレア城内。

まだ執事やメイドが朝の準備とやらを始める少し前に5人は目を覚まし、出発の準備に取り掛かる。

窓の外から見る城下町はまだ寝静まっているようだが、日の出と共に照らされていく赤い瓦屋根が幻想的に見え瑠香は心を奪われそうになる。

決闘喜劇(バトルフロンティア)が終わってから今日で一週間は過ぎている。

闘いが終わって1日が経った瞬間からまた街への聞き込みとギルドから出ている低レベルの任務(ミッション)をやったり薬草探しなど簡易クエストに馳せ参じていた。





『あなた達本当にすごいわねぇ

龍生府(ラードーシア)の若い子達でもやらない事を…』




老婦人の庭先の草刈りを手伝っている時に褒められ、休憩中にアルメリアでよく取れる木苺のパイをご馳走になったり紅茶をもらったりして5人はニヤついてたりした。




『緑の服のお兄さんすごいなあ

俺たちみたいな土方仕事を息も切らさずにできるんだからさ』



また違う任務(ミッション)で街の外れで工事中だった水道橋修理の手伝いをした時に、瑠香が男と間違われ女である事をニコルが話すと、その場にいた人間や龍人は手を止めて工具を落とし固まってしまった。




「この街も中央府(ポラリシア)とは違う人の温かさがあっていい場所だったべ」


「クソ坊主と戦って心象が悪くなったと思ったんだが

それはそれ、これはこれって考えなんだろうな」


「でも早めにここを出ないとね…王凌府(ヘラクシス)まで遠いからね」




次に目指すのは王凌府(ヘラクシス)

龍生府(ラードーシア)から40キロほどあり、歩いてもなかなかの距離。

朝から出ていかないと隣国には予定している日にちには到着しない。

街でお世話になって組合(ギルド)協会や行商に子供達にと街での生活に落ち着きが生まれつつあるが、最重要任務である皇女の捜索に赴かなくてはならなかった。

出発する前日に購入していた生鮮食品や乾物達を、ウルムが閉じ込められていた魔性テントの中にパッキングし、ティナの持っていた魔導書の中に収納した。




「その魔導書すごいね

なんでも持ち運べるんだ…」


「瑠香の背負っている背嚢(はいのう)だっけ?

入れようか?」


「ありがたいけど、この背嚢の中に爆薬とか入ってるからやめておくね

でも…ありがとう」


「…ひぇ」


「爆薬入ってたんだ…」





ニコルとティナが固まってしまうが、そんなのどこ吹く風のように背嚢を背負い整備した89式小銃を担ぐ。

肩に食い込むかのようにメリメリと音を立てている背嚢に、ウルムは忍の頭の上に乗って驚いていた。

だが当の忍ですら、肩に小銃を担ぎ前掛けのカバンをつけて後ろには年季の入った背嚢を背負い、左の腰には軍刀を履き右の腰には銃剣を差す。

日本人は戦闘民族だったのかとアルメリア人の3人は不意に思ってしまった。




「じゃぁみんな出発しますか!」



何もなかったかのようにウルムの一声で城を後にする。

途中の門番から驚かれ、止められたがあらかじめ出立する事をワイズに話していたためか城門をくぐる事ができた。



「皆さんお待ちになってください!」



「ワイズ大公…気をつけぇ」



「いいですから!

敬礼なんてやめてください!

あなた方は私にとって友人ですから!」




友人という言葉に驚きながらも喜びを覚える瑠香と忍。

それ以上に大公からの友人という言葉に驚いたのはティナやニコルにウルムだった。

だが息を切らして呼吸もままならないワイズに全員が背中をさすろうとしたり、紙袋を持ってこようとする。

呼吸が戻ったワイズだが顔面は真っ白になっており、ティナが木の株を出現させ座らせる。



「ごめん…僕は龍なんだけどね

体が弱い方なんだ…母さんにいっつも迷惑かけてしまってね」


「大丈夫ですか?

水飲みますか?」


「いいんだよ…ニコルさん」




一息ついたのだろうワイズだが、はぁとため息をついてどこか潤んだ瞳をニコルやティナに見せてよろけながら立ち上がる。

一人一人に握手をしてその場にいた人間達を困惑させている。



「瑠香さんに忍さん

わたしは妻のことを…息子のことを見ていたつもりでしたが結果は夫としても父親としてもなにもしてやらんませんでした

日に日に妻の顔色が悪くなっていたのに気がつかなかったのです」


「ワイズさん貴方は貴方なりのことをやったのでは?」


「いいえ…もともと妻が龍化した際、美しい白色でした

ですがある時からその白が淀んでいたのですよ

まさか主従契約の影響とは考えられなかったのですよ」




ワイズ自身も多忙な身の上であり、息子と妻の間で結ばれた守護契約がいつの間にか主従契約に切り替わっていて、その日を境にどんどんとレイラの鱗は美しい白が澱んでいった。

淀んでいくのは決まって決闘喜劇(バトルフロンティア)が行われた後だ。




「皆さんが戦い終わってから妻を見た時、昔の妻に戻ったようでした

とても美しい人に戻ったのだと

皆様、私の目を覚まさせてくださってありがとうございました」






目を覚ましたと言われてイシスとレイラの関係にもっと自分も関われればよかった。

そして何よりとてつもない荒治療だがイシスの心を変えるきっかけになったと言いたかったのだ。

うぅと声を漏らし、泣いているワイズに5人は目を合わせて向き直りにっと笑って問題なしと口々に言い合う。



「こんなことを言ってはなんですが、私も皇女様の行方を探してみます

何か手掛かりがこの国のどこかにあると思います」


「ありがとうございます

…では私たちはこれで」


「どうか皆様の旅路に幸有らんことを!」





皆手を振りエルドレア城を出城し、龍生府(ラードーシア)を抜ける。

街の空気は澄んでいて息を吸って吐くだけで気分が良くなる。

街ば少しずつ目を覚ましていく気配を背中で感じながら街が遠くに見えていくのを、どこか懐かしく覚えながら巨国の一つ龍生府を後にした。





「…そう言えば俺たち、朝ごはん食べてなよね?

もう少ししたら朝ごはんにしない?」


「「「「あっ!?」」」」




龍生府(ラードーシア)を出て6キロの地点で忍の一言で全員が固まる。

自分たちが出国することに集中していたがために、朝食を食べる事をすっぽ抜けていたのだ。

体感的に朝の8時ごろなのだろう。

大急ぎでテントを張り、オムレツとパンを焼きチーズをのせて食べたのだ。




「「「「「青空で食べる朝ごはんうまぁぁぁあ!!!!」」」」」

どうやら決闘が終わってから街の人たちとの交流を欠かさず、皇女の行方を下がっていたみたいです。

相変わらず瑠香は男に間違われたようですね。


瑠「髪伸ばそうかな…やめてくれよ!」



きっと普通の女性に比べてガタイがいいからじゃないかな?


ワイズも息子と妻のことを気にかけていたようですが自身の仕事の影響でうまくいかなかったのがチリツモになってこんな結果になったと悔やんでいます。

でもこれからはうまくいくでしょう。


次回もお願いします

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